夕焼けの教室
初投稿です。
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放課後、夕日が差し込む教室。部屋中がオレンジ色に染まり、整然と並ぶ机の長い影が床面に伸びる。半分に開けられた窓からは時折初夏の爽やかな風が吹き込み、部活に励む生徒たちの掛け声も聞こえる。
外の喧騒をよそに静かな時間が流れる教室の前方で二人の少年が机を挟んで座っていた。机の上に広げられた日直日誌。チョークで白く汚れた黒板の端には二人の日直の名前が書いてある。須崎と園宮。どうやらそれが彼らの名前のようだ。
園宮は椅子に姿勢よく座り日誌を書いている。彼は全体的に華奢な印象を与える少年である。長すぎも短すぎもしない程度に切り揃えられた黒髪の下に大きな瞳。小ぶりな唇は赤く、白い肌の中に映えている。半袖から伸びる腕もまた白く、そして細い。筋ばった手でペンを持ち、きれいな文字を日誌の項目に埋めていく。
その正面では須崎が足を投げ出し、携帯を片手にだらしなく座っている。園宮ほどではないが、彼もまた細身である。まだ成長途中、今大人になろうとしている少年といった風だ。園宮よりは髪は短く、健康的な肌色。まだ幼さを残す顔立ちの中に、かすかな男らしさを感じさせる奥二重の瞳は退屈そうに歪められている。
日直の仕事をこなす園宮をよそに、携帯電話を見つめている須崎がおもむろに口を開いた。
「安藤がこれからボウリング行こうってさ。昇降口で待ってるって」
園宮は手を止めずに答える。
「分かった。あと10分くらいって言っといて」
「うん、送っとく。ってまた来た。女子も来るらしい」
すると園宮が少し緊張した様子を見せた。
「誰?」
「江口と守山とあと・・・優木だって」
優木の名前だけ須崎は若干ためらいがちに告げる。そして向かい側へと目を向けた。
まるで園宮の反応を窺うかのように。須崎のそのどこか疑惑を込めた眼差しが園宮へと降り注ぐ。
彼はその名前を聞いてふと手を止めた。顔には少しの動揺が浮かんでいる。しかし相変わらず日誌へ向かってうつむいたままで、その表情を須崎が見ることはできない。
園宮は須崎の視線を感じながらもあえて黙りこくり、須崎と同様にその声色と視線に含まれる感情を窺い知ろうとした。
二人の間に一瞬の静けさが流れる。
そしてしばしの沈黙の後、園宮は目を伏せたまま短く答えた。
「そう」
それに対して須崎は上擦った声を放つ。
「そうなんだよ!園宮も別にいいよな!」
園宮はまたそっけなく答える。
「うん」
カーテンが風にはためく音が聞こえる。運動部員たちのかけ声が聞こえる。
須崎はやはりこらえることができなかった。
「てかさっ!」
声を出すと同時に立ち上がり園宮の方へと前のめりになる。園宮は椅子に寄りかかりながら後ずさった。
「先週園宮、優木に呼び出されてただろっ。あれってやっぱ、告白だったりしたのっ?」
園宮は顔を上げて目を見開いた。真っ白なはずの頬にはかすかに赤みが差している。
「ち、違うよ!」
「違うくないだろ!帰ってきてからなんか様子おかしかったし!なんとなくだけど優木のこと避けてたし!ずっと見てたら分かるよ!」
園宮の顔が真っ赤になった。
「ずっと?!」
「ずっと!」
須崎は完全に興奮しきっていた。
「ずっと・・・。」
園宮は小声でつぶやく。そして真っ赤な顔のまま、須崎の目を見ることも出来ず、しかし少し落ち着きを取り戻した声で答えた。
「確かに告白はされたけどすぐに断ったよ。ただ初めてだったからびっくりしてただけで」
「本当に?」
「本当だよ!」
「そっか」
須崎は心から安心したような声でつぶやいた。そして間近に真っ赤な園宮の顔を見て彼も赤面し、慌てて椅子へと座った。
「うわ!ごめん」
「いや、大丈夫」
※※※
時間が経って少し夕日が強くなった気がする。部屋の中もさっきより赤くなった気がする。
「ボウリングどうする?」
「やっぱやめる」
「そっか、じゃあ安藤に言っとくわ」
「二人で帰ろうか」
「おう!」
少年たちは顔が赤いのを夕日のせいにしていつものように家路についた。