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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第三話 ココロの形、歪んだセイギ
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3-8



「はぁっ!!」


 トライコーンが、加速した勢いのまま、ブランクへとその巨体で体当たりを仕掛ける。しかし、激突し確かにブランクの肉を踏み潰したはずの蹄に手ごたえは無く、虚しくもアスファルトを砕いただけだった。


「これは……残像ですか?」


「シィッ!!」


 その時、地面から視線を上げたトライコーンの双頭へ向かって、真横からブランクの蹴撃が襲う。

 疾走するトライコーンと交差する瞬間、右手の建物へと跳び、壁を蹴る事で、青い光のV字を描く跳び蹴りを放ったのだ。


「ぐぅっ!」


 トライコーンも瞬時に二本の左腕でガードする。攻撃を受け、大きく軋んだ音をたてこそしたが、強くしなやかな筋肉によって、ブランクの蹴りの勢いは完全に殺された。

 防いだと見るやすかさず、トライコーンが体を大きく捻り、ブランクへと右拳を振るう。上と下、白と黒の挟み込むような二方向攻撃を、ブランクはトライコーンの左腕を蹴り、後方へと跳躍し離れる事で逃れようとする。

 その姿をトライコーンの四つの目が追い、グニャリと喜びに歪んだ。


『むっ、いかんっ、新!』


「なにっ!?」


 八葉の声に、目線を落としたブランクの中で、新が目を見開き驚愕する。

 トライコーンが、空振りした白腕の右拳を開くと、その手のひらから、鋭い槍が現れ勢い良く伸びる。

 トライコーンは手のひらから完全に抜け出た槍を掴むと、空中のブランクを大地へと激しく打ち払った。


「ぐがっ!」


 地面へと叩きつけられ、ブランクが呻く。その衝撃だけで、舗装された道に細かいヒビが走った。


『新っ、動けっ! 次が来るぞっ!』


「く……っ!」


 倒れたブランクに向かって、トライコーンは手にした槍で、ほぼ真上から、まるで川魚を銛で突くかのように突く。正確にブランクの心臓を狙い落ちてくる円錐状の穂を、地面を強く蹴ることで瞬間的に逆立ちし回避すると、腕の力で跳躍しトライコーンから距離をとった。


『無事か、新』


「ああ、なんとか……まだ、大丈夫だ」


 ブランクが、つうっと槍で打たれた胸をなぞる。強固な胸部装甲が、歪み割れていた。まともに喰らった痛打は、中の肉体にまで鈍い痛みとして伝わっている。


「ふふふ、上手く逃げましたね。どうです、私の自慢の槍は?」


 トライコーンが、槍をグルリと振り回し振り下ろす。その切っ先を見てブランクが呟いた。


「そうか……その槍、貴様の角か」


「ええ……大正解、です」


 その言葉に頷くトライコーンの白馬頭、その頭上には先刻あった角が消えている。槍の刃先を構成する、巨大な円錐状の白い刃こそ、その角だった。


「私は自身の角を自在に動かせます。ですので、当然こういう事も出来るのですよ!」


 槍を右腕で構え、黒い左手を開くトライコーン。黒馬頭から刃状の二本角が、体内に引き込まれるように消え、代わりに手のひらから、黒い刃が現れた。

 トライコーンが腕を振り、その全容が露わになる。それは二枚刃の黒い薙刀だ。


「では……行きますよっ!」


 トライコーンが、右手に槍を、左手に薙刀を、左右それぞれ二本の腕で器用に操り、ブランクへと踏み込む。


「せいぁっ!」


「っ!」


 強力な脚力から生まれた踏み込みは、トライコーンの身体を伝播し、突き出す槍の速度となって現れた。

 一瞬で目の前数センチまで迫った槍を、自前の本能的な勘で擦れ擦れで躱すブランク。ギャリギャリという金属音と共に、ブランクの頭部側面装甲に傷跡を残しながら、槍が通過した。

 そこへ、更に右下方から薙刀がすくい上げるように切り上げてくる。瞬時に判断し実行したバックステップによって、薙刀は空を切った。


「ふんっ、チョロチョロとっ!」


 もちろん、一度や二度躱しただけではトライコーンの攻撃は終わらない。片方を躱されている間にもう片方の武器を引いたトライコーンが、矢継ぎ早に追撃を放つ。


『新っ、このままではジリ貧だぞ!』


「わかってる! ソウルコネクトだ、八葉!」


 右左右左右左……まるで機関銃のようなトライコーンの猛連撃を、驚異的な集中力と反応速度で、一つ一つ的確に捌きながらブランクが叫ぶ。


「アラクネ、ソウル・コネクト!」


 激しい一方的な攻防の続く両者の間に、黄色に輝く光が現れる。その光は一瞬、空中に蜘蛛女の像を結び、再びブランクの中へと吸い込まれた。

 しかし、グリフォンやサラマンダーの時とは異なり、ブランクの外見には何ら変化が現れた様子は無い。


「くはは! 一体何をしたかと思えば、単なる目眩しですか? 往生際が悪いですよっ! とっとと刺されて斬られて死になさいっ!」


 そう、ブランクに外見的な変化は無い。それ故に、トライコーンは気付けなかった。


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