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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第五話 もう一人のブランク? 浜辺を襲う黒いギア
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5-8


「な、な、何事だっ!」


 突然起きた爆発に動揺を隠せずケルピーが叫ぶ。

 千切れた首を持ち上げ再生しながら、キョロキョロと辺りを見回すケルピー。

しかし、周囲には爆発で発生した白煙が立ち込め、一時的に視界を塞ぎ、状況が把握出来ない。

 もちろん、それはブランクも同様だった。


「今のは……一体……ん?」


 警戒を崩さず、白煙の向こうに居るヒドラから距離をとるため後退したブランク内部に、通信を告げるコール音が響く。

 ブランクは、普段全く使用しなかった機能に、少し驚きながらも応答する。


「遅くなりました……えっと、ブランクさん? あいつの首はこちらが潰しますので、その隙に神魔を倒してください」


 白煙が徐々に晴れる。ヒドラとブランクの間、まるでブランクを護るように、異形の戦士が立っていた。

 やや小柄な全身を、ブランクと同じ白い金属装甲で包み込み、頭部にはブランク同様の細長いスリットと、その上部に鋭い角が一本生えている。


「あんたは……」


「細かい説明は後です。先ずは一刻も早く神魔を!」


『新、私にもどういう事かわからぬが、これは好機と言えよう』


「そうだな……おい、あんた名前は?」


「はい、ええと……グレイバーです!」


「わかった、グレイバー。さっき言った事は本当か?」


「はい、それだけに専念できるのなら、あの首全てを抑えてみせます!」


「よし、なら任せるぞ、グレイバー。奴が次に動いた時に頼む!」


「わかりました!」


 グレイバーの大腿部を構成する金属装甲が、カシャッと音を立てて下方へスライドする。

 それによって生じた装甲間の隙間へ両手を差し込みながら、さながら早撃ちのガンマンのようにグレイバーが軽く腰を落とした。

 自身に向けて構えるグレイバーに、ケルピーがバシャバシャとヒドラの胴を苛立たしげに叩く。


「神魔狩りが二人……だと? ええぃっ! 貴様達のような敵がいくら増えようと、私の敵ではないわっ!!」


 ヒドラの首が、巨大な胴が、再び小さく縮み始める。グレイバーがジリと右脚を砂浜に踏み込む。


「来ますっ、ブランクさん!」


「ブランクでいい。セーフティデバイス・リリース……アンリミテッド・コネクトッ!!」


 背後の凄まじい光を感じながら、グレイバーは前方のヒドラに集中する。限界まで収縮したヒドラの首は今、高速でブランクとグレイバーに向かって襲いかかってきたのだ。


「ハァッ!」


 短く息を吐き、グレイバーが装甲から両手を引き抜く。その左右、十の指には、それぞれ忍者のとび苦無くないに良く似た、白い小型の刃物が数本づつ握られていた。

 グレイバーが両腕を高速で振ると、解き放たれ飛び出した苦無は、まるで意思があるかのように、迫るヒドラの首一つ一つへと、軌道を変え突き刺さっていった。


「爆っ!」


 叫びと共に、更に大きくグレイバーが腕を振る。その瞬間、ヒドラ内部を漂う飛苦無が白い輝きと共に、一斉に大爆発した。


「まだ!」


 再度グレイバーが装甲に手を入れ、引き抜いた苦無を放つ。先の攻撃を受けず、残っていたヒドラの首も、次弾の爆発によって全て落ちた。


「ば……馬鹿なっ!」


 ヒドラの首を次々と爆破され、焦るケルピー。急いで首を再生し、グレイバーへ向け収縮する事なく襲いかからせる。

 水圧に潰れるグレイバーを想像し、更に追撃しようとヒドラの首を新たに生やし始めたケルピーを、ふと黒い影が覆った。


「何っ?」


 振り仰ぐケルピーの視界に、光を全身に纏ったブランクが映る。

 迎撃しようとするが、グレイバーに差し向けた首を戻す事も、新たな首が生えきる事も間に合いそうにない。


「くっ、上位の神魔である私が、こんなところでっ!!」


 上空のブランクに向かってケルピーが両腕を伸ばす。同時にケルピーの周囲が泡立ち、ヒドラから細く鋭い海水の槍がブランクへ勢いよく伸びた。


「ケルピー……貴様に喰われた人々の魂、今俺が楽にしてやるっ! バイツ・ストライクッ!!」


 ブランクの体を光が包みこむ。巨大な光の狼頭となったブランクに、海水の槍が次々と突き刺さるが、光に触れた途端に蒸発して消滅していく。


「無駄だっ!」


「クソッ! クソッ! クソがっぁぁぁ…………」


 狼頭がヒドラを貫き、ケルピーを灰へと変える。

 主を失ったヒドラもまた、形を保てずただの海水となって、飛沫を上げながら崩れ落ちた。


「ふぅ〜……今度こそ、一件落着かな?」


 バシャバシャと波を掻き分けるようにブランクが砂浜にあがる。その手には、青く輝く結晶が握られていた。


『ふん、新。まだ一つ、大きな問題残っているだろう?』


 ブランクの内側から八葉が顔を上げさせる。視線の先でグレイバーが所在無さげに立っていた。


「よう、助かったぜ、グレイバー。そっちも無事だったみたいだな」


 片手を挙げ、ブランクがグレイバーに声をかける。ギヤの通信機能ではない通常の会話だ。

 グレイバーもペコリと頭を下げる。


「あ、はい! ブランクさんも無事で良かったです!」


「ブランクで良いって言ったろう。ところで、そろそろ教えてくれないかな? あんたは一体何者なんだ?」


「うん、それは僕から話そう」


 ブランクの問い掛けにグレイバーが答えるよりも早く、二人の背後から声がかかる。振り返るとそこには、モーター付きの小型船に乗った哲也と律が居た。


「やっぱりお前の差し金だったか、哲也」


「まあね、驚いたかい?」


 船から降りた哲也が、律の手をとり下船を手伝いながら答える。


「さて……と。説明を始める前に、律君。少し離れていてくれるかな?」


「え? あ、はい……こうですか?」


「ああ、そうだね。その辺りで良いと思う。さて……グレイバー、ギヤを解除してごらん」


「はい、装着解除」


 哲也の指示でグレイバーが変身を解いた。ブランクと同様に白い光に包まれ、中から人影が現れる。


「紹介しよう。グレイバーギヤの装着者、長根智秋君だ」


「なっ……」


 智秋を見たブランクの動きが止まる。以前、神魔トライコーンより救い出した少年が、自身と同じ金属製の腕輪を付け、目の前に立っていたのだ。


「…………ディスコネクト」


 ブランクが光に包まれ、新と八葉に分かれる。


「む……新、どうし……」


 突然の変身解除に、八葉が疑問の声をあげたが、新は応えず、アンリミテッド後の震える脚で一直線に哲也へと向かい……


「歯くいしばれっ、哲也っ!!」


 震える拳を強く握りしめ、哲也の頬を力一杯殴り飛ばした。

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