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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第九話 虹枝の最期 灰塵と化す希望
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9-2


「ここか……」


 ビルの屋上からビルの屋上へ、素早く跳び続けた春間が大穴の開いた廃工場を見つけ、その穴から中へと飛び込む。

 廃工場の中は明かり一つ無い暗闇だ。春間は穴から入る僅かな光で照明のスイッチを見つけると、パチリと電源を入れた。

 ジジジと微かな音を立て、工場内の照明が点灯する。その光に目を細めながら、春間は床に転がっているブランクの残骸を見つけ出した。


「……あれか…………む?」


 残骸に近づく春間の脚が止まる。倒れるように転がっているブランクの装甲……その妙な点に気付いたのだ。


「……おかしい、大き過ぎるな」


 アガルテと共に見たブランクの頭部は、熱と衝撃による損傷が激しかった。目の前のそれも同様に損傷している。しかし、首無しの残骸は以前見たブランクより一回り以上大きい。

 その瞬間、残骸が起き上がると同時に、中から白い影が飛び出し、春間へと瞬時に近付いたかと思うと、鋭い蹴りを放つ。

 咄嗟に上げた腕でガードしたが、ボギンという鈍い音と共に腕の骨は折れ、春間の小柄な身体は大きく飛ばされた。


「う〜ん……浅かったかな。やっぱり完全に油断させるには無理があったかぁ」


 蹴り足を戻し、ブランクの残骸に潜んでいたグレイバーが肩をすくめる。

 その視線の先、空中で体勢を整え綺麗に着地した春間が尋ねる。


「……どういう事だ?」


「どういう事って、簡単な事だよ。ここが君の墓場になるのさ」


 グレイバーが構える。折れた腕を修復した春間も、ブラックギアを取り出した。


「第一封印解放っ!!」


「業魔転変!」


 両者から放たれた白と黒の光が、空中で触れ合い弾けた。



「あ、あ、新さん、大変ですっ!」


 時は少し戻り、新と士郎の会合が終わった翌日。虚木超常現象研究所に律の叫び声が響いた。急いで玄関へと向かう新と八葉。


「どうしたんだ、律っ! 大丈夫か?」


「新さん! あ、あの……あの人達って……」


 律が指差す先、玄関に立っていたのは既に見知った双子だった。


「あ、あの……こんにちはっ!」


「ボロっちぃ家ねぇ……まっ、お邪魔するわよ」


 頭を下げ丁寧に挨拶するアルと、相変わらず尊大な態度のサン。二人が家に入ろうとするのを、新が慌てて両手を前に出し制す。


「ちょ、ちょっと待て……お前達、どうしたんだ?」


「はぁ? あんた、兄様と共闘するんでしょ? 例の作戦に使う小道具だとか、結構する日時だとか、細かな打ち合わせ含めて、いつでもすぐに連絡が付くよう、私達のどっちかが常にそばに居なきゃダメじゃない。それくらい考えつかないのかしら、まったく」


「いや、そうじゃなくて……一応お前達も魔人だろ? その……大丈夫なのか?」


 上手く説明出来ず、チラリと隣の八葉を見る。八葉はふむと少し思案し、一人納得したのか頷いた。


「なるほど……つまりな、新。私の神域であるこの家へ、この子等が辿り着き平気で入って来れたのは、他者の魂によって二人の魂が濁っていない……いや、この場合は士郎の魂のみを喰らっているので、濁りが少ないと言うべきか」


「そうなのか……あ〜、律。とりあえず昨日話した通り、この子達も今は仲間みたいなものだから大丈夫。とりあえずお茶の用意を頼むよ」


「は、はい、わかりました!」


 パタパタと奥へ向かう律。その後ろ姿を見送りながらアルがポツリと呟く。


「……メイドさん、ですね」


「あんたがさせてんの? ハッ、いい趣味してるわ」


「こっちも色々事情があってね……とりあえず、そのまま立ち話ってもなんだ。上がってくれ」


 心なしか冷たい視線を背中に感じながらも、新が二人を居間へと案内する。出された茶菓子を機嫌良く食べると、サンが湯呑みを片手に話しだした。


「それで、例の小道具。どれくらいで用意出来んの?」


「お前……士郎の前とじゃ全然違うな……まあ、いいけどさ。例の物なら、俺の協力者に依頼してある。おそらく今日明日には出来るはずだ」


 例の物……虹枝にブランクの死を錯覚させるための、装甲の残骸作成は、既に哲也へと依頼してある。


「……で、では、決行はそれが完成次第。なるべく早くが良いと思います。兄様の動きが無い事に、虹枝側が不信感を覚えないうちに……」


「わかった。それで虹枝側がどう出るかは、ぶっつけ本番になるけれど、本当に俺達ブランクが奴等の目的だっていうなら、何かしら動きがあるはずだ。そして、もしそこで春間が動くようなら……」


「あんたが孤立した春間を倒す。状況次第によっては、私達も加勢するけどね」


「最悪、俺達も士郎も一対一か、春間が動かなければ、二対二になるわけだな……出来れば、春間を倒してから間を置かずに虹枝の支配者だっていう男を倒したいけど……」


「ふむ、士郎達の情報で、せっかく居場所を突き止めたのに、春間が倒された事を知られて、奴と虹魔木に雲隠れされても厄介だな」


「ああ、少々強引でもやるしかないな。士郎達には負担かかるとは思うけれど……」


「ふんっ、別にそれくらい、私達と兄様なら……」


「では、三対二……いえ、二対一と一対一ではどうですか?」


 平気だと言おうとしたサンの言葉が、突然部屋の外から聞こえた声に止められる。

 そこには、学生服姿の智秋が一人立っていた。


「誰よ、あんた?」


「悪いな、サン。俺の仲間で彼も戦士だ。どうしたんだ、智秋」


「昨晩、哲也さんに一通りの事情は聞きました。これから何をするのかも、です」


「うむ……そう言えば、哲也に口止めするのを忘れていたな、新」


「……ああ、しまったな」


「水臭いじゃないですか! 僕だって戦えます。確かに、前回はあのブライにやられました……けど、もう以前の僕じゃありません。あれから椿先生の元に通い詰めて、更に修練を積みました。春間っていう魔人は僕が倒します!」


「いや、けどなぁ……」


 言い淀む新。しかし、隣に座っていた八葉が、スクッと立ち上がり智秋に近づくと、包帯だらけの右手で額をそっと触った。


「……なるほど……ふふん、良いではないか、新。智秋の内より、以前以上の力を感じるぞ。やらせてみよう、何より少しでも虹枝を潰す可能性は増やさねば、な」


「あ、ありがとうございます、八葉さんっ!」


「私達はどっちでもいいわ。その子がやれるって言うなら、春間を抑えてもらいましょ。その間にブランクと私達であの男を倒してしまえば、残った春間一人なんて目じゃないもの」


 サンの言葉にアルも頷く。新はジッと智秋の目を見た後、フウと一息吐いた。


「……わかったよ。けどな、絶対に死ぬな。危なくなったら、すぐに逃げるんだ……いいね?」


「はい、約束しますっ!」


 満面の笑みで頷く智秋。それを見た八葉が、お前に良く似た頑固者だ。駄目と言っても聞くまいよ、とニヤニヤしながら新に囁いた。


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