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永遠の愛を刻み続ける  作者: 美雪
新婚旅行編

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ロデウス視点 ⑧ アルウィン(二)

 少しだけ離れたところに、アルウィン王子の母親の実家があった。非常に大きな建物で、出入口には警備がいる。


 警備は僕達を見たものの、アルウィン王子が手を振ったため、何事もなかった。


 建物の中は非常に豪華なロビーになっている。


 一見すると、ホテルのようだ。


「どっちに行く?」


 アルウィン王子が質問した。


「左が酒場。右がカジノだ」


 アルウィン王子の実家の商売は、酒場兼カジノ経営だった。


「帰ろうか」


 僕はすぐにそう言ったが、駄目だった。


「化粧室を借りてもいいかしら?」


 レティがそう言ったのだ。勿論、大丈夫だとなり、メルイーゼが案内することになった。僕はその間にカジノの様子を見に行こうと、やや強引に連れて行かれた。


 内装は豪華だが、いかにも礼装といった装いの者はいない。カジュアルな服装で賭けを楽しむ者達がほとんどだった。


「ここは会員制だが、観光客でもすぐに会員になれる。但し、利用できるのは一階だけだ。二階以上に行くには、ランクの高い会員にならないと行けない」

「なるほど」

「一階は少ない所持金でも、カジノを楽しめるようになっている。平民でも利用できる程度だが、あまりにもカジュアル過ぎる服装は駄目だ。上着がいる。上着がない者は、会員手続きをする際に、上着を有料で借りる。二階は金持ち専用だ。三階は特別会員専用フロアになっている」

「遊ぶ気はないから」

「大丈夫だ。無料でチップをやる。それで遊べばいい」


 アルウィン王子は気前が良かった。僕とレティ用に無料で遊ぶためのチップを用意してくれた。


「カジノを利用したことはあるか?」

「本国のなら」

「一応説明する。ゲームのルールは本国と同じだ。今回は私の方でチップを用意したが、現金と等価になっている。一ベールは一ベインだ。チップの通貨はベインとなっている。損した場合は関係ないが、買った場合、チップを現金化できる。十万までは手数料がかからない。だが、それ以上のチップを現金化する際は手数料がかかる。カジノの手数料と国の定める税金だ。二割となる。そのため、十一万のチップを交換しようとすると、手数料が二万二千引かれる。手元に残るのは八万八千だ。だったら、十一万ではなく、十万だけ交換し、一万は飲み物にでもするか、係員へのチップにするか、捨てた方がいい。チップを持ったまま、外に出ることはできない。ゲームが終わったら、チップをそのままカウンターへ預けるか、現金化するか、商品に交換するかになる。どうせ無料で遊べる。使い切って帰れ」


 アルウィン王子がざっと説明してくれる。特に問題なく遊べそうだが、正直、意外過ぎた。商売内容が。


「社会勉強で仕事を手伝うというのは、ここで遊ぶということですか?」


 僕は少し意地悪気にそう尋ねた。


「客の一人になって、店内の様子を見る。私はどのフロアでも見て回れ、どのテーブルでも優遇される。監視役にはうってつけだ」

「なるほど」

「この国はカジノを合法化しているため、非常に多くあるが、信用できないカジノがあるのも事実だ。ここはかなり信用されている。側妃の実家だからな。不正な商売をしていては不味い。そういったことで、多くの貴族達も会員になっている。今の時間は客が少ないが、夜になれば多くなる」

「もしかして、僕に金持ちか聞いたのは、ここで遊ばせるためですか?」

「違う」


 アルウィン王子は苦笑した。


「冗談だといっただろう。それにお前が金持ちなのはすぐにわかった。レティの指を見ればわかる」


 レティは金庫に入れるのが不安だとして、結婚指輪をつけてきていた。あまりにも大きいため、むしろガラスだと思われるのではないかと思ったのだが、わかるものにはわかってしまうらしい。


「服装はそれほどでもないのに、あの指輪は不味いだろう。素性がバレる」

「ガラスに見えないかと思って」

「見えない」


 完全に否定されてしまった。


「ガラスの場合は、留め金が違うだろう。細かい部分を見ればわかる。特注品の品だ」

「そうですか」

「遊ぶか。それと、丁寧な言葉遣いはやめろ。私の友人とした方が、色々都合がいい。実家経営の店だからな。周囲も察し、私が常に側にいなくても配慮する」


 僕はその後、アルウィン王子に付き合うような形で、カジノでゲームをすることになった。


 レティは初めてのカジノに不安そうだったが、ルーレットは赤か黒かのどちらかを当てるだけなど、ルールが簡単であるため、参加することができた。


 せっかくなので、僕はミニバカラとクラップスをしたが、全然ツキがない。駄目だった。


 レティは勝ったり負けたりを繰り返し、結局はなくなった。所詮、運任せだ。夫婦共にチップを使い切った。


「まあ、そんなものだ」


 アルウィン王子が言った。


「一階はさほど金額のことを気にせずに遊べるため、様々なゲームを楽しみ、ルールを覚えるといい。ゲームのやり方を理解し、腕に自信がついてきたら、上に行き、一獲千金を狙うといいだろう」

「一階は練習場ということ?」


 レティが尋ねた。レティもあまり丁寧過ぎる言葉遣いは無用となっていた。遠慮したものの、周囲に配慮させ、保安対象として重視されると聞き、素直に受けることにしたのだ。


「そうだ。実際、ここのカジノには学生も来る。本来、カジノに未成年は入れないのだが、社交界にデビューした際に、そういったことを全く知らないのも微妙だ。そこで、学校の特別授業で見学に来る。カジノのゲームのやり方、賭け方なども学ぶ。実際にゲームをして勝っても、記念品を貰えるだけで、チップを現金化することはできない。午前中はそういった団体による貸し切りが多い。一般客が利用できるのは午後からだ」

「客入りが悪い時間を、団体の貸し切りにして、益を上げているのか」

「そういうことだ」


 なかなか賢いと僕は思った。しかし、それだけだ。僕はこれ以上カジノで遊ぶ気はなかった。本国では王太子に付き合い、カジノにも行っている。ここでもまた行く必要はない。無駄に金を使うだけだ。


「ここは他にも人気な理由がある」


 アルウィン王子はそういうと、僕達を奥へと連れて行った。そこは、チップを様々な商品に交換する部屋だった。


「チップは現金に交換できるが、ここにある様々な商品にも交換できる。通常の店で同じものを買うより、ここで交換した方が得だ。商品にもよるが、通常の店では十万ベールするものが、ここでは五万ベインで交換できる。つまり、半額で手に入れられる」


 その話に興味を惹かれたのは、レティだった。


「凄く安くなるのね」

「知っているか知っていないかで、得するかどうかが違う。また、ここだけのオリジナル商品、特別製品も人気だ。女性に人気がある香水のミニチュアボトルの商品が特に人気だ。実際に売られているものと全く同じデザイン、同じ香水なのだが、非常に小さい。それがかえって可愛いと評判だ」


 レティは人気だという香水のミニチュアボトルを見て、顔を輝かせた。


「これ、ベスが使っている香水だわ。アンヌの愛用品もあるわね」

「ミニチュアボトルは、普通の店では売っていない。ここでしか手に入らないため、香水をコレクションしている女性が欲しがる。土産にしたいといい、わざわざ現金をチップに換え、チップを商品に交換する者もいる。現金を商品に交換することはできないからだ。そのため、女性会員も多い」

「ロディ」


 レティが僕を見た。


「これ、お土産に買ってもいいかしら?」

「いいよ」


 僕はすぐに頷いた。


「小切手をチップに交換できるかな?」

「少額単位は無理だ。十万単位になる。レートはあまりよくない」

「こういう店では大抵そうだね」


 僕は小切手をチップに換え、それでレティは様々な種類のミニチュアボトルの香水を交換した。


 余ったチップで、適当なものを更に交換しても、まだ残った。そこで、全員に飲み物をおごり、余った分はアルウィン王子に渡した。


「コーヒーでも飲むといいよ」

「この程度で貸し借りにはしない」

「する気はないよ。さすがに少なすぎる」


 僕は笑った。


「それに、さっき色々教えて貰ったしね。授業料」

「安すぎる」


 僕とレティはアルウィン王子とブックに別れを告げた。アルウィン王子とブックは夜、つまりはこれからが仕事なのだ。僕達はカジノに長居する気はなかった。


 王宮に戻って夕食を取ると、レティは買ってきた品物を検分しはじめた。


 平民街の店やカジノで土産などを購入したため、かなりの数がある。


 レティは旅行に出る前に土産物を渡す相手のリストを作っていたらしく、それを取り出すと、誰にどれを渡すか悩みつつ、リストに品物名を書き入れた。


 僕はその間にシャワーを浴びた。


「レティ、入浴しないと、寝るのが遅くなってしまうよ?」

「もう少し」


 レティはそういってなかなか作業を止めない。こういう時は何を言っても無駄だった。仕事が片付くまでレティはこのままだ。


 僕はさっさと先にベッドに入り、先に眠ることにした。



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