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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第八話 最強の戦鬼! 神喰らう牙持つ男
93/130

8-7


「姿を変えたか。案外、見掛け倒し……」


━━ギンッ!!━━


 飛び込んできたブランクの拳を、士郎が右腕で受け防ぐ。完全に受け止め、留めたかに見えたその腕が、ブランクの拳によって、グググと押し込まれた。


「……じゃあないなっ! シィッ!」


 押された右腕でブランクの攻撃を上へと弾き、体勢の崩れたブランクの胸に差し込む様に、スッと左手を合わせる。


「くっ!?」


 予想外の声が士郎から漏れる。踏みしめた足底から生じた力を、全身の筋肉を通しブランクへ、更にその中の新へと直接打ち込む。そのインパクトが走る刹那、振り下ろされたブランクの鋭い手刀が、装甲の薄い関節部を狙い、神速の刃となって士郎の手首を切り飛ばしたのだ。


「ちぃっ……っ!!」


 しかし、士郎は止まらない。切られ欠損した手首だけでそのままブランクの胸を突く。

 士郎の攻撃が放たれた瞬間、ブランクは咄嗟に地を蹴り後方へと飛ぶと、空中でクルリと回転する事で衝撃を殺した。


「くっ……なるほど、それがブライを倒したお前の奥の手か……これは認識を改める必要があるな。ブランク、お前の力、俺の想像を遥かに超えているぜ」


「そうかい……なら、この力でお前達三人、俺がまとめて今すぐ楽にしてやる」


 着地したブランク。すぐに構えながらも、目はチラリと士郎の左腕に向かう。先の攻撃で失った士郎の左手は、短時間で既に再生を始め、それも間も無く完了しそうだった。

 ブランクの視線に気付いたかどうか……士郎は薄く笑い頭を横に振った。


「楽に……か。それを願った時も、確かにあったさ。けれどな……今の俺達には、やらねばならない事がある。せっかくの申し出だが、それを為すまで倒れる訳にはいかないんでね。アルッ、サンッ!!」


「はいっ、兄様っ!」


「……ここに居ます」


 いつの間に移動したのか、士郎の影から飛び出すように、アルとサンが躍り出る。二人は士郎の前に並び立つと、アルがブランクに向けてペコリと頭を下げ一礼した。


「……オ、オルトロスのアルです。兄様と貴方の戦闘……とても勉強になりました」


 一方、サンは腕を組み、ブランクを小馬鹿にしたようにフンと鼻を鳴らした。


「私はケルベロスのサンよ。まさか、私達が呼ばれる事になるとは思わなかったわ。なかなかやるじゃない……一応、褒めてあげるわっ!」


 双子の自己紹介に、ブランクは構えたまま小さく肩を竦める。


「そりゃありがとさん。で? 今度はお前達が俺の相手か?」


「に、兄様が望むなら……私はいつでもお相手しますよ?」


 スッとアルが目を細める。その瞬間、少女の身を覆う気配が一変した。ただ立っているだけだが、一度ブランクが動けば、その体は即応し戦闘を始めるだろう。

 サンはよりわかりやすく、燃える様な闘気を隠さずに、腰を落とし構える。その目は、獲物を狙う肉食獣のように、油断なくブランクを見据えていた。


「私だってそうよ! ねね、兄様。次は私達の番で良いですね?」


 子供が玩具をねだるようなサンの声。しかし、士郎はそれを否定する。


「いや……せっかく二人がやる気になった所で悪いが、三人まとめて相手をしてもらう。ブランクも今更別に文句は無いだろう?」


 双子の肩を掴み、士郎がズイと前に出る。その両手には白い光が宿り、肩を伝わり少女達の身体を覆い始めた。


「……ああ、良いさ。かかってこいっ!」


 しかし、士郎は動かない。ただ双子の肩に手を置いたまま笑う。


「ははは、まあ待てよ。今、面白いモノを見せてやる」


「何っ……何をする気だ?」


「見ればわかる。お前もしている事さ……ハァァッ!!」


 士郎の手、そして少女達を覆う光が輝きを増す。溢れる光の中、士郎と双子の声が同時に響いた。


「憑依合身っ!!」


 光が弾けた。小さな粒子となって散る光が渦巻く中から、少女達の姿は消え、士郎がただ一人現れる。


『なっ、まさか……憑依合身だと!? いや、そんな馬鹿な事が……』


 自身の中、繋いだ魂を通して八葉の驚きがブランクへと伝わる。同じ気持ちを抱いたブランクが、思わずジリと一歩後退した。


「どうだ、驚いたか? これが俺達の最強形態……三位一体トリニティだ」


 身体中の力を確かめるように、士郎が両手を握り開く。

 双子と合体した士郎の戦鬼体は、先程の姿から大きく変化していた。白かった全身の色は黒く変わり、その上を真紅の鎧のような装甲が覆う。鎧の肩と胸、そして両腕には牙を剥く狼の顔が装飾され、それぞれの口から黒くバチバチと火花を散らす焔がチラチラと見え隠れしていた。

 さながら地獄の業火を纏う、黒き多頭の狼神……それがトリニティとなった戦鬼士郎の姿だった。

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