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ここは本当に未来だろうか  作者: 言正日月
第一章 ここは本当は異世界だろう
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面会の終わり・火種の燻り

次の日、また王城を訪れた。

今度は衛兵の精霊さんにも話がいってたみたいで、同じ部屋に通された。

お兄ちゃんが椅子に座って、向かいにソフィア国王が座って、その隣にモノマーが座って、後ろにルシファーがたっているとこも昨日と同じ。

ピクシーは庭で遊んでいるのだろうとポリマーが教えてくれた。


「昨日の続きだけど、科学武器を作ってるのは妹のアリサで、もう既にどこかの国には売っちゃった後なんだけど。」


そう、お兄ちゃんが切り出した。


「うむ、それは昨日教えてもらったぞ。

して、リヴァイアサンに訊いたところ、えっと、科学武器は作っていいが、魔法をむこう化するのは作ったら許さないと言ってたのじゃ。」

「なら、魔の国にも提供していいのですか?」


モノマーが意外そうに訊ねる。


「うん。だけどね、キルツが危ないときだけたすけてくれるといいな。」


モノマーさん相手だと、ソフィア国王の口調が変わる気がする。


「了解です。」

「えっと、作ってるのは、だれなのじゃ?」

「アリサだよ」


ポリマーと今の時代の世間話をしていたら急に名前がでて驚いた。

お兄ちゃんがこっちを指さしていて、


「……え……と、な……に?」


ソフィア国王が驚いて一瞬で僕の目の前に浮かんでいた。


「え!そなたが作ったのか?」

「え……あ……う──ん」


つい目をそらすと、幼い体からは想像もできないような怪力で顔の向きを強制された。


「弱そうに見えるのじゃが……?」


なんか失礼だ。確かに僕は弱いけれども。


「マホウをツヨくするのもつくれるのか?」


魔法について調べればきっとできるけど、誰か調べさせてくれる精霊さんはいるかな?


「え……と、わから、ない。」

「そうか……」


ソフィア国王は浮かんだまま腕を組んで首を傾げた。


「──ソフィア様」


ソフィア国王がなにかを考え始めると、部屋の開口部──ルシファーの背後から、燕尾服をまとって頭に枯れた花冠を乗せたメガネの青年が現れた。

浮かんでいるようだ。


「なーに、リヴァイアサン」


魔法だろうか?


「魔王が兵を率いてまいりました。」


ルシファーは笑いを必死にこらえている。

リヴァイアサンが一睨みするが、全く意に介さない。


「既に明き森には到達した模様です。」


リヴァイアサンのひきつった顔は、おそらくルシファーの笑いが原因だろう。


「ん~……ならば、みておれ。ツルギの町に入る前に止めるのじゃよ。遠くのぶたいにおねがいするかな!」


腕を元気よくあげる。昨日ルシファーをものすごい効果音でたたいていたとは思えない、かわいらしい仕草だ。


「御意に。」

「わらわも行こーかな?」

「私も、お供いたします。」


ルシファーが顔つきを変えた。


「……リヴァイアサン」


ピクシーが、いつの間にかリヴァイアサンの隣にいた。

おっさんの姿。燕尾服のお腹は丸く、ズボンの上に乗っている。


「この子が、魔王は一旦兵を戻したって。」


両手で抱いていたのは、耳の長い、碧の毛をした生物だ。苔みたいな色だな。でもウサギなんだろうか。


「そうか。

──だそうなので、次に備えて準備をさせておきます。」

「うん、よろしく。」


リヴァイアサンが腰を折ると、ソフィア国王は開口部にたって腕を伸ばして枯れた花冠をとった。

ピクシーはすぐに姿を消した。


「なあ、リヴァイアサン、この子も、そんなに長くいるのはイヤだったとおもうぞ。」

「──は?」


リヴァイアサンは腰を折ったまま顔だけ上げた。


「じゃから、お日様が落ちたら、みんなのところに戻してあげるのじゃ。」

「……──はい。次からはそのように。」


よくわからないが、納得したようだった。


「じゃあ、これで終わり。」


リヴァイアサンは来たときのようにいつの間にか消えていた。


「──戦争になったら、喚ぶやもしれぬ。モノの隣にいてくれるか?」


それはお兄ちゃんに対するものだった。だがお兄ちゃんの前にモノマーが反応した。


「それは無理なのです。」


モノマーの否定に、ソフィア国王は不満顔。


「なんでじゃ~……」

「なので、覚えてあげてほしいのです。」

「だれをじゃ?」


それには答えず、質問を返す。


「喚びたい方は、だれなのですか?」

「ブキをムコウカできるひと。」


二人(?)のやりとりは、まるで親子みたい。

モノマーは、お兄ちゃんの方を向いた。


「武器を無効化できる方は、どなたなのですか?」

「……アタシ。アリサもできるけど、アタシの方が早いよ、絶対。ツカサには無理。」


ツカサが無理(・・)という言葉に敏感に反応して、沈んだ。


「では、アリス様を覚えて下さいなのです。


ソフィアなら、きっとできるのです。」


「え~……」


渋るソフィア国王。

その姿は外見年齢相応だ。

だが、モノマーの言葉で態度一変。


「わがままなソフィアは、嫌いなのです。」

「うん、覚える。モノ大好き。ソフィアをキラいにならないで!!」


煽てているのかな、モノマーは。


「良い子のソフィアは、大好きなのです。」

「やったー!」


それからソフィア国王はお兄ちゃんの周りをうろついて、匂いをかいだりペタペタさわったり(主に胸のあたり)し、お兄ちゃんは拳を握って必死に耐えていた。


「おぼえたのじゃ。

ここに喚んでみていいかえ?」


モノマーの隣で笑顔でお兄ちゃんに訊ねる。


「い……いいけど」


お兄ちゃんの許可を得ると、立った。

そして、隣のモノマーの手を握りながら、反対の手を前に突きだし、手のひらを天井に向けた。


「えっと、たかさは良いよね……」などとつぶやきながら、目を瞑った。


『吾、ソフィア

汝──アリス、ここに来たれ』


どこから聞こえているのかわからないような、不思議な声。

風が渦巻き、ソフィア国王の突き出された手のひらの上に集まる。

お兄ちゃんが風にさらわれるように消え、次の瞬間には、ソフィア国王の手のひらに左手を重ねて、彼女の前に立っていた。

瞬間移動……これが、魔法。

エミィでも、こんなに瞬時には移動できない。

まだまだ僕の知らない技術があるんだ。

なんだか、わくわくしてきた。

うつむいて、垂らしたままの両手は強く握ってしまう。


「アリサ様、ご気分が優れないのですか?」

ポリマーの心配そうな声が訊ねてきた。


「……いえ……そ……な」


そんなことはないですと言おうとしたけれど、上手く言えなかった。

僕は、気分が高揚すればするほど表情が悪くなるのだと、お兄ちゃんに言われたことがある。何かを発明しているとき、とっても楽しいのだけど、お兄ちゃんには、なんだか無理をしているような、苦しそうな表情に見えるんだって。


「アリサさん、顔が苦しそうですよ?」


ツカサも心配してくれる。


「スミマセン」


なんだか、申し訳ない。


「では、今日ももう用件は終わったようなので帰るのです。」


モノマーの言葉が、僕を現実に引き戻した。

今は、ソフィア国王との面会の時だった。


「え、モノ帰っちゃうの?」

「帰るのです。ソフィアはキルツを守る準備をしてほしいのです。」

「ヤだ~!!」

「キルツを守ってくれれば、モノはきちんとここにくるのです。」

「……ホント?」

「ホントなのです。モノは今までのように、ソフィアに会いに来るのです。」

「ホントに?」

「ホントなのです。もしこなかったら、喚んでもいいのです。」

「──私が阻止しますが。」


ソフィア国王とモノマーの応酬に口を挟んだのは今まで傍観というか興味なかったポリマーだった。

とたんにソフィア国王からどす黒いオーラ。


「ポリマーは殺すのじゃ」

「……御意に」


少し戸惑った(いつ戻ってきたんだ)リヴァイアサンと、楽しそうなルシファー。


「仰せのままに」

「めんどくさいからパス」


どこかから聞こえてくるピクシーの思念(こえ)

それから、裏庭にでてルシファーvsリヴァイアサンの戦いが始まった。

勝者は後日、ポリマーを屠れる権利が与えられたらしい。





















 だが、ポリマーに瞬殺され、精霊の持てる最高の治癒、回復魔法を用いてもなお、一週間は職務に支障が出たそうな。

意外とチョロくないこの世界。by勇者

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