6-13
「チッ!」
ブライがグレイバーのランスを掴み止める。バチバチと火花を散らしながら、ブライの手甲が白煙をあげる。
「何だぁ、テメェは! ブランクの仲間か!」
「そうだ。僕はグレイバー、お前達神魔の上に永遠に立つ墓標だ!」
「っ! そうか、ブランクは俺を止める時間稼ぎ……デュラハンの野郎をやりやがったな、グレイバー!」
「今更気付いたって遅いよ! はっ!」
ランスを押す右腕に力を込めながら、グレイバーが左腰に手を回す。金属装甲がカシャリとズレ、生じた隙間に手を差し入れると、白い苦無型の金属をブライに投げつける。
「爆っ!」
「何っ!?」
ブライの眼前数センチで激しい爆発を起こす苦無。グレイバーもブライも外傷らしい外傷は受けなかったが、目の前で発生した激しい光にブライが首を振る。
「くっ、テメ……目がっ!」
目を抑えよろけるブライ。思わず緩んだ手からランスを引き抜き、グレイバーはブランクの元へ飛び退る。
「今です、ブランク! 撤退しましょう!」
『うむ、これ以上は新自身が保たん。退くぞ!』
「…………」
グレイバーと八葉、外と内からの声に、しかしブランクは応えない。
『……どうした、新?』
「あ、あの……ブランク?」
ブランクがキツく拳を握り締める。スリット状のカメラアイの奥、強い意志の力が光を放った。
「……グレイバー。君を一人の戦士として認めた上で、俺から一つ頼みがある。俺の残りの力全部使って奴に、ブライにぶつける、その手助けを頼みたい」
『っっっ! 馬鹿者! 阿呆! 何を考えている! 今、お前がどんな状況か……』
「わかっているさ、八葉。それでも、俺は……」
「……わかりました、やりましょう、ブランク。僕が全力でサポートします!」
『く……智秋まで何を……』
「悪いな、八葉。グレイバー、頼むぞ」
「はい! ブランク、僕の背に!」
「わかった!」
グレイバーの背にヒラリと飛び乗るブランク。すると、グレイバーの肩部装甲がガチャリと変形し、持ち手が現れる。それをブランクが掴むと、グレイバーがブライから距離を取った。
「セーフティデバイス・リリース、アンリミテッドコネクトッ!!」
ブランクがアンリミテッドフォームへと姿を変える。身体を流れる力が、グレイバーの身体へも流れ両者の間を循環する。
「これが、ブランクの……新さんの魂の力……」
「上手くいってるようだな。いいな、八葉?」
『ふん、私が何を言おうとやるのだろう。この大馬鹿新、私はどうなっても知らんぞっ!』
「はは、ありがとうよ。行くぞ、グレイバー!」
「はいっ!」
グレイバーがランスを持つ手に力を込め、ようやく視力を取り戻してきたブライへ駆け出す。と、同時にブランクとグレイバー、二人が同時に叫んだ。
「エクセス・チャージっ!!」
ランスの先端から眩い光が溢れ、二人を包み込む。
「バイツ・チャージ・ストライクッッ!!」
更に輝きを強くし、巨大な光の矢となったブランクとグレイバーは、スピードを増してブライへと激突した。
「グゥゥゥッ、くぅぉぉぉぉっ!」
光の奔流を両腕で抑え込もうとするブライ。黒い金属装甲が徐々に灰へと変わる……が、その常識外れな力によって、光は少しずつ小さくなっていく。
「ブランクッ!」
グレイバーの呼びかけにブランクが歯を噛み締めた。グレイバーの装甲を砕きそうなほど強く握り、ブランクが吼える。
「ああ、まだまだぁっ!」
光が膨れ上がる。弾かれたブライの両腕が、その巨体が白光の中に呑まれ消えた。
「……やったか!?」
光が収まると共に、グレイバーが辺りを見回すがブライの姿は見当たらない。安堵の息を吐こうとした瞬間、上空から声が聞こえた。
「……まさかな……俺をここまで……」
「まさか……!?」
慌てて振り仰ぐグレイバー。その目に映ったのは、両腕と片足、そして腹部の大部分を失いながらも、なお消滅していないブライの姿だった。
「ぐぉぉ、痛ぇぇ……ブランクにグレイバー、とりあえずは褒めてやるよ……次に会う時、この痛み、きっちりテメェ達に返してやる。じゃあな」
「ま、待てっ!」
制止するグレイバーの声を無視し、ブライが闇夜に溶けるように消える。後に残されたグレイバーは、ガクリと肩を落とした。
「はぁ……倒せたと思ってんですけどね。逃しちゃいましたね、ブランク」
背中のブランクに話しかけるグレイバー。しかし、返事は返ってはこない。
「あれ? ブランク? 新さん?」
その時、ガチャリと重い音と共に何かが落ちた音がした。嫌な予感を無視してグレイバーが振り向くと、空を見ているかのように仰向けで、ブランクが路面に倒れて動かない。
「ちょ、ちょっと、大丈夫ですか!?」
慌てて呼びかけるが、ブランクに動く気配はない。ただ、代わりに白い光を放った。
「起きろ、起きろっ、新!」
光が消え、眠ったように瞳を閉じ動かない新と、その新を揺り動かす八葉が現れる。
「あ、あの、八葉さん。新さんは……」
「急げ、智秋。哲也に連絡するのだ……急げっ!」




