マルク王城
マルク王城
「魔王様」
その呼びかけに応じ、現マルク国王にしてキルツ国王の姉であるシエラレオネ・フィン・マルクは、木々の間から姿を現した。
「何じゃ朝から
──騒々しい」
眠そうな幼子に向かって申し訳なさそうに頭を垂れる臣下へ向かって、手で顔を上げよと示す。
顔を上げた臣下は口を開く。
「大陸統一武闘大会のことでお話が」
「勇者のことか?」
「はい。」
「すぐに申せ」
瞬時に満面の笑みに切り替わった主君の態度の変化に驚き、臣下は一瞬ではあるが絶句し、呆れた。
「この度の大会は、勇者殿の出場資格を認めると、キルツ国からの達しがございました。」
「本当かっ?」
「はい、まことでございます。」
確認せずともこの臣下が嘘をつくはずがないとわかっていながらも、喜びのあまり訊ねてしまう。
「レヴィアタン!」
「ここに。
──今のは本当だよ。ま、でるかどうかは本人次第だけどな。」
光の羽を携えて、虚空から現れた精霊。
マルクでは珍しい、滞在を正式に許可された、純粋な精霊である。
「では、儂もでようかの。」
「今年は国王様ももしかしたら出るかもってさ。」
「父様か?」
マルクで国王といったら、まずはこの国の王、魔王を思う。現魔王の前で国王様と表現する第三者といえば、先代、先々代の魔王が亡くなっている以上、その前の魔王、チャド・セン・マルクをおいて他にあるまい。
そう思って訊ねたのだが、複数の者をまとめて表現していたらしい。
「チャド・セン様とマリ・セン様とソフィア・リョク様。」
「ソフィアもか?」
「ああ。たまにはおもいっきり遊びたいってよ。」
「すぐに支度じゃ。
──参加希望者を集めよ。
明日の明朝、出立する」
臣下は頷き、駆けていった。
「早くね?」
大陸統一武闘大会の開催は、8日後だ。
「あそこの闘技場の使用許可をもらえぬか?」
「……無視ですかい。ま、いいや。
ソフィア様に頼んでくる」
それに満足げに頷くと、シエラレオネも支度を始めた。




