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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第一話 虚木超常現象研究所の人々
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1-4


『居たぞっ、あそこだ!』


 廃ビルを抜けると、八葉が向けさせた視線の先、ゆっくりとだが高度を上げつつあるグリフォンの姿が見えた。


「しめたっ、奴はまだ上手く飛べないようだな」


『ああ、なにせ不完全な覚醒だったからな。仕止めるなら今のうちだぞ、新』


「おうともさ! チャージ!」


 新の両脚が青く輝く。そのまま、大地を蹴ると凄まじい速度で走り出した。


「ここだ!」


 高速移動のまま踏み込むと、グリフォンの近く、八階建てのビルに向かって高く高く跳躍する。

 空中に青く輝く軌跡を残して、新は易々とビルの屋上に降り立つ。グリフォンはすぐ目の前だ。


「はぁっ!」


 着地した勢いで、屋上からグリフォンに向かって再度跳ぶ。空中で半回転し、そのままグリフォンの背中に飛びついた。


「ぐぅっ!? き、貴様はっ!」


「お前の……いや、お前達神魔の自由にはさせないって言ったろう? はっ!」


 新が気合と共に、羽ばたくグリフォンの翼を根元から、両腕で万力のようにギリギリと締め上げる。

 ただでさえ満足に飛行出来ないグリフォンは、その攻撃に耐えられるはずもなく、新を乗せたまま、ビルの屋上へと墜落した。


「がぁぁぁぁっ!」


 衝撃に合わせ新が大きく腕を振る。

 メキメキと嫌な音をたて、グリフォンの両翼が無残に捥げて新の腕の中に残る。それをさも興味無さげに放り捨てると、新はグリフォンの背中を踏みつけた。


「フィニッシュの前に一つだけ尋ねるぞ、鳥野郎。お前は間口耕三という男を知っているか?」


「ぐっ! そんな男、我が知るかぁっ!!」


 四つ這いの体勢から、背中の新ごとグリフォンが跳ね起きる。そのまま振り向きざまに、強靭な獅子の右脚で回し蹴りを放ってきた。


「くっ!」


 グリフォンの背から落とされ、不安定な状態のまま蹴りを受けた新は、何とか両腕でガードしたものの、大きく後方へと蹴り飛ばされた。

 そのまま屋上から落下しそうになるが、咄嗟に手すりを蹴って再びグリフォンの前へと着地する。


「……っとと……そうか、知らないか。今回も情報収穫は無し、されどランクはC……いや完全に覚醒していればBって感じだな」


「ごちゃごちゃと何を言っている! 依り代に続き、大空を舞う我が翼までよくもっ!」


 憤怒の炎をその目に宿し、グリフォンが吼える。


「あ〜……そんなに叫くなよ、それくらいお前達ならすぐに生えてくるだろう? まあ……もっともそんな暇はやらないけどなっ!」


 新がグリフォンへ向かって走りだす。グリフォンもまた、その鋭い鉤爪を新目掛けて振り下ろした。


「何っ!?」


 しかし、グリフォンの腕は虚しく宙を掻く。眼前から消えた新をキョロキョロと探すグリフォンに、新が声をかけた。


「悪いな……今の俺は、速さにかけちゃ、ちょ〜っとばかり自信があるんだ。チャージッ!」


 いつの間に回り込んだのか、グリフォンの背後でそう言うと、新の右脚が青く輝く。


「はぁっ!」


 新は、振り向いたまま驚き動けないグリフォンの懐に飛び込むと、輝く右脚での連続蹴りを放つ。

 まともに蹴りを受け、身体のあちこちからシュウシュウと煙を出したグリフォンがたまらず膝をついた。


「これでトドメだっ! エクセス・チャージッ!」


 新の右脚が、かつてない程に青く輝く。


「ぐぅ……神魔である我をここまで……き、貴様は一体……何者なんだっ!?」


「……冥土の土産に覚えておけ、俺はブランク。お前達に全てを奪われ、これから奪い返す男だっ! はぁっ!」


 新……いや、ブランクが高く跳躍する。

 空中で一回転すると、青い輝きを纏ったまま急降下し、グリフォンの頭部へと強烈なかかと落としを放った。


「バイツ・ストライクッ!!」


 まるで巨大な獣に噛み裂かれたかのように、グリフォンの全身が新の右脚に両断され、断面から左右へと一気に灰化した。


「ふぅ……とりあえず依頼達成……かな?」


 灰の山から緑に光る結晶を拾い上げ、ブランクが一息つく。


『明を楓の下へ届けるまでが依頼であろう。行くぞ、新』


「それもそうだな……ディスコネクト」


 ブランクを白い光が覆う。光が消えると、元の姿に戻った新と八葉が現れる。


「ほらよ、八葉。美味いか?」


 八葉の大きく開けた口に、緑の結晶を放り込む。

 八葉はそれを、バリボリと噛み砕きながら頷いた。


「うむ、この間のよりはいくらかマシ、だな。だが私は肉の方が嬉しいぞ、新よ」


「それは律に言ってくれや。さて、明さんを迎えに行くとしますかね」


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