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永遠の愛を刻み続ける  作者: 美雪
愛の日編

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ロデウス視点 ⑧ 夜(四)

 愛の日らしい赤い料理が多く並べられている。


 肉のソースも赤い。パスタも赤い。前菜もサラダも赤い。ハートの形の料理もあった。サンドイッチやケーキだ。ハート型の器に入った料理もあった。ハート尽くしだ。


「ドレスの装飾はバラの花が優勢だけど、料理に関してはずっとハートが優勢だ」


 僕はレティにそういって笑った。


 その後、僕達は様々な料理を食べた。さすが王宮の料理だけあって、見た目もよく味もいい。


 レティは僕の説明を聞いて、興味を持った料理を食べた。結構な量だ。


 口当たりのいいワインもあったため、何回もお代わりもしている。珍しく酔っている。酔ったレティも綺麗というか、今夜はとても可愛い。誰にも見せたくないほどに。


「レティ、帰ろう」


 僕がそう言うと、顔を赤くしたレティは大人しく頷いた。




 正面玄関のロビーは混雑していた。帰る者達が馬車の手配を依頼し、用意ができるのを待っているからだ。


 僕は馬車の手配を言いつけた。身分の高い者は優先される。青騎士も同じく。さほど待たされることはないと思われた。


「失礼致します。クライスター卿、ぜひお話を伺わせていただきたいのですが」


 僕に取材の申し込みが来た。


「もう帰るところだし、遠慮して欲しい」

「今夜は愛の日です。愛妻家として知られるクライスター卿に、ぜひお話をお伺いしたいのです」

「クライスター卿がいかに奥様を愛されているかを知らしめるいい機会になります」

「そうです。奥様に余計な者が近づかないよう牽制できます」

「馬車の用意が整うまでで構いません」


 他の記者達もやってきて、なんとか話を聞こうと僕に迫った。


「困ったな」

「ほんの少しだけで構いません」

「愛の日に、奥様にどのような贈り物をされたのかということだけでも」

「今夜のためにクライスター卿が奥様に特別なドレスや宝飾品をご用意されたのでしょうか?」


 次々に質問が飛び交う。記者達はこれが仕事だ。簡単には引き下がらない。


 僕はため息をついてから答えた。


「愛の日の贈り物は愛に決まっているよ。今日に限らず、いつだって僕の愛は妻のものだけど」

「それ以外に何か心を込めた品を贈られましたか?」

「宝飾品かな」

「特注品ですか? それとも既製品ですか?」

「ティアラは今夜のために既製品を購入して、リフォームした特注品だよ。僕の気持ちを表すために、ハート型のルビーをつけた」

「失礼ですが、どちらで製作されたのでしょうか?」

「ウィンスターズで依頼した」

「他の装飾品はティアラとセットの品なのでしょうか?」

「違う。ティアラに合うような品を、ウィンスターズが手配してくれた」

「クライスター卿、馬車が用意できました」

「わかった。これで失礼するよ」


 僕はレティを連れ、記者達を交わしながら馬車に乗り込んだ。


「ごめんね」


 僕は馬車の中でレティに謝った。


「僕はあまり身分が高くないから、記者達に声をかけられやすい」

「ロディは青騎士だし、公爵家の者よ。なのに、身分が高くないと言うの?」

「僕自身は騎士爵しかない。爵位だけ見ると、貴族じゃない。平民よりは上だけどね」

「でも、ただの騎士爵ではないでしょう? 特別な騎士爵だわ。それに公爵家の養子だし、貴族だわ」

「そうだね。でも、併合地出身だ。生まれた時から本国の貴族というわけじゃない。そういったところで、やっぱり違う」


 この国には差別がある。いや、世界中にあるものだ。仕方がない。


「併合地出身ということは一生変えられない。色々と差が出ることもある。レティにも苦労をかけてしまうと思うと辛い」

「ロディ、約束したはずだわ。一緒に頑張ろうって。だから、大丈夫よ。辛いことがあっても、二人で分かち合えば半分で済むわ。それに、私はほとんど社交をしていないし、その分苦労はしていないと思うの。社交をしなければならないロディの方が大変だと思うわ。だから、辛いことがあったら、教えて頂戴。私にもロディの辛いことを分けて欲しいの」

「レティは優しいね」

「私はロディの役に立ちたいの。足を引っ張る妻でしかないのはわかっているから」

「そんなこと全然ないよ! 足を引っ張るなんて、誰かに言われたの?」


 レティは黙り込んだ。


 僕は強い口調でもう一度訪ねた。レティは酔っている。白状しそうな気がした。


「レティ、誰に言われたの?」

「噂を聞いたのよ。こういう噂があっても気にしないでと」


 僕は舌打ちした。


「気にしないでいいよ。僕だって、レティの足枷だって噂がある」

「えっ?」


 私は驚いた。


「ロディが?」

「うん」

「どうして?」

「併合地出身の者が軽視されるのはわかるよね? だから、そうならないように本国の者と結婚する場合が多いのも」

「そうみたいね」

「僕と結婚しなければ、レティももっと身分の高い者と結婚できた、妾になれただろうって言われている。何人かは具体的に相手の名前も出ているけど、到底僕じゃ太刀打ちできないような相手だよ」

「誰なの?」

「王太子殿下。側妃にしたかったと発言されたことがあったからね」


 レティは沈黙した。


「ルカ様の名前も出ていたよ。美しすぎる夫婦になるだろうって」

「ロディ。悪いけど、私にだって我慢の限界があるの」

「怒ったの?」


 僕はさっと表情を青くした。つい言いすぎて、レティの気分を損ねたと思った。


「違うのよ。我慢できないのはロディのことじゃなくて、王太子殿下やリューベル公爵の方よ。妻や妾になるなんて、絶対に無理だわ。今夜だって、嫌な視線を沢山感じたの。王太子妃殿下や側妃の方々からね。あの中に加わるなんて、絶対に嫌よ! ぞっとするわ!」

「リューベル公爵は? 僕のいない時、一緒にいたよね?」

「ロディが戻るまで待つようにと言われただけよ。すぐに王太子に呼ばれたし」

「世間話とかしなかったの?」

「しなかったわ。どうみても、気安く下々の者と世間話をするようには見えないわよ」


 僕は少しだけ考え込んだ。そして、レティに正直に伝えた。


「ルカ様はレティのために、あの場に残っていたんだよ」

「私のためですって?」


 レティは驚いた。


「早番は僕とサイモンとルカ様だったよね。僕は仕事でいつ戻るかわからないし、サイモンは早く帰りたがっていた。ベスを説得できなければ、挨拶回りに行って、ベスのドレスの評価を上げないといけない。僕が戻るまであの場にはいない。レティが一人でいたら、誰かに声をかけられるかもしれない。そこで、ルカ様がレティに他の男性が近づかないように牽制しておいてくれるって言ってくれた」

「それで隣にいろと言ったのね。邪魔にならないようにしろという意味だと思ったわ」

「見た目は凄く冷たい感じだけど、実際は結構優しい。笑うと凄く綺麗だし」

「笑いそうもないのにね」

「王太子殿下といる時は、それなりに笑うらしいよ。僕もその時に偶然見た」

「王太子殿下とリューベル公爵は親しいの?」

「うん。王太子殿下の幼馴染。シリル様とも親しい」


 僕はレティをまっすぐ見つめた。


「レティ、お願い。ルカ様を好きにならないで」


 これは僕の心からの願い、本音だ。


「安心して。はっきりいって、凄く苦手だから。オーラが特にね。近づきたくないわ」

「ルカ様への評価が分かれるのは知っているけど、レティは優しくて包容力があるから、大丈夫だと思っていた。意外だな」

「それはロディの方でしょう? 私は誰にでも優しくはないわよ。寛容でもないと思うし」

「そんなことないよ」

「ロディは私を過大評価しているだけよ」

「レティこそ、僕を過大評価しているだけじゃないかな。僕は凄く嫉妬深いよ。寛容じゃない」

「それだけ私のことを想ってくれている証でしょう?」

「……そうだよ。言葉にしきれないほど想っている。レティのことで頭がいっぱいだよ」

「仕事中は駄目よ。仕事に集中しないといけないわ」

「大丈夫。けじめはつけているよ」


 馬車が宿舎についた。


 青騎士の宿舎は王宮にとても近い場所にある。出入口や道が混雑していなければ、ものの数分でつく距離だ。なのに、忙しくて帰って来ることができない者が続出する。


「レティ、お風呂だけど」

「先に入っていいわよ。私はすることがあるから」

「今夜は愛の日だから……その……」


一緒に入りたい。でも、言えない。


「ロディ、ティアラとネックレスを外してくれる?」

「……うん」


 僕はレティの宝飾品を外した。本当はドレスも脱がせてしまいたい。でも、できない。


 なぜなら、僕に勇気がないからというのもあるけれど、レティの気持ちを一番大事にしたいからだ。レティが少しでも嫌がるような可能性があることはしたくない。


「ロディも取って頂戴。上着もね。お手入れするから」


 脱がされるのは僕の方だった。


「明日でいいと思うけど」

「ロディがお風呂に入っている間にするからいいの。早くして頂戴」

「……うん」


 僕は青騎士の証である勲章を取り、上着を脱いだ。


「ゆっくりでいいわよ」


 僕はちょっとだけ恨めしそうな表情をレティに披露してからバスルームに向かった。


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