狐耳が生えたのでカップうどんを食べていいですか?
それは絶叫から始まった―――
「FUCーーーーK!!!!」
「ヘイヘイ、今のどうやって発音したのか分からないけど、朝から何の騒ぎだい?」
洗面所から聞こえた特大のイングリッシュ絶叫を聞き付け、無精髭の濃い男が洗面所へと駆け付けた。
「なんてこった!! 朝起きたら頭から狐耳が生えちまったんだぜ!!!!」
「そう、それは何より…………じゃ、俺はまた寝るから……」
──ガシッ!
「グエッ!」
「FーーーーUCK!!!!」
「首を絞めるな! それとどうやって発音してるんだそれは!?」
「可愛い妹が頭に狐耳生やして困っているのに、言うに事欠いて『寝る』とは何事ですかねぇ!?」
「……どれどれ」
──サワサワ……
「んっ……」
「温かいな……」
──サワサワ……
「んんっ……」
「感覚もあるようだし……」
──サワサワ……
「んんんっ……!」
「ハサミで切るか?」
──ボゴォッ!
「止めて下さい血が出て死にます」
「その前に俺が死にそうな件について……」
突如ネコ耳ならぬ狐耳が生えた女性【アーカイ・キ〇ネト】は最初こそは戸惑ったが、それ以外に何ら変わらぬ変化に、特に気に留めるでも無く普段通り過ごすことにした。
兄の【ミド〇ノ・タヌーキ】は妹の狐耳に興味津々で、朝食を作りながらも狐耳を触りたくて仕方なかった。
「お兄ちゃん、今日の朝ご飯は何?」
「カップうどん。何故か知らんが、お前を見たら無性に食べたくなったのであーる」
「……色々とツッコみたい事だらけだけど、とりあえずうどんを食べようか」
「出来たぞ。3分待つが良い」
二つのカップうどんがテーブルに置かれ、席に着く兄。二人の間に沈黙が訪れるが不思議と嫌な感じはしない。
「……仕事はどうするんだ?」
兄がポツリと呟いた。妹は「……一応病院行ってから行こうかな」とスマホを取り出し会社へと電話を掛ける。
──プルル……ガチャ
「あ、おはようございます。キ〇ネトです」
「おはよう。ところで今のどうやって発音したのか聞いても良いかな?」
「ダメです(笑)」
「で、何か有ったのかな? 君のキャラからしてモーニングコールをくれるとは思えないんだが……」
「……狐耳が生えたので病院へ行きます。つまり遅れるか場合によっては休みます」
狐耳と聞き5秒ほど沈黙。そして返事が返ってきた。
「いーよー♪」
「えっ!? 良いんですか?」
「部長には『いい歳してウンコ漏らした』って伝えておくから(笑)」
「は!? えっ! ちょっ―――」
──ブツッ……
「あっ! ちょっと! コラ、ハゲ!!」
「誰がハゲだ!!」
「あ、電話切れてなかったんですね……ハハハ……」
「まったく……。ちゃんと診断書も貰ってくるように。診断書も場合によっては経費で落ちるからね」
「あ、はい……」
「それじゃ、お大事にね」
──ガチャ……ツーツー
電話が終わり、兄の顔を見る妹。兄は既にカップうどんを食べ終わっており、妹が時計を見ると既に三分が過ぎていた。
「とりあえずカップうどんを食べよう……」
「あ、おあげは兄ちゃんが窃盗しといたぞ。感謝しろよ?」
「FーーーーUCK!!!!」
──メキョ……
「オゴォ…………!」
「おあげを盗んだ罪は万死に値する!」
裏拳をお見舞いされた兄は気絶し、夢の中でたらふくカップうどんを食べたという…………
読んで頂きましてありがとうございました!
(*´д`*)