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ここは本当に未来だろうか  作者: 言正日月
第三章 ここは血の気が多すぎはしないだろうか
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武闘会、終了


「それでは決勝戦、予想通り勇者対キルツ現国王、開始してください……」


どこか疲れた様子の魔族のアナウンスに従い、勇者は準決勝時に用いていたものとは異なって愛剣を抜き、構えた。

ソフィアは幼い子供の姿をして、ただ立っている。


「いっくよー、ソフィアちゃん」


その声とともに、闘技場中央にいた勇者は地を蹴り、姿を消した。


「まけぬぞーっ」


ソフィアがそう言って虚空に手を翳すと、勇者のいた地点とソフィアの立っている地点の半ば辺りで火花が散った。


「俺が勝ったらデートしてください!」


ソフィアの背後に現れた勇者は、剣を振りぬきざまそう叫ぶ。


「いやじゃよー」


その剣は確実にソフィアがいた(・・)あたりを通ったが、姿が見えなくなったソフィアには傷一つついていない。


「ならッ、負けたらソフィアちゃんの下僕に!」


勇者はすぐにその場から跳び退きながらそう言う。

勇者が一瞬前まで立っていたそこには、小さな火球が出現した。


「それこそ却下じゃ」


その声は、勇者の背後からした。

勇者はとっさに体を反転させ、剣を構えたが、見えざる力に圧し負け、火球のもとへと逆戻り。


「あちっ」


勇者の纏うマントの端を少しだけ焦がした火球は、すぐ離脱しようとした勇者の足止めをするかのように出現した水球と衝突して水蒸気爆発を起こし、消滅した。


「ふむ……。」


規模こそ大きくないものの、威力は巻き込まれた人間一人を殺すのに充分だったはずだ。


「……痛いってばさー!」


だが、勇者は土まみれになりながらも平常運転。

爆発とは少し離れた位置で服に付いた汚れを払っていた。


「もしかして……これは愛情表現……?」


「ンな訳無かろうが」


勇者の呟きにつっこみながら、ソフィアは両手を天に向ける。


「えぇ〜……、こりゃもしかして、おっきいの来る──?」


勇者は空を見上げ、雲が集まりつつあるのを確認すると、愛剣を構えて魔力を収斂させ始めた。


「死ななければ治してやるわ」


「いや、あんま痛いのは勘弁ッ!!」


勇者が剣を雑に凪ぐと、光条が天に突き刺さり、そこを中心に雲が同心円状に離れていく。


「雲はわらわの魔法ではないぞ」


ソフィアは両手を天から勇者へと向けなおし、何事か呟くと、あたりを見回した。


「知ってるってばーっ!

 ソフィアちゃんのことなら何でもお見通しだぞ☆」


何かを拾うと、笑みを消して無表情に、勇者がウィンクした際に閉じられた瞳に向けて拾ったものを投げた。


「危ねッ」


剣に弾かれたそれは、木の葉だった。


「わざわざ硬化しなくってもいいでしょ!?」


「柔らかいものは投げ辛いのだ」


言いながら、また何かを拾ってダーツのように投げる。


「じゃぁ石とかにすればっ──わッ」


魔法で補助すればまっすぐ標的に向けて、距離によっては銃弾よりも速く到達する。


「石にしたぞ?」


「ホントにやんないでよマジ勘弁ッ!」


勇者があまりにも楽しそうに防ぐものだから、ソフィアは拾ったものを投げることをやめた。

代わりに投げたのは、地中の鉱物を集めて作った針。


「何コレ!?」


何かを感じたのか、勇者は剣で弾かずに体ごとよけた。


「……避雷針」


ソフィアがそう呟くと、雲一つなく晴れ渡った空から雷鳴が轟いた。


「えっ嘘!?」


雷鳴と同時か少し早くに勇者の脇を抜けた針へと落ちた雷光が、同時に投げられていた別の針の誘導に従って勇者に到達した。


「冗談だ」


雷といっても、勇者に届くのはただの光だけだ。

だから勇者は感電しない。

ただそのかわり、強い光によって視覚が麻痺するのと轟音によって聴覚、平衡覚も麻痺する。


「……聞こえるー?」


ソフィアは仰向けに倒れた勇者の脇に座り込んで彼の顔の前に手を翳すが、勇者からは明瞭な反応はなかった。


「……」


観客からもあまり反応がない。

静かな闘技場に響いたのは、レヴィアタンが気まぐれに呟いた声。


「──勇者、戦闘不能により勝者、ソフィア国王」


その声で思い出したように、司会の魔族が宣言する。


「今回の大陸統一武闘大会、優勝者は、現キルツ国王ソフィア様」


この大会、表彰など、閉会の催しはない。


「これにて閉会となります」


その言葉で、観戦者たちは席を立つ。

だがまだ気を抜けないのが、運営側。


特に今回は、準決勝、決勝と、あまり観ていておもしろい戦いではなかった。

期待して足を運んだ観客が不満を募らせ、勇者の牢屋兼闘技場の出入り口からのびる整備された道の脇に植わっている植物たち──ピクシーが手をかけているそれらに害をなさないかと気が気でない。





「雷……」


アリサは勇者へ導かれた雷がどこから発生したのかを疑問に思い、思案に耽る。


「ガルナ大丈夫かなぁ……」


ツカサは未だ闘技場の中央に近い位置でのびている勇者を気遣う訳ではなく、また手合わせ願いたいと考え、そう呟く。


「なんかよくわかんない」


アリスはつまらなそうにそう一言。


「今回は被害が少なかったですね」


ピクシーは先に退場する精霊たちに代わって闘技場の崩壊をくい止める結界を張りながら、笑みを作った。


「毎回毎回国王たちは雑なのよ」


「繊細なのは国王をいやがって放浪してるからなぁ」


ドロシーの苛立ちを抑えようとカナデが言うが効果はなく、


「そういえば、近いうちにラパスさんが帰ってくるそうですよ」


ドロイの呟きが、ドロシーを固まらせた。


「そりゃまたどうしてだぁ?」


「ガイアナを一旦返してから放浪するためらしいです」


「次のお供はトーゴとベナンか?」


「さぁ、どうでしょう」




結局、運営側の心配は杞憂には終わらず、数十名の負傷者はそのまま闘技場の治療室でこの大陸最先端の治療を受けていった。

自由に動けるようになるまでの滞在中、勇者しか入る予定がなかったにもかかわらず複数作られ空いていた牢屋を部屋として使った。


これにて一旦完結といたします。


※勇者の名前は「ガルナ」です。

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