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ここは本当に未来だろうか  作者: 言正日月
第三章 ここは血の気が多すぎはしないだろうか
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破壊 再生 戦闘

サブタイトルのような少年漫画チックなことはあまり起こりません。

順調に2日目も終え、3日目の今日、アリスとツカサは、2次予選2種目め、『カナデ作の人工知能搭載アンドロイドを破壊』を行うことにした。

ちなみに、2日目(2次予選初日)の昨日は、この種目はクリアされなかったらしい。そのため、アンドロイドも引き続き同じものが使用される。整備の際、それ以外の細工は行わないのがルールであり、もし細工が判明した場合、2次予選の日にちを増やし、この参加者には他の種目をこなしてもらうことになる。

昨日のこの種目の参加者は、引き続き挑戦する者と別の種目を今日の内に終わらせて明日再挑戦する者、あきらめて種目を変える者に分かれた。

引き続き行う者は、今日からこの種目に参加する者たちと共に実施する。そのため例年は4日目(2次予選最終日)の人数が必然的に最も多くなる。

結局、アンドロイド破壊のみに3日間を費やす無謀な(もしくは自分を過大評価している)者も前回までは多くいたらしい。


「アンドロイドって、どんなだった?」


「人型でした。」


アリスの問いに、ツカサは簡潔に応える。

だがもちろんアリスには物足りなかった様子。


「どんな?」


「女性型です。

──制作者がジンの方だとのことなので、おそらくジンの住人をモデルにしているのではないかと。」


「戦闘力は?」


「昨日はほとんどの方が自滅もしくは同士討ち(?)でしたので、正確なことは……。」


同士討ちのところがやや疑問形になったのは、果たして住む国が異なる者同士、ただ種目選択が重なっただけの者を同士と呼んでもよいものかと疑問に思ったからである。


「何か攻撃しなかったの?」


「あちらは基本的に避けるだけでした。

 魔法は使えないらしいですが、キルツの方のとおぼしき氷や炎を受けても変形すらしていませんでいたし、マルクの方とおぼしき方が蹴ったり殴りかかろうとしても、不自然な姿勢で避けていました。」


「ツカサは何かやった?」


「頸骨のあたりを折ってやろうかと思いましたが、あの素材の感触は気味が悪い。」


何を思い出しているのか、表情に影が差した。

ツカサは昨日、暇だからと下見に行ったつもりがいつのまにか途中参加していた。


「……どんな感触なの?」


「薄い合成ゴム膜を重ねたような……」


合成ゴム膜とは、自然なゴムを使わず、主に石油系の製品をリサイクルした素材を用いて作られるもので、微粒な気泡を多量に含む薄い膜である。ゴムとは名ばかりで、力の偏りに弱く、捻ると気泡が割れてただの薄い膜になってしまうため、輪ゴムなどには使えない。

触感は、マシュマロの食感ようなイメージを持つ者が多く、好みは分かれる。ちなみにツカサは嫌悪している。

ベッドや毛布の芯の素材としても多く使われるが、そもそも、幼い頃からツカサたちのいた施設では、ベッドを使わない生活をしていたため、今まではあまり不便な思いはしていない。

もともとツカサたちがいた、寒冷化が深刻になっていたあの時代、殆どの者は長距離移動を嫌い、外気に触れることさえ嫌い、外泊というものはめっきりみられなくなっており、自宅で使用していないものに触れる機会も減っていた。

それなのになぜツカサが合成ゴム膜のことを知っているのかというと、それをアリサが時々実験用サンプルと称して自作するためだ。

アリサ自身、あまり好きな触感ではなかったらしいが、それを売って稼ぎの足しにしてもいた。


「本日の種目を始めてください」


光と音と振動で、大会3日目が幕を開けた。

アンドロイド破壊の競技場所は本会場。つまり1次予選と同じ場所だ。

開始の合図と同時か、もしくはフライングかもしれないような瞬間から、おそらくマルクの住人であろう浅緑色の肌を持つ長身の女が、白い肌と黒い瞳を持つ女性型のアンドロイドに襲いかかった。

ツカサも負けじと駆けていく。

それを冷ややかに眺めながら、アリスは壁際に寄っている。

彼にはまるで動く気がない。

クリア者を減らす為にアンドロイドではなく弱そうな参加者に襲いかかる者もいたが、アリスは面倒そうに欠伸をしながらそれを避ける。

そしてバランスを崩した相手の意識を刈っていった。

現在、この種目参加者のうち、戦闘続行可能者、74名。




一方その頃、本会場、別の場所。


「転送します。

 ポイントに転移が完了次第、各自で行動を開始して下さい。」


ジンから出場している、両手の小指だけで逆立ち中のライ・シンは、あとからやってきた妹に見送られ、この種目──転移先の別会場から本会場への移動──のゴール地点となる、勇者専用の牢獄兼大陸統一武闘大会今大会本会場の端にある、小さな闘技場に集まっていた。

審判と運営を担当するキルツ王国軍魔法師部隊によって他の面々と共に何処かへと転移された。

すでに行動を始めた者もいる中、ライ・シンはあたりをゆっくりと観察した。

地は平らに均された土。

周りには見知った木々。

見上げ(?)れば、生えそろった木々の向こうの空は雲が流れている。

ここからは見えないが、陽もまた地を見下ろしていた。

明き森のどこかだろう。

だが、別会場から本会場まで戻る。というこの種目のルール上、ここは今回の武闘会の別会場であるに違いない。

頭の中に今回使用される別会場の場所と大きさ、実行可能種目などの記された地図を広げる。

明き森にある別会場はいくつかあるが、この条件を満たすものはひとつだけだった。

今回は簡単そうだ。と思いながら、彼は最短距離──すなわち直線で本会場へ向かうことに決め、腕を動かした。


「日没までに本会場へ帰還しなかった場合、今回の挑戦は失敗とみなしバッチをひとついただきます。」


その脳内に直接響く精霊の声を不快に感じながらも、シンはマイペースに直進する。

木々を避け、小さな川を飛び越え、ゆっくりと進む。

皆正しい道を進んでいるのか、もしくはシンが誤った道を進んでいるのか、途中この種目の他の参加者には会わなかった。

他の種目──キルツの鍛冶師特製防具類一式を身につけて会場まで戻る──の参加者には2人ほど遭遇し、彼の事情をよく知らないマルクからの参加者には「余裕だな」と睨まれた。

シンが両手の小指で逆立ちしているのは、脚力が強すぎるためだ。

両手で逆立ちをしても、一歩ごとに地面が陥没する。

柔らかな地だと手がはまって抜けなくなるため、もっとも力の掛かりにくい小指でなるべく力を抜いて歩いている。

1歩1歩気を使いながら進むため、歩行速度が遅い。




そんなこんなで時間は過ぎていき、昼時。

本会場。

アンドロイドは、過去の大会では記録にないほどの破損状態だった。

片腕はなく、頭部に穴があいている。それでもまだ動いていた。

序盤に意識を刈り取られて山になっている参加者たちの横に立っているアリスには、もう襲ってくるような参加者はいなかった。

現在、この種目参加者のうち、戦闘続行可能者、7名。


「お腹すいた~……」


アリスは腹部を押さえた。


「早く終わらしてよ」


ツカサはアンドロイドの首に蹴りを入れ、バランスを崩しているキルツの精霊に着地する。


「やっと楽しくなってきたのに!」


アリスの呟きにもしっかりと応じた。


「ン?」


「わかったよハイッ

 やればいいんだろ、殺れば!?」


だが、片眉をつり上げたアリスの声とオーラに渋々といった感じの返事をし、踏まれて逆上したキルツの精霊の魔法を避けてそれがマルクの男に当たったのを視界の端で確認しながら、地を蹴って首の折れたアンドロイドに接近する。

腹部に回し蹴りと頭部に裏拳をたたき込むと、アンドロイドの頭部がはずれた。

それとほぼ同時、キルツの精霊の遠距離魔法がツカサをめがけて放たれる。

それにちょうど当たるよう、まだ動いているアンドロイドのバランスを崩して移動させる。

魔法が当たるとアンドロイドの腹部に穴があくが、それでもまだ動いているため、ツカサはその穴に足をつっこんで振り抜いた。

アンドロイドの体はいくつもの破片に分かれる。

さすがにもう動かないだろうが、一応形を成していた腕や足を粉砕しておいた。

こんな簡単でいいのかと思いながらもツカサはアリスに駆け寄る。


「終わりましたよ!」


不満げにツカサが言う。


「ご苦労様。」


アリスは、昼何食べよーか。と考えていた。

現在、この種目参加者のうち、戦闘続行可能者、3名。


「アンドロイド破壊終了。よって3名はクリア。」


静かに見守っていた観客が、沸いた。

この大陸統一武闘大会が始まって以来、初のこの種目のクリアであった。

こんな簡単なのに、どうして今までクリアされなかったのか。

ツカサは疑問に思った。




シンはマイペースに歩いていた。

もう目前に本会場があり、ちょうどアンドロイドが破壊されたところだったため、観客の歓声が響いてきた。

2次予選で観客が直接目にすることができる種目はアンドロイド破壊のみのため、羨ましかったりもする。

スタート前に集合した場所に着くと、すでに数名の参加者がゴールしていた。


「お疲れさまです。バッチをひとつ回収させていただきます。」


精霊の受付係に言われたが、シンはバッチを持っていなかった。


「メイどこ?」


すぐにメイがやってきて、かごからバッチをひとつ出す。

受付係は愛想笑いを浮かべた。


「次からは自分で持っていてくださいね」





「アリサ」


『……何?』


「お昼何食べる?」


アリスは観客席のアリサの元へ向かいながら、通信機へそう声をかけた。

ツカサはしょんぼりとその後を追う。


『……の、』


「ん? よくきこえない。」


『ちょっと、用事、できた、から、』


「お昼一緒に食べられないの?」


『ん。』


「どんな用事?」


『明日に向けて、アンドロイドの、修復』


「なんで、アリサが?」


『ミズキさんが、カナデさんと知り合いで、ツカサさんが、アンドロイド、壊したから』


「……あたしも行っていい?」


通信機の向こうで、話し合う声がする。

もう肉声の聞こえる距離なのだが。


『いいよ……て。』


「どこでやるの?」


「わっ」


アリサの後ろから聞くと、気づいていなかったアリサは驚きの声を上げた。


「あそこでそのまんまだぁ」


代わりにカナデが答える。


「あんたがカナデ?」


「そうだぁ。」


「あたしはアリス。」


「ミズキから聞いてるぞぅ」


「あたしも修復手伝うよ」


「できんのかぁ?」


「一応ね。」


「じゃ、いくかぁ。

 お前はミズキと待ってろぉ」


カナデが立ちながら子供に言うと、子供は頷いた。


「ミズキ、あそぼ」


「ツカサはどうする?」


「オレは、ミズキさんの方に……」


アリサとアリスはカナデと共に闘技場の方へ降りていき、ツカサはミズキについて子供と明き森の方へ歩いていった。

途中、シンとメイと合流し、最も堅固なサブ闘技場を借りて遊びという名の個人的な戦闘を眺める始めることもあったが、それは余談である。


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