02 運命 その3
「よかった! 間に合ったみたいだ!」
「ばか!遅刻よ!」
レンが学校に着いた瞬間、レンの事を怒る存在が居た。ショートな黒髪、胸は控えめに言っても貧乳。そしてその子は俺の後ろから声を掛けてきた。
「え、マジでか、」
「大マジよ。てか、私が此処にいる時点でお察しってやつでしょ、バカレン」
「はいはい、それはすみませんでした。……これで良いだろう? 花恋」
と、レンはそういう。花恋はこめかみに手を当てて、ため息をついていた。
「ほら、帰るわよ、」
「あいよ、……今日に限って言えば、遅刻したくてしてねえよ」
と、花恋に聞こえないぐらいの声で言った。既に三歩ぐらい先に行ってた花恋に聞こえないように。
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初日登校を見事欠席に終わったレンは、学校で合流した花恋と一緒に通学路を歩いていた。しばらく歩いた後、花恋がレンに向かって話掛けた。
「――あんたの初日遅刻癖。やめた方がいいわよ? 初日こそ先生や他の人にいい印象を持ってもらうチャンスなんだよ?」
と、花恋はレンの事を心配して、そう言った。しかし、レンには説教したように聞こえたらしく。言い訳を言い始めた。
「いや、聞いてくれよ、今回ばっかしは俺が一概に悪いって言えないんだって。実はなぁ」
「どうせいつもの寝坊でしょ。はい、証明完了。」
と、花恋はそういう。それにムカっとしたレンは通学路で有ったことを花恋に話す決意をした。これは寝坊も関係しているが、一概に悪いとは本当に言えないのだから。
「違うってば」
「一体、何年一緒に居ると思っているの。アンタの嘘ぐらいすぐにわかるっての」
と花恋はいう。そう。レンと花恋は幼稚園から現在までずっと一緒にいた。いわゆる幼馴染というやつだ。同年代でここまで長く付き合って来れる人はそんなに多くないだろう。だから花恋の言葉も間違ってはないのだ。しかし、レンの言葉は信じられないようだった。それもそのはず。なぜなら、レンはこの十六年間。遅刻しては言い訳をしてきたので、今更言ってもまた言い訳でしょ。と言われるのだ。
いつもならここでレンが反省するのだが、今回のレンは反省せず。そのまま続けた。
「本当に違うんだって! 丁度ここら辺でぶつかったんだよ! 女の子に!」
と、十字路のところに立ち、レンがそういう。
「は? 女の子? どんな子よ。」
「えーと…… ……いや、そういえば、ぶつかったとき、下着見ちゃったからその場から逃げたから特徴とかは……」
「はぁ⁉ あんた…… はぁ⁉ 見た⁉ 下着を⁉ しかも女の子の……⁉」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 何か誤解しているぜ⁉ 何も俺はロりの下着を見たってわけじゃあないんだからよぉ⁉」
と、その言葉を聞いた瞬間、花恋が固まった。さっきまで騒いでいたのに、いきなり黙ったので、レンもあせった。
「あの~……花恋さん?」
「こ……この……おバカあああああああ!」
花恋から放たれる強い拳がレンの顎にめいちゅう命中し、後ろへと飛んで行った。
「反省しなさい! この馬鹿!」
「馬鹿馬鹿ってうるせえよ! 馬鹿って言いすぎなんだよ⁉」
「うるさい! 馬鹿! 変態! もう知らない!」
と言いながら花恋はレンを置いて先に行ってしまった。なぜ怒られたのか、レンはわからなかった。
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「―——あら、また会ったわね、変態さん」
華麗な声が聞こえたと思い、レンは顔を上げた。上げた方角には、丁度ここで会った少女だった。今度は顔だけしか見えてないので、下着を覗く必要はないな、とレンは心の中で思った。二度も同じところを殴られるのは御免だからだ。
「あんたか、って、変態さんってなんだよ。」
「貴方の事よ、朝から私の下着を見て発情していた野獣さん。」
「発情してねぇよ⁉ 誤解させるような言い方するな⁉」
「誤解も何も、私の下着を見たことには変わりないでしょ? それを変態と言って何が悪いの? 現に貴方の彼女さんそれを聞いて怒って帰っちゃったでしょ? それだけの事をしたって事よ、理解しなさい。変態さん。」
出会い頭でこんなに罵倒してくる幼女は俺知らねぇぜ……とレンは思いつつ、顎から出た血を拭って立ち上がった。
「とにかく、これに懲りたら女の子の下着を無闇に見るんじゃないわよ? 彼女さんに嫌われたくないでしょ?」
「って! 花恋とはそんな仲じゃないぜ⁉」
「へぇ~……あの子、花恋って言うんだ。しかも下の名前呼び、貴方、彼女と相当仲が良いんじゃないかしら?」
女の子はレンをからかうように言った。レンは頬を少し染めながら言った。
「花恋とは、……ただの幼馴染だ。それ以外の深い意味はない。……本当だぞ。」
「ふーん。まぁ、そういうことにしておいてあげるわ。……貴方に会えてよかった。」
「あ? 何言ってんだいきなり。」
「警告してあげるわ。」
女の子は細い指をレンのこめかみにめがけて指をさした。ドンとした格好で。
「……今日の夜は何があっても家から出ないことを勧めるわ。決して何があってもね。」
女の子の言葉を聞いた瞬間。レンの頭の中にははてなマークが出た。レンは、この子が何言っているのかわからなかった。
「……例え近所でも駄目なのか?」
レンの家の近所にはコンビ二がある。店舗って感じで、小さいコンビニだ。ここ最近はそこに買いに行くカスタードクリームパンが激うまなことを知っているので、買いにいけないとなるとかなりきびしいのだが、とレンはいう。
「……それは帰ってすぐに買いに行きなさいよ、いい?これは警告。もし破ったら絶対命の保証はないわよ。」
女の子のそれを言う顔は本当に心配しているような顔だった。初対面の相手にこんな顔されたら従うしかないと、レンは思った。
「……なるべく用心するよ、」
「そう、なら行きなさい。言っておくけど、寄り道も駄目よ!」
「わぁってる。んじゃな。
レンは右手を振りつつ、走ってその場から立ち去った。
レンは見てないが、女の子の顔は悲しい顔をしていった。