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ここは本当に未来だろうか  作者: 言正日月
第一章 ここは本当は異世界だろう
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国王との話し合い

お兄ちゃんが訊ねると、ソフィア国王は殆どをしっかりと回答した。

唯一つ、この世界が僕たちのいた世界の未来なのかという質問以外は。


「もういいか?」

「うん、ありがと、ソフィアちゃん。」


ソフィア国王は眠そうに欠伸をする。

精霊も、人間と似たようなモノなのだろうか?


「次はわらわが訊いてもかまわぬか?」

「うん、アタシはかまわないよ」


ツカサと僕は、お兄ちゃんとソフィア国王の話し合いの後ろで、ポリマーと好きに話していた。

一応お兄ちゃんたちの話も聞いてはいるよ?

あ、ルシファーさんがソフィア国王になにか耳打ちした。


「リヴァイアサンにきいたのじゃが、チカゴロヘンなものがこのキルツをチュウシンにひろがっておるそうじゃ。汝らなにかしらぬか?」

「えっと、もしかして、それ、科学武器のこと?」


またルシファーがソフィア国王に耳打ちしてる。


「えっと、ツルギの町からヘンなブキが広がるのはよくあることなのじゃが、いつもとちがってツヨく、キンリンのバランスがクズレておるのじゃ。」

「ごめん、たぶんそれ、アタシのせい。

何だったら、その武器、回収してくるけど……」


あ、お兄ちゃん……ごめん。

僕が売っちゃったから。


「だれが作ったのか、ルシファーはしりたいそうじゃ。

ルシファーの魔法でもふせぐのがたいへんだった……」

「え、魔法って、機械より弱いの!?」

「そうみたいじゃな。でもさ、」


ソフィア国王はルシファーの方をみあげた。


「ルシファーはジブンで言えば良いのじゃー!」

「申し訳ございません。人間と話したくないもので。」

「……。」


モノマーは首を傾げて自分を指さす。

ソフィア国王はそれを見てルシファーに向いた。


「モノをいじめるなー!」


ポカポカとルシファーをたたくが、明らかな体格差があるのにルシファーは顔をゆがめている。

ポカポカは見た目の効果音であり、実際の音は形容しがたい。

怖いよこの幼女な国王様。


「ソフィア様にはかなわないってルシファーはしってるはずなのに。」


のんきに惨劇の繰り広げられている横で、ピクシーはソフィア国王に似たかわいい声で言った。


「──そろそろお時間です」


部屋の外から声が聞こえた。いつの間にか、外は夕暮れ時だった。

そのまま今日は帰ってまた後日くることになった。




王城を後にして、しばらくは歩いた。

服装が珍しかったのか道行く精霊たちからチラチラと見られたが、ツカサがおどおどして僕がお兄ちゃんの背中に隠れるくらいだった。


「今日のソフィアは機嫌がよかったのです。」

「そうですね。」


モノマーにポリマーが同意する。


「怖かったけど……」

「そう?」


僕はツカサに同意。

王城のある町をでると、来たときと同じようにポリマーの魔法で明き森の深き場所にある小屋まで戻った。


「では、今日は失礼するのです。」

「同じくです。」


モノマーとポリマーが去った後、お兄ちゃんがご飯を作ってくれて(食材は変わったが、何とか僕らの時代に近い味を作り出してくれてる)、僕は魔法の仕組みを分析してて、ツカサが絵を描いていたとき、何者かが小屋の扉をノックした。

ミズキさんなら勝手に入ってくるはずだから、違う。

だれだろう……?

というかミズキさん、最初の日以来姿を見てないよ?

生きてるのは確かだけど、大丈夫かな?

ツカサがでようとする。

でも、お兄ちゃんが制した。


「おに「アタシはアリスだってんでしょうが」アリスお姉ちゃん……」


声をかけようとしたら、訂正された。

お兄ちゃんは本名で呼ばれるのをいやがる。

そして、女装しているときにお兄ちゃんと呼ばれることも。

だから、ツカサとかミズキさんにはアリスって呼ばせてる。

僕は意地でもお兄ちゃんと呼びたいんだけど、毎回訂正されて、アリスお姉ちゃんになっちゃってる。

お兄ちゃんがこうなっちゃったのは、僕が女のせいだ。


「誰?」


僕がなんにもできないような妹だったら、お兄ちゃんはお兄ちゃんのままだっただろう。

もしくは、弟だったなら、お兄ちゃんも、胸を張って自慢の弟だって言ってくれたのかな。


「こちらに、よい武器職人がいると訊いて参りました。」


訊きなれない声。

言葉も、よくわからないけど精霊ではないし、モノマーの使っていたものとも異なる気がする。


「名乗って。」


お兄ちゃんの態度は、礼儀なんていいはずがないけど、そうする気持ちは分かる。僕でもきっとそうする。


「私、国王の秘書をしておりますマムリです。」


国王……ソフィア国王じゃないよね、たぶん。なら、どこだろう?

キルツに戦争を仕掛ける気なのかな。

聞き覚えのない言葉でも、ドアの横にはめ込んだ翻訳機が自動で翻訳してくれるから、会話はできた。


「用は?」


外のヒトはお兄ちゃんの問いに素直に答える。


「はい。この度、我らが王は無実の罪で捕らえている親友を助け出すため、戦争を仕掛けることにいたしました。その際、我らに強い武器があれば心強いと思い、よい職人がいると訊いたので是非武器を提供していただきたく」


親友を無実で捕まえてる?

そんなこと、キルツのソフィア国王ならきっとしない。


「アリサ、モノはある?」

「え……うん」


一応材料は、きのうまでにツカサが集めてくれた分で少しは足りる。

このヒトに売るつもりだろうか。


「いくらで買ってくれるの?」

「言い値で。」


即答だった。

お兄ちゃんは少し考える素振りを見せた。


「少し待って。信用できればそのドアを開けるよ」


ドアから離れ、毛布にくるまっていた僕のとこへくる。

ドアから離れれば、この部屋は防音処理が施されているから外部に音がもれることはない。

それを知っているからお兄ちゃんも安心して普通の声で話しかけてきた。


「アリサ、売りたくないんならいいし、しばらくはこのままでも生活できるけど、どうする?」

僕に意見を求められても困るんだけど……うぅ。


「困ってる……親友を、助ける……手伝いたい……けど……」

「けど、なに?」

「ソフィア国王に、迷惑……」


この時、僕は相手はキルツ以外の国だと思っていたけど、お兄ちゃんはキルツの国相手だと、ほぼ確信していたらしい。あとでそう訊いた。


「だいじょぶだよ。もしもの時はアタシが全部壊すから。」


無茶なこと言わないでよお兄ちゃん。

いくらお兄ちゃんでも、使用中の装備を解体なんて……──できそうな気がして怖い。

お兄ちゃんは、僕の作った機械全ての仕組みや構造を知ってる。理解はしてないから複製はできないけど、解体ならとっても簡単で、僕よりもきっと手際はいい。

でも……。


「それで世界がよくなるなら。」


僕は自分たちの時代でも、できるだけ世界をよくしようと思っていろんなものを作っていた。ほとんどできなかったけど。


「じゃあ決まり。悪くなったらアタシが責任とったげるね。

──ツカサ、アタシの代わりに交渉よろしく。」

今まで蚊帳の外で寂しげにしていたツカサにいきなり話を振る。


「え!?」


ツカサはやっぱりあわてていた。


「アタシ、もしもの時は戦場いかなきゃなんないから、体隠したいんだよ」


確かに、戦場へ出るのなら顔は割れていない方がいい。

でもホントは、戦場に出なければ一番なんだけど。


「え……でも」

「おに「アリス」アリスお姉ちゃん……あの引き出しに、変装道具……も、ある……よ。

体格、変えれる。動きは無理……から、気をつけて……れば、平気。」


それを言うと、お兄ちゃんはあっさりとツカサを意識からそらした。


「そ、ならツカサ、隠れてて。ツカサの振りするから。

ねえアリサ、ここじゃないとこに隠せる?」

「えと、引き出しの中?」


引き出しの中は、亜空間製造マシーンで作った亜空間があって、何でも入れられて、入れたときのままの状態で取り出せる。(痛みやすい食材なども痛まず、凍ったものは凍ったまま、温かいものは温かいまま)

だからこの中の時は止まってるってこと。


「じゃあその中にツカサ、隠れてて。」

「え……あの──」

「わかった?」


戸惑うツカサに、お兄ちゃんはニコリと言った。

いつもツカサはこんな風に押し切られている。


「──……はい」




お兄ちゃんは引き出しからツカサと似た色のロングストレートのカツラと全身を覆う特殊インナー(どんな体型もカバーして体型を変えてみせる)を出すと、それを身につけ、他の服はまた上から着た。チュニックに大きいサイズの厚手のパーカー。それに紐が編み込んである腿まである長めのブーツ。これをなんて言うのか、僕は服とかの名前をあんまり知らないからわからない。

最後にツカサを引き出し(中の亜空間の深さはよくわからない)に突き落として、鍵を閉めてドアの前に戻った。長い髪は僕の予備のリボンで斜めにくくる。


ドアを開けると、ルシファーさんたちと同じようなデザインの燕尾服をまとったヒトが立っていた。

片メガネ。

肌がちょっと緑っぽくて、太い尻尾も生えていたけど、それ以外は人間っぽい。

もしかして、ソフィア国王の側近の人かな?


「信用していただけましたか?」

「は、はい──えと、用途と、必要な量を教えてもらえますか?」


おお、似てるよお兄ちゃん。

ツカサなら絶対に言わない台詞だけど、言い方はソックリだよ。

さっきツカサに渡そうとして書いてた紙を見ながら(みる必要はないんだけど)応答する。


「魔法を無効化できるものがあればそれがいいですが、無ければなるべく射程の長いものを望みます。」

魔法が使える種族が、精霊以外にもいるの?

「量は、どうしますか?」

「量は、できるだけ多く。

──必要な材料で、揃わないものがありましたら私どもの方でもご協力いたします。価格は問いません。

先ほど申し上げましたとうり、言い値で買います。

たとえ相場の倍であっても構いません。」


おお、言った。ぼったくられてでも僕の作った機械が欲しいのかな?うれしいような、悲しいような。


「いつ頃までに、必要なんですか?」

「なるべく早く。長い時間をかけて性能のいいものを少量作るくらいなら、短い時間で性能の悪いものを大量に作っていただきたい。」


質より量。

下手な鉄砲も数を撃てば当たる。

そんな考えのよう。

僕は逆に量より質。

下手な鉄砲をたくさん撃って弾を無駄にするよりも、上手な鉄砲を一つだけ撃って弾は必要なときのためにとっておきたい。

その場しのぎにしかならないような悪いものをつくるくらいなら、半永久的なものを作る方がいい。


「わ、わかりました。では、二日後でいいですか?」

「商品の受け渡しですか?」

「はい。」

「構いません。」


マムリと名乗ったミドリのヒトは了承した。


「ではそれまでに用意します。

生産できたものだけ売ります。

足りなければ後日。

値段もそのときに伝えます。

現品と交換でお金も現金でお願いします。」


箇条書きにした文をそのまま読んでお兄ちゃんが笑う。

お兄ちゃん、ツカサは絶対にそんな怖い笑いかたはしないよ。


「承知いたしました。では、二日後のこの時間、またここを訪れます故、それまでにお願いいたします。」

「はい、わかりました。」


交渉成立。作るのは僕なんだけど。


「何か不都合がございましたら、私をお呼びください。地に円を描き、中央に寄り代を置いて名を呼べば喚べます。」

「わかりました。」


マムリは去っていった。闇に紛れて姿が見えなくなったときに扉を閉め、お兄ちゃんは息を吐く。

それを僕は毛布を引きずって近寄ってつかんだ。

お兄ちゃんの顔の前だったから、お兄ちゃんが久しぶりに僕のことで驚いてくれた。


「──な、なに?」

「溜息つくと、幸せ逃げるよ?」

「……──」


お兄ちゃんが、僕に抱きついてきた。

怖かったり、安心したりした時のしぐさだ。

そのまますぐに眠ってしまう。

正直、お兄ちゃんは男なんだから僕よりも体重あるし、重いんだよ?

僕は万年インテリで体力ほとんどないけど、お兄ちゃんは機会の搬入とか手伝っててとっても力持ちで、筋肉もあるんだから。


そのまま僕も眠ってしまって、ツカサが引き出しの中の亜空間からでられたのは、翌日の昼に僕が目覚めたときだった。

誰がこんなつまらない話を読むといふのです?byマムリ

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