勇者、戦士、魔術師、公安
今回はちょっとパラレルワールドっぽい話です。
6月28日 アラバンヌ帝国 内陸部
四駆の機動力で砂煙を舞い上がらせながら、迷彩模様の高機動車が砂漠の上を走っている。砂丘を乗り越える旅に車内は大きく揺れ、遮るものの無い日差しは容赦なく照りつける。冷房によって車内の温度は快適に保たれているが、窓から入って来る日の光は、日本のそれとは比べものにならない程に強かった。
「このまま南南西方向に進めば、オアシスの街に着きます。そこで一端休憩しましょう」
助手席に座る利能は、荷台の方に座る上司や先輩たちの方を見ながら、小休止を進言する。
「よし、じゃあその街で昼飯にしようか」
神藤は利能の提案に頷くと、ハンドルを握る崔川に次の街で停まる様に指示を出す。その数十分後、砂漠を走り続けた高機動車は休憩地点である「アマーナ市」に辿り着いた。
・・・
アラバンヌ帝国 アマーナ市
砂漠に湧き出るオアシスの上に作られたこの街は、市というよりも村と呼ぶべき規模しかない。それでも、街から街へ砂漠を移動する旅人たちにとっては、重要な補給地点であり、街道沿いに林立する宿やラクダ小屋には、休憩や補給の為に一息ついている隊商の人々の姿が有った。
「どうせなら湖畔でテーブルを広げて、ピクニック気分の昼飯にしようぜ」
神藤はそう言うと、運転席に座る崔川二曹にオアシスの中心にある湖へ向かう様に指示を出す。街の大通りを走る高機動車は、人々の好奇の視線に晒されながら湖へと向かった。
だが、その時だった。
「砂漠に巣くう魔物よ! 成敗してやる!」
「!?」
湖へと向かう途中、突然、剣を構えた青年が高機動車の前に立ちはだかった。頭にはターバン帽を巻き、身軽そうな服装の上に赤茶けた日除けマントを羽織っている。彼は剣の切っ先を高機動車に向けると、じりじりと近づいて来た。どうやら車を化け物か何かと勘違いしている様だ。
不測の事態を前にして、神藤はすぐさま車から降りて弁明をはかる。
「ちょっと待て! 俺たちの“荷車”に何をするつもりだ!」
「・・・なっ!?」
“化け物”のはらわたから人間が降りるのを見て、青年は動揺を隠せない。周りの住民たちは、この騒動を困惑の眼差しで眺めていた。
「勇者様! これが例の魔物ですか!?」
「?」
青年を“勇者”と呼ぶ声が、何処からか聞こえて来る。すると青年の背後から、樹脂で塗られた杖を持ち、とんがり帽子を被る少女が現れた。
「俺も加勢するぜ!」
またまた何処からか声が聞こえて来る。すると先程の少女と同じ様な感じで、砂漠だというのに上半身が薄着の筋肉隆々な男が青年の側に駆けつけた。揃って高機動車に挑もうとする奇妙な3人組、その姿は神藤と開井手、そして崔川にあるデジャブ感を与えていた。
「ゆ、ゆゆ・・・勇者だ!! 勇者のパーティーだ、うわぁ〜!」
3人は感情を昂ぶらせながら、興奮と歓喜に似た声色を上げる。少年時代に熱中したロールプレイングゲームの思い出が蘇って来る。
「何が可笑しいんだ!」
自分たちを指差しながらにやけている神藤たちの態度を見て、青年は不快感を露わにする。
「悪い悪い・・・別に君たちを嗤っている訳じゃ無いんだ。・・・俺たちは東方世界出身の旅人さ、それに此れは俺たちの“荷車”で魔物じゃないよ」
にやけ顔が収まらない神藤は、口元を隠しながら詫びを入れる。彼は自分たちの素性を説明することで、彼らの誤解を解こうとした。
「荷車だと? ラクダもいないのに独りでに走っていたじゃないか!」
「そう! 自走する荷車なのさ。これは俺たちの国の発明なんだ」
神藤は適当な事を言いながら、勇者の疑念を取り除こうとする。下手をすれば一触即発になりかねないその様子を、荷台に座ったままの利能とリリーは不安げな表情で眺めていた。
その後しばらくして、高機動車が無生物であることに気付いた勇者と名のつく青年は、構えていた剣を鞘に収め、申し訳なさそうな表情で頭を下げる。
「申し訳ない、此方の勘違いでした。丁度この近辺で魔物が出現したという話を聞いていたので・・・」
「・・・申し訳ありません」
勇者に続いて、彼の従者と思しき他の2人も深く頭を下げた。そんな彼らの様子を見ていた神藤は、何かを思いついた様な表情を浮かべると、頭を下げる勇者一行にある提案を示す。
「いや、別にそこまで気にしてないよ。自動車なんて初めて見ただろうし・・・ただ、申し訳ないと思っているのなら、そのお詫びの代わりとして、少し俺たちに付き合ってくれないか?」
「・・・付き合う?」
神藤の言葉を聞いて、勇者は微かな警戒心を覗かせる。
「何・・・別に怪しい商売の片棒を担がせようって訳じゃない。ただ一緒に昼飯を食べてくれってだけの話さ。俺は君たちの素性に凄く興味がある・・・砂漠についても色々話を聞かせて欲しいんだ」
そう述べる神藤の目は、少年の様にきらきらしていた。高機動車の中に控えている開井手と崔川も、どことなくわくわくした表情を浮かべている。
「・・・話? 我々から貴方方にお話出来る様な事は有りませんが・・・でもそれでお詫びの印になると言うのなら、謹んでお受け致しましょう」
「良し、それじゃあ話は決まりだ! さあ、乗ってくれ」
神藤は喜々とした表情で、勇者一行に高機動車へ乗る様に促す。
「で・・・では、失礼!」
彼らは怖ず怖ずとしながらも、神藤に促されるまま高機動車の荷台へと乗り込んだ。
・・・
アマーナ市 オアシスの湖畔
その後、勇者の一味と名乗る一行を乗せた高機動車は、程なくして街の中心にある湖のほとりに辿り着く。
砂漠の真ん中とは思えないほどの豊かな緑に囲まれたその空間に、1トントレーラーから取り出した折りたたみ式テーブルと人数分の椅子を広げると、加熱剤で温めた惣菜や缶詰などの戦闘糧食をテーブルの上に並べた。
「口に合うかどうか分かりませんが・・・どうぞ、食べてください」
戦闘糧食の調理を行った崔川は、かしこまった様子で椅子に座る3人の客人にそれらを食べる様に薦める。その場で調理したとは思えない程の香ばしい香りが、彼らの嗅覚を刺激していた。
「あの・・・本当に良いんですか? ご迷惑を掛けた挙げ句にご飯までご馳走になるなんて・・・」
勇者一行の1人であるとんがり帽子の少女は、不安げな目つきで崔川の顔を見上げた。彼女たちの目の前には、取り皿用の紙皿とプラスチック製のフォークとスプーンが置かれていた。
「別に後で金を寄越せなんて言いませんよ。神藤さんの言う通り、話をしたいだけなんです」
崔川はそう言うと、彼女の向かい側の席に座る。手を合わせ、各々が食事を始める時の決まり文句を述べた後、神藤が早速口を開いた。
「俺は極東の島国・日本国の旅人で神藤と言う者だ。こいつらは俺の仲間」
「・・・僕はバーキット=バール・エプスタインと言います。一応、帝国政府公認の“勇者”資格を有している者です」
互いの代表者である神藤とバーキットが名を交換する。バーキットの自己紹介を聞いた開井手は驚いた様子で目を見開いた。
「・・・資格? 勇者っていうのは資格なのか?」
「はい・・・“勇者”というのはこの国の国家資格、一般の警吏や兵士では対処が難しい砂漠の魔物や盗賊を取り締まる為に作られた制度なのです」
バーキットはそう言うと、「勇者制度」の詳細について説明を始めた。
砂漠、乾燥した草原、そして熱帯雨林と、沿岸部や川沿いを除いて国土の大半が過酷な環境下に置かれている「アラバンヌ帝国」は、行政の目が届きにくい過酷な地域に点在する集落や街に暮らす国民を、魔獣や盗賊の被害から守る為、一般の兵士に比べて腕の立つ者にある程度の「裁量権」を与えて、領土内を自由に巡回させている。それが「勇者」と呼ばれる者たちであり、全ての民衆が憧れる最高の花形職業なのだ。
政府と軍が行う実技試験と面接に合格し、晴れて「勇者」の資格を得た者は、通常3〜4人のパーティーを組んで領土内を旅している。バーキットが連れて居る仲間は、徒手戦闘を得意とするカポジと、主に後方支援と治療を担当している魔術師のシェルラザード=アリ・アブドサラーンの2人だ。
彼らは時折、魔獣や盗賊を討伐しては政府から報奨金を得て生活を成り立たせているのだ。
「・・・魔物ってどういう事だい? 此処の砂漠にはそんなものが出るのか?」
「はい・・・我々はその魔物がこの近辺に出現しているという噂を聞きつけて、この街へ来たのです」
バーキットが言うことには、このアマーナ市の近辺に“砂漠鉄甲ガメ”と呼ばれる怪物が出没しているらしい。亀のくせに動きが素早く、地中をも進み、家畜や人間を食らう程に獰猛で、甲羅は鉄の硬度を誇るというチートな生物だ。
鉄の塊という点では、確かに高機動車とフォルムが被る部分はあるだろう。
「へえ、そんな生き物が。まあ・・・頑張ってくれ」
神藤はそう言うと、手に持っていた箸をレーションの筑前煮へと伸ばす。この先の旅路で化け物と出くわす可能性を知り、どことなく顔色が悪い。
「しかし美味しいなぁ〜、こりゃあ! 保存食の類とは思えないぜ!」
バーキットの仲間の1人であるカポジは、レーションのハンバーグに舌鼓をうっていた。魔術師のシェルラザードも、缶詰みかんの甘さに驚き、顔をにやけさせている。
「・・・その亀の他に、この地にはどんな魔物が居るんだい?」
神藤は再度バーキットに問いかける。
「そうですね・・・例えば“砂漠オオサソリ”や“鉄鱗ヘビ”なんかは、出会いたくない類の化け物でしょう」
バーキットが答える。その後も食事を共にする中で、神藤たちは砂漠に棲まう危険生物についての情報を、勇者一行から聞き出していった。
互いの話が弾む内に、テーブルの上に並べられたものがどんどん無くなっていく。間も無くして、オアシスの湖畔でのピクニックが終わろうとしていた。
しかしその時、突如として地面が微かに揺れ始めたのだ。
「ん・・・? 地震か?」
神藤はぽつりと呟く。彼と同じく揺れに気付いた開井手と利能は辺りを見渡していた。バーキットたち3人とイスラフェア人のエスルーグは地揺れに慣れていないのか、体感的には震度2くらいの小さな揺れであるにも関わらず、緊張した表情を浮かべている。
その直後、街の方から爆発音に似た大きな音が聞こえて来た。それと同時に、噴火と見紛う程の巨大な砂煙が舞い上がったのだ。さらに街の方から、悲鳴の様な声も聞こえて来た。
「!?」
「な、何だぁ?」
神藤たちは困惑の表情で、砂煙が上がった先を眺めていた。リリーとエスルーグも恐怖の顔色を浮かべている。
「カポジ、シェルラザード! 行くぞ!」
「おう!」
「はい!」
事態を察知したバーキットはテーブルに立て掛けていた剣を掴むと、仲間2人と共に騒動が起こった方へ走って行く。彼は走りながら、神藤たちの方へ振り返った。
「相済まぬ、ジンドー殿! 非常事態故、我々は向かわねばならない。この埋め合わせはいつか必ず!」
「ああ、ちょっと!」
神藤は一方的に別れを告げるバーキットたちを呼び止めようとするも、時既に遅し、彼らの後ろ姿は騒ぎの渦中にある街の中へと消えて行く。
神藤たちは勇者一行の後を追う為、一先ずピクニックの後片付けに取り掛かるのだった。
・・・
アマーナ市 市街地
「キャアア!」
「うわああぁ、こっちに来るな!」
街の中は大騒ぎになっており、爆音の震源から錯乱した人波が押し寄せてくる。バーキットたちはその波に抗う様に、騒動の原因へとひた走っていた。
程なくして、騒ぎの元凶が彼らの目の前に現れる。鉄の甲羅を背負い、地面を削る鋭い爪を持ち、全長が5mはあろうかという亀の怪物の姿がそこにあった。その口元には肉食獣と思しき牙を覗かせており、既に家畜のラクダが食い殺されている。
「鉄の甲羅はどんな攻撃も跳ね返す、狙う箇所は頭一点だ! 来い、カポジ! シェルラザードは援護しろ!」
バーキットはそう言うと、鞘から抜いた剣を構えながら家畜を襲う“砂漠鉄甲ガメ”に向かって突撃する。拳を構えるカポジも彼に続けて、亀に向かって行った。
「蛍火・・・“妖火山”!」
後方支援担当のシェルラザードが杖を握りながら呪文の詠唱を行う。すると彼女の魔力が炎へと変質し、浮遊する蛍火となって、バーキットとカポジの後方から怪物亀に向かって襲いかかって行った。
「グワアアァ!」
突如として炎に襲われ、砂漠鉄甲ガメは悲鳴を上げる。その隙を突いて、バーキットは亀に向かって迫る。
「やああぁっ!」
彼は気合いの声を上げながら、剣の切っ先を甲羅に守られていない亀の頭部に向かって振り下ろした。だがその刹那、危険を察知した怪物亀はその頭を甲羅の中に引っ込めてしまう。目標を失った剣は勢いそのままに地面の上に突き刺さった。
「ぐっ・・・!」
攻撃を躱されたバーキットはすぐに距離を取ろうとするが、地面に刺さった剣を抜くのに手間取り、中々その場から動けない。砂漠鉄甲ガメはその無防備な瞬間を見逃さず、再び甲羅の中から頭を出すと、頭突きの要領でバーキットの身体を吹き飛ばしたのだ。
「ぐはっ・・・!」
「大丈夫かバーキッ、うわっ・・・!」
バーキットが吹き飛ばされた先には、同じく亀に近付いていたカポジの姿があった。彼はバーキット諸共後ろへ飛ばされてしまう。
「勇者様、カポジ! 危ない!」
「・・・え?」
背後からシェルラザードの叫び声が聞こえて来た。その声に反応したバーキットが目を開くと、先程自分たちを突き飛ばした砂漠鉄甲ガメが、いつの間にか目の前に迫っていたのだ。
怪物亀は鋭い爪が光る両手を振り上げると、その巨体で覆い被さる様にして地面の上に倒れる2人に襲いかかる。
「くっ・・・!」
バーキットは咄嗟に両手で顔を庇う。だが焼け石に水、そんな事をしても巨大な怪物亀の攻撃を防げる筈はない。彼らの戦闘の様子を見ていた野次馬は、この先に起こるであろう惨劇を予想してつんざく様な悲鳴を上げた。
タン、ターン!
突如として2発の銃声が鳴り響く。時同じくして、バーキットとカポジを襲おうとしていた怪物亀は、悲鳴を上げながら後ろに仰け反り、大きな砂煙を立てて倒れてしまった。
「こ・・・これは!?」
シェルラザードは銃声が聞こえて来た方へ振り返る。そこには、砂煙を巻き上げながら此方に近づいてくる高機動車の姿があった。バーキットとカポジは亀が倒れている隙にその場から離れる。直後、銃撃を食らった筈の砂漠鉄甲ガメは、何事も無かったかの様に起き上がった。
「NATO弾が効かねェ!」
助手席から89式小銃による銃撃を行った崔川は、まさに鉄壁の様な防御力を誇る怪物亀を目の当たりにして顔を歪める。ハンドルを握る神藤は、バーキットたちの側に車を停めた。彼は運転席側の窓から顔を出しながら、苦戦している様子の勇者一行に話しかける。
「あれが例の亀か、迷惑じゃなければ一端俺たちに任せてみてくれないか?」
「・・・分かった」
神藤の提案に、バーキットは2つ返事で頷いた。
「そうと決まれば・・・行くぞ、神藤!」
「おう!」
後方の荷台から半身を乗り出す開井手の言葉に呼応し、神藤は再びアクセルを踏み込む。速度を上げる高機動車は、瞬く間に怪物亀との距離を詰めていく。突如として現れた謎の物体に、砂漠鉄甲ガメはきょとんとした表情を浮かべていた。
「今度のはただの弾じゃねェぞぉ!」
崔川はそう言うと、ほくそ笑みながら89式小銃の弾倉を取り替える。彼は小銃を連射モードに切り替えると、再び銃口を砂漠鉄甲ガメに向けた。
タタタタッ!
連続した射撃音と共に、数多の弾丸が放たれる。先端に黒い塗装が成されたそれらの弾丸は甲羅という名の装甲を突き抜け、ぽっかり開いた無数の銃創からは血が噴き出した。
「ギャアアアァ・・・!」
89式小銃によって文字通り蜂の巣にされた砂漠鉄甲ガメは、全身から血を流しながら断末魔を上げる。その直後、意識を失った怪物亀は力無く地面の上に倒れた。
「あ、あぁ・・・!」
自分たちが手こずっていた亀を難なく倒してしまったその様を見て、バーキットたちは言葉が出なかった。神藤は崔川が首尾良く仕事を終えたことを確認すると、高機動車を停めてバーキットたちの下へ駆け寄る。
「怪我は無いか?」
「え、ええ・・・おかげさまで」
バーキットはやや呆然としながらも、こくりと頷いた。
「良かった・・・じゃあ、これで俺たちは失礼するよ」
神藤はそう言うと、そそくさと車へと戻る。何の脈絡もなく突然別れを告げられ、バーキットたちはぽかんとした表情を浮かべていた。
「・・・貴方方は一体!?」
魔術師のシェルラザードは、まるで逃げる様にこの場を去ろうとしている神藤たちに、その正体を尋ねた。鉄の甲羅を貫く銃器、そんなものを所持している時点で、彼らがただの旅人では無いことは一目瞭然だったからだ。
神藤は一瞬言葉を選ぶと、屈託の無い笑みを浮かべて答えた。
「・・・なーに、ただのしがない旅人さ! じゃあな!」
神藤はそう言うと、アクセルを踏み込んで高機動車を発進させる。彼は運転席の窓から右手を出し、バーキットたちに向かって手の甲を振っていた。荷台に乗っていた利能と開井手、リリー、エスルーグも後部の窓から手を振り、別れを告げる。南に向かって去りゆく謎の集団を、街の住民たちは歓喜の声で見送っていた。
程なくして高機動車は地平線の向こうに消え、その姿が見えなくなる。バーキットは彼らが去った後を、しばらくの間眺めていた。
「本当に・・・奴らは何者だったんだろうな」
彼の隣に立っていたカポジが、バーキットに話しかける。
「さあ・・・だが、良い人たちだった。いつかまた会いたいものだな」
バーキットはそう言うと、満足そうな笑みを浮かべていた。
オアシスの街での一騒動を収めた神藤一行は、“ティルフィングの剣”が封印されているという古代遺跡へ向けて、再び長い旅路に身を投じたのだった。




