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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第五話 もう一人のブランク? 浜辺を襲う黒いギア
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5-3


 新達が眠りについた頃、別室に宿泊した哲也は、広縁の椅子に深く身を預け、窓から静かな夜の海を眺めていた。


「ふぅ……たまにはこういう場所で、ゆっくりと過ごすのも悪くは無いな……ん?」


 その時、脇の高座卓の上に置いていた、哲也の端末が鳴動し静寂を破る。表示された発信者の名前を見て、笑い応答する哲也。


「やあ、すまなかったね。そう言えば君に連絡するのを忘れていたよ」


 形ばかりの謝罪を口にしながら、哲也が通話相手の話に相槌を打つ。その姿はどこか楽し気だ。


「ああ、そうだね。おそらく明日戦う事になるだろう。……ははは、そう心配する事も無いと思うよ。うん、そうだ……君に渡したギアは、ブランクギアと同じ、間違いなく僕の自信作だ。君がそれを使いこなせる以上、簡単に負ける事は無いだろう。明日は存分にブランクを驚かせてやろうじゃないか。その為にも、今日はもう休むといい……うん、おやすみだ」


 相手との通話を終え、端末を卓上に戻すと、哲也は椅子に座りなおし再び外を眺めた。


「……はぁ……まいったな。ああ言った僕の方こそ、明日が楽しみで眠れそうにないよ……新」



「うん、晴れたね。今日も暑そうだ」


 哲也が空を眺め、独り言のように呟く。

 翌朝、砂浜には昨日同様、水着姿の新達と哲也が立っていた。


「ああ、あまり良い天気だと人が増え過ぎるんだけどな……仕方ない、とりあえず予定通りいこう」


 新が横に立つ八葉の頭にポンと手を乗せる。八葉はチラリと新に目を向けるが、すぐに目を伏せる。今朝新が起きた時から、何やら考え事をしているようだった。

 そんな相棒の姿に、引っかかりを覚えた新だったが、海を指差し話を続ける。


「俺と八葉が海で奴の現れるのを待つ。八葉の力で、奴の出現を感知ししだい、海中に潜った上でブランクへとチェンジし迎撃する」


 新の言葉に哲也が頷く。


「理論上では、海つまり水中で新がブランクになった場合、発生したエネルギーの余波で、光を伴う水柱が立つはずだ」


 ポンと口で言いながら、握った手を開き、哲也が爆発を表現する。


「それ……俺や八葉はともかくとして、他の人は問題無いのか?」


「ほとんどのエネルギーは上方に抜けるから、まあそこまで影響は出ないだろう。でも規模は大きくなくても、目立つし少し離れ気味に居た方が良いだろうね」


「その方が良さそうだな……オーケーだ」


「ああ。そして僕と律君だけど、ブランクによる水柱を確認後、事前に手を回し準備している、偽の避難放送を一帯に流して、海水浴客を海や浜辺から退避させよう。巻き込まれる被害やブランクの戦闘目撃者は、これでだいぶ減らせるはずだよ」


「助かる。よし、そういう事だから、よろしく頼んだぞ、律」


「はい! こちらは任せてください。新さん、八葉さん、気をつけて頑張ってくださいね!」


「おう。よし、行くぞ、八葉!」


「ん、う、うむ」


 律の応援に手を挙げ応えながら、新は八葉を促し海へと入っていった。



「どうだ? 八葉。何か感じるか?」


 海へ入り数刻が経過した。波に揺られながら、新が八葉に話しかける。先の話通り、日が高くなるにつれ増えだした海水浴客から、やや距離をとった位置で浮かぶ新が、全体の状況を把握するには、唯一八葉の嗅覚が頼りだ。


「ふむ……いいや、まだだな」


 新に抱えられ、海の中でも不思議と濡れた様子の無い包帯で覆われた両腕を、万歳の形で上へ挙げた八葉が首を振る。


「そうか…………なぁ、八葉」


「む、なんだ、新?」


「今日のお前、朝からどうも様子がおかしいんだけどさ。ひょっとして昨夜、何かあったのか?」


「ふむ……」


 新の問いかけに、八葉が新の顔を見つめる。その瞳の中にいくつかの感情が色となって現れ消えたのを、新は気付いたが黙ったまま返事を待つ。


「……ふん、そうだな。どうすべきか迷いはしたが、やはり新には話しておこう」


「ん? 俺に何か関係ある事か?」


「ああ。新達が昨夜眠った後の事だ。哲也が……」


 そこまで言いかけて、八葉の目がスッと細まり、新から離れる。そのまま両腕を、新に向け大きく振るった。

 八葉の両腕は、光を放ち瞬く間に狼の首へと変化すると、グングンと伸びながら新に迫る。


「ちょっ……!」


 思わず身構える新。しかし、八葉の両腕は新の脇を素通りした。


「話は後だ、新! 奴が現れたぞ!!」


 慌てて振り返る新。そこには今まさに新に襲いかかろうとした何かと、それを両の牙で噛み砕く八葉の狼頭が居た。


「こ、こいつか!」


 それは、一見するとただの水の塊だったが、よく目を凝らすと、その透明な表面には不思議な模様があり、どうやら鱗のようだ。

 水の塊からは、同様に鱗模様のある、数本の太い触手のような水が生え、八葉によって次々と噛み砕かれている。

 だが、八葉の攻撃で一瞬形は崩されるものの、液体故にか、触手はすぐ元の形状に再生するようだ。

 再生した触手の先端には、それぞれ蛇とも龍とも思える頭部が付いていた。


「多頭蛇……ヒドラか!」


「新よ、早くしろ! このままでは、そう長く保たんぞ!」


「おぉっ! 待ってろ、八葉。チェンジッ!!」


叫びながら、海中へ潜る新。瞬間、凄まじい光を伴い海中から大きな水柱が上がった。

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