表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第四話 紅蓮の記憶と鬼師匠
37/130

4-12


 ディスプレイに表示された名前を見て、新が応答ボタンを押す。聴こえてきたのは聞き慣れた女性の声だった。


「あら、繋がったわ、残念ね」


「おいおい、とても電話を掛けてきた奴の台詞とは思えないな、多聞」


 電波の向こうから、情報屋多聞のクスリと笑う声が聞こえる。


「そうかしら? だって、新が出なければ、可愛い律きゅんに電話する口実になるじゃない? 律きゅんたら声だってエンジェルなんだものぉ」


 多聞がンフウと荒い鼻息を漏らす。新は額に指を当て首を振ると、曖昧に応えた。


「あ〜、そうか……うん、それで要件はなんだ?」


「ふふ、そうね。今連絡したのは他でも無いわ。貴方に調査を依頼された、例の組織についてよ」


「例の……それって、虹え」


 虹枝の会、思わずそう言いかけた新の言葉を、多聞が遮る。


「しー、ダメよ、新。私の部屋以外では、通話だとしても警戒するべきよ」


「あ、ああ、悪い。それでアレについて、何かわかったのか?」


「まず、例の組織と同名、または近い名前の組織なんだけれど……意外な事に結構な数が見つかったの」


「ん? そんなにあったのか?」


「そう、子供の学習会や老人ケア団体なんかもあるわね。全く関係ない組織の場合、おそらくは蓬莱の玉の枝辺りが名前の由来なのだろうけれど……」


「蓬莱の玉の枝?」


「あら、新は知らないかしら? 竹取物語に出てくる宝物よ。……まあ、それは今はどうでもいいわ。それらの内どれが例のアレと関係のある組織なのか……もしかしたら関係している組織が複数の場合も考えられるけれど、兎に角一つ一つ慎重に裏取りしている段階ね」


「ふむ、それで? お前の事だ、途中経過を伝える為だけに、わざわざ連絡してきた訳ではあるまい?」


 新の傍から身体を伸ばし、携帯電話に向かって八葉が話しかける。先程の哲也との通話もそうだが、八葉の耳には問題無く通話内容が聴こえていたようだ。


「あら? 八葉ちゃんもそこに居たのね。ふふ、相変わらず仲良しね、貴方達。勿論、今回電話したのは、八葉ちゃんの言う通り、調査の途中で貴方達に伝えておくべき事があったからよ」


 コホンと軽く咳払いすると、多聞が続ける。


「とある場所にある一件の貸し倉庫を、例の組織と同名の会社が契約して借りているわ。同名の会社と言ってもペーパーカンパニー……実在していない組織ね。そして、周期的にこの倉庫へ入り利用していると思われる者が一人……おそらく貴方が言った例の男と同一の、ボロ布を纏った不気味な男よ」


「っ!」


 新が息を呑む。その脳裏にはブギーマンの不気味な姿が鮮明に浮かんだ。


「いくら私の部下達でも……流石に、内部で何が行われているか、そこまでは踏み込めないわ。それでも、知っておいた方が良かったでしょう?」


「ああ、助かる。それで、その貸し倉庫はどこに?」


「詳しい場所は私の部屋で。周期通りなら、男が現れるのは、今週金曜の夜ね」


「金曜の夜……四日後か……わかった。四日後、いつもの時間にそちらに向かう。構わないか?」


「ええ、いいわ。それじゃあ、新、八葉ちゃん、待っているわね」


 それだけ言うと、プツリと多聞との通話が切れた。

 新は携帯電話をしまうと、左手を掲げブランクへと変身する。更に八葉が身を寄せ憑依合身すると、ブランクは椿達の待つ屋敷へと駆け出した。


『四日、いや正味三日か……もう少し猶予が欲しかった所だが……いけるか?』


 ブランクの内部で八葉が新に問いかける。


「なに、キッカケは十分。後は何が何でも仕上げてみせるさっ!」


『ふむ、意気は良し。先の疲労も、三郎太の薬湯で大分癒えたようだ。あれを飲みながらならば、多少の無理も効くだろう』


 八葉にそう言われて新は気付く。ブランクとなった今は当然だが、確かに哲也や多聞との通話中も、夢幻門から出た直後のような気怠さは随分と和らいでいた。


「なるほど、さすが神様の薬って感じだな。欲を言えば、味もそれだけ良いといいんだけどなぁ……」


『ふふん、良薬口に苦しだ、そうボヤくな。さあ、もう着くぞ』


「ああ、ディスコネクト」


 八葉の言葉通り、屋敷はもう目の前だった。ブランクが白い光を放ち、変身を解いた新と八葉が、家へと上がる。


「お、帰ってきたっすね。もういいんっすか?」


 出た時と変わらず、ちゃぶ台の向こうから座ったまま椿が腕を振る。


「ああ、用事は済んだよ。それでさ椿、悪いんだけれど、さっきの鍛錬、後三日で形にしたいんだ……頼めるか?」


「こっちは全然構わないっすけど、新っちはいいっすか? 大分キツイ事になるっすよ?」


「構わない。椿が思う通りに俺をシゴいてくれ」


「了解っす! ん、三郎太の薬湯で結構回復したみたいっすね。そんじゃあ、早速始めるっすよ!」


 嬉しそうに笑う椿の声に呼応して、卓上に置かれた夢幻門が再び光を灯す。新も頷き、夢幻門へ手を伸ばした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ