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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第五話 もう一人のブランク? 浜辺を襲う黒いギア
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5-9


「ぐっ……!」


 砂浜に鈍い音が響く。新に殴られ、哲也が後ろへ数歩たたらを踏んだ。その襟首を新が掴みあげる。


「何故だっ、哲也! どうして智秋君を……子供を巻き込んだっ!」


「あ、新さんっ」


 思わず止めに入ろうとした律を、哲也が手で制した。襟首を掴まれたまま、新を見て頷く。


「君なら、こうするだろうと律君を離れさせたけれど、やっぱり僕の思った通りだったよ。新……アンリミテッドの使用によって、満足に力の出ない君の、義憤から生じた一撃を僕は甘んじて受けた。それが君の怒りに対する最低限の礼儀であり、僕がするべき覚悟だと思ったからだ」


 掴んだ手にそっと自身の手を乗せ、哲也が静かに語りかける。


「これから、新の疑問にも答えられるよう、事情を説明しよう。それが済んでから、僕を殴りたいなら殴ればいい。……どうだい?」


「……っ。わかった」


 目を伏せ、新が手の力を緩める。哲也を離し、成り行きを静観していた八葉の隣へ戻り、ドカリと砂浜に座り込む。

 その姿をチラリと見下ろし、八葉が鼻を鳴らした。


「ふん……感情は時として力になるが、それも御する理性と共にあってこそ。まだまだ未熟だな、新」


「くっ……悪い、八葉……説教するのは後にしてくれ」


「ふぅ……それじゃあいいかな? 智秋君が何故ここにこうして居るか、それを説明しよう。新、彼を神魔から救い出した時の事を覚えているかい?」


「ああ、トライコーン……あの時はユニコーンか。神魔との結び付きが強くて、セパレス・ダブルインパクトで切り離したな」


「だけれど、それでも完全には分離セパレート出来なかった。そこで八葉の神力で分断した……そうだろう?」


 新の言葉を哲也が補足する。その内容を肯定するように新と八葉が頷いた。


「うん。実はね、これは後でわかった事だけれど……その際に智秋君の中に、神魔の因子が残ってしまったんだ。極々少量だけどね」


 右手の親指と人差し指で、僅かな隙間を見せる哲也。それを見て新と八葉が表情を曇らせる。


「むぅ……やはり、あの強引な分断では駄目だったか」


「いや、あの時点で二人の判断は、間違っていなかったと僕は思うよ。結果的に智秋君は助かったわけだしね。とはいえ、問題は起きてしまった。残された因子が、彼の体内で活動を始めたんだ」


「活動? ちょっと待てよ、神魔は倒したはずだぞ」


「そうだね。前例が無い以上、これは推測でしかないのだけれど……おそらくは本体の制御を失った事による暴走に近い状況だったんじゃないかな? まあ、原因はともかく、何かしらの方法で早急に止める必要があった。そこで使ったのは……智秋君、皆にギヤを見せてくれるかな」


「あ、はい……これでいいですか」


 哲也に言われ、智秋が新達に左手首を伸ばし見せる。そこには細部は異なるが、ブランクの物によく似たギヤがまかれていた。ギヤの中央、嵌め込まれた結晶を見て、八葉が表情を変える。


「……むっ、新っ!」


「ああ、これは……」


「そう、神魔トライコーンの結晶……ブギーマンに敗れた新達と一緒に回収した物だね」


「……哲也が持っていたのか。どおりで、あの後俺達が現場を探しても無いわけだ」


「ふむ、しかし大丈夫なのか? その結晶、まだ私の力で浄化してはいないぞ」


「そう、実はそこがポイントでね」


 八葉の疑問に、哲也が満足そうに頷く。


「智秋君のギヤは、グレイブギヤという名前でね。ブランクギヤのデータを基に新設計した物なんだ。蓄積した魂の力で、装着者を覆う器を造り保護するブランクとは逆に、その力で神魔を休眠状態で封じ、制御して力を引き出すようになっている」


「確かに、神魔の臭いはしないな。これは休眠……というより仮死に近い」


「だからグレイブギヤか……」


「本体である結晶と繋がりが生まれた事で、智秋君の体内に残った因子もまた休眠状態に出来たんだ。これが現状、智秋君がギヤを装着している理由さ」


「なるほどな……ここまでは納得した。けど、それと彼を神魔との戦いに引っ張り出す事は別問題だ。違うか?」


「それは……」


「それは僕が望んだんですっ!」


 新に応えようと口を開いた哲也を遮るように、智秋が叫んだ。


「ブランク……いえ、新さん。僕の為に怒ってくれてありがとうございます。でも、哲也さんを責めないでください。偶然だったかもしれませんが、戦える力を手に入れた時、戦おうと決心したのは僕自身なんです」


「……神魔との戦闘は、ゲームや遊びじゃないんだぞ?」


「新さんの言う事もわかります。……でも、僕は知ってしまったんです。神魔に魂を食べられる痛みや苦しさを……僕は新さん達のおかげで、こうして無事でいられたけれど、神魔の数だけ……いえ、もっと多くの人があの痛みに囚われているのなら、僕一人だけ安全な日常になんて居る事は出来ませんっ!」


 握った両拳を更に力を込めて震わせ、真っ直ぐに新を見る智秋。その熱意に、新は何かを言おうと口を開きかけ、閉じ、視線を逸らして絞り出すように応えた。


「…………君はまだ子供だ」


「はっはっは、もう良いではないか、新」


 新の肩にポンと手を置き、八葉が愉快そうに笑い声をあげる。


「子供だと? よく見るといい。それが幸不幸は別として、この少年の目は無邪気な子供のそれではない。覚悟を決めた男の、戦士の目だ。……そして、私は過去に同じ目をした少年を、燃え盛る炎の中で見たぞ……なあ、新?」


 ピクリと新の肩が動く。やがて堪え切れないように、両手でワシワシと頭を掻き毟り、自棄気味に叫んだ。


「…………あ〜、もうっ! わかった! 君が戦う理由はよ〜くわかった!」


「そ、それじゃあっ」


「ただし智秋君。君が戦う事を俺が認めるのは、今から言う四つの条件を満たした場合だけだ」


 新が親指を折った掌を頭上に挙げる。


「四つの条件……ですか?」


「ああ。一つ、一人では戦わない。どんな時でも必ず俺に連絡してくれ。二つ、常に自分の命を最優先に行動する。君が傷つく事で哀しむ人間がいるのを忘れるな。三つ、戦闘中は俺の指示に従ってもらう。……ここまではいいかい?」


 条件を言う度に指を折り曲げ、最後の一本を残し、新が智秋へ問いかける。


「はい、全て守ります。それで、四つ目はなんですか?」


「ああ、四つ目はな……」


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