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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
特別編 魔を討つ疾風、虎娘大暴れ!
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特-8



「ブフフ……なるほど、なかなか凄まじい力ですね。以前の私ならば、今の一撃で完全に終わっていたでしょう……しかしっ!」


 オークがブランクの掴んだ拳ごと、大きく腕を振る。まるで布切れのように、ブンブンとブランクの体が振り回され、向かいの塀へと投げつけられた。


「くっ!」


 瞬時に身を翻したブランクが、ブロック塀へ水平に着地し飛び上がる。衝撃を殺し、空中でクルリと回転したブランクが、崩れた塀の前に降り立つと、起き上がったオークは首をコキリと鳴らした。


「今の私は、かつての私ではありません。見なさいっ!」


 そう言うと、オークは左手を高く掲げる。その巨大な手には何かを握っているのか……突然、指の隙間から黒い光が溢れ出した。


『むっ……気をつけろ、新!』


「ああっ! こいつはいつもの神魔とはどうも違う!」


「グゥオオオオオッ!!」


 オークが夜空に向かって咆哮する。その声に呼応するように、黒い光が輝きを増し、まるでその光に染め上げられるように、オークの左手から全身へと、表皮が次々と黒く変色していった。


「……ブフゥ……お待たせしました」


 木炭のような黒い身体へと変わったオークが、腕を降ろす。開いたその手には、何も握られてはいない。


「なんだ、大袈裟に光った割には、ただ黒くなっただけか!」


 ブランクが軽口で挑発する。しかし、構えた姿からは、言葉ほどの余裕はない。


「ただ黒く……ですか。では、本当に黒くなっただけか、貴方の全力で試すとしましょうっ!!」


 トンッと、オークが軽く地を蹴る。ただそれだけの動作で、黒い巨体は驚異的なスピードでブランクへと迫った。


「はぁっ!」


 そのまま、丸太のような腕がブランクに向けて振り下ろされる。攻撃そのものは相変わらず単調な力任せの動作だったが、速度は雲泥の差だ。

 当然、そこから産み出される破壊力も、桁違いに上昇している。


「っ……チャージッ!」


 その勢いに、正面から受けるのを止め、半身ずらす事で躱すブランク。

 風を切り脇を通り過ぎるオークの腕を横目に、飛び上がったブランクの輝く右脚が、体勢を崩したオークの左側頭部を狙い打つ。


━━ガギンッ!━━


 金属と金属が激しくぶつかり合うような音が響く。チャージによって強化されたブランクの蹴撃は、しかしオークを打倒するには至らない。


「ブフッ、おのれ、ちょろちょろと!」


 ブランクの攻撃を頭部に受け、軽くよろめいたオークが、ブランク目掛け次々と拳を打ち込む。


「アラクネ! ソウル・コネクトッ!」


 オークの猛攻をかいくぐりながら、ブランクが叫ぶ。アラクネの力を宿したブランクが腕を振り、極々細かな蜘蛛糸が指先から放出されていった。


「ぬぐ?」


 ギシリと軋んだ音を立てて、オークの攻撃が止まる。腕や体に何重にも巻き付いた強靭な糸が、オークの自由を奪ったのだ。


「動けまいっ! エクセス・チャージッ!!」


 ブランクの両腕が黄色く輝く。しかし、オークは動けない体のまま笑う。


「ブハッ、いいえ、まだまだですよっ!!」


 飛びかかるブランク目掛け、オークが口を大きく開けた。次の瞬間、オークの体内から黒い粘液の濁流が勢いよく飛び出し、空中のブランクを吹き飛ばす。


「グッ!」


 距離を開け着地するブランク。オークとブランクの間に、汚らしい粘液の塊が、ビチャビチャと落下していく。


「新しい私には、こういう事も出来るのですよ。さあ、現れなさいっ!」


 ブクリ。地に落ちた粘液の表面に小さな泡が生まれる。泡が弾けると次の泡が現れ、粘液の表面が次々と泡立ち始めた。

 ブクブクと泡立ち、その度に粘液の体積が増していく。やがて泡は三つの塊に分かれ形を変える。

 人間を醜くディフォルメしたような四肢を持った粘液達が立ち上がる。人間であれば頭部がある場所に、突然ギョロリとした一つ目が現れた。


「ギッ! ギッ!」


 粘液が固まり、弾性のある体へと変化した三体の一つ目達は、言葉にならない声を挙げながら、次々とブランクへ襲いかかる。


「こいつは……新手の神魔か?」


 戸惑いながらも一つ目達の攻撃を躱し、その体を蹴り飛ばすと、ブランクの中で八葉が応えた。


『いや、どうやら奴の分身のような存在だな。しかし、この力は一体……』


「考えてもわからない事は後回しだ、八葉。分身なら依り代を切り離す必要もない。このままいくぞ!」


「バハハッ! まだまだぁっ!」


 一つ目達と戦うブランクを笑いながら、オークが腕に力を込める。強靭な蜘蛛糸はブツブツと千切れ、オークは自由となった腕をブンと振る。その両手には左右それぞれ、先と同様の巨大包丁が握られていた。


「かぁぁぁぁ……がぁぁぁぁっ!!」


 更にオークが口を大きく開く。オークの叫びと共に、再び黒い粘液が奔流となって溢れ出し、新たに三体の一つ目へと変化した。

 オークが二丁の包丁を合わせ、いやらしい笑みを浮かべる。


「さあ、調理再開ですよっ!」

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