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ここは本当に未来だろうか  作者: 言正日月
第二章 ここは本当に未来なのかも
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サテライト

次の話で終わらせる予定。

「あの、これ、どうなっているのですか?」


 青くなった画面を指さすと、


「そこにあわせてソレ押すと画面が変わるさぁ」


 と、指示が来る。

 かれこれ数時間、この時代の機械の使い方を教わっていた。昼食が終わってから始めて、もう外はきっと日が傾いているだろう。ここは地上部分だが窓のない部屋なので、景色が見えないのが残念だ。

 一通りの操作を教わり、簡単な調べものならできるようになった。カナデの家にあったものは、あの時代にアリサが扱っていた機械とほとんど同じ、簡単な操作手順だったのだが、この家にあるものは旧式のようで、操作盤がシンプルな代わりに、操作手順が複雑だった。

 長老が壁に掛けてある旧式の、三本針のある時計を仰いだ。


「このくらいでいいかぁ?」


「はい、ご指導ありがとうございました。」


 感謝を込めて一礼する。


「儂は夕飯作りに上がるからぁ、少ししたら来いよぉ」


「はい。

 あの……」


「なんだぁ?」


「しばらくこの部屋で、機械を操作していてもいいでしょうか。」


「壊さないンなら好きにしろぉ」


「ありがとうございます。」


 長老が部屋を出ていき、部屋においてある機械を眺める。

 この部屋にあるのは、情報端末がほとんどだ。インターネットが繋がっているのは三つ。操作はパネルで、特定の画面はなく、スクリーンに投影されるものと、画面を直接タッチ操作するもの、腕に測定機を巻き、思考による脈の変化によって操作するもの。最後のものは、誤操作の少なさに驚かされた。

 あの時代で見たことがないものは、印刷機。存在は知っていたのだが、施設からほとんど出ることの無かった私は、アリサの発明品以外の機械は見たことがなかった。


 直接パネル操作するタイプのものを拝借し、電源を入れる。

 何かちょっとした情報でも得られればと、気の向くままに操作する。

 すると、驚くべきものが見つかった。

 それは、ある一つの画像データ。

 ミズキは何でもないことのように言うが、実は無意識のうちに特技を発揮し、知らぬ間に、厳重なセキュリティを交い潜っていた。

 一般人では到底たどり着けないほどの、深き場所まで。

──その中に、決して解除してはいけないロックがあることも知らずに、解除していた。




 上空・成層圏外


 数十年前に打ち上げられた、すでにほとんど忘れ去られかけていた人工衛星が、地球の周辺を回っていた。

 この人工衛星には、ある一つの指令がインプットされている。

 ミズキが解除したうちの一つのロックは、とある情報まで繋がっているただ一つの道であった。それと共に、この人工衛星の指令の作動手段の一つでもあった。

 その人工衛星は徐々に目的の場所へ移動していき、その場所を追うような動きへと軌道を変更した。

 実はこれ、ただの人工衛星ではない。

 作られた当時の最先端技術──今でも一般には普及していないような軍事技術である、超長距離ミサイルやレーザーが搭載された、戦闘兵器だ。有事の際の最終手段として、隕石に見せかけて地球へ衝突させることも考えられていた。

 これを、どうしても誰にも知られたくない情報を守るためのセキュリティの一部へ組み込んだバカ者がいた。

 ロックを解除すると、それを作動条件としてその人工衛星がサテライトキヤノンと呼ばれる広域型レーザーを、ロックを解除した機器のある地点を中心とし、半径30キロメートルにも及ぶ範囲に向けて発射するようになっていたのだ。

 もし発射されれば防ぐ手段はなかったし、解除するとそうなる旨は記載してあったため、それが事実だった場合のリスクを考えると、解除する者などいないとたかをくくっていた。

 さすがにやり過ぎだったと設定してから気がついたが、自分でロックを解除したとしても作動してしまうため、その者は放置することを選択した。

 その分厳重なセキュリティの奥にしまったことが仇となり、今回はミズキの特技によって解除されてしまったのだった。


 ミズキの特技は、無意識(・・・)のうち(・・・)()厳重なセキュリティを突破することであって、意識的に何か目的があって特定のセキュリティを突破するものではない。

 だから、注意書きがあったとしても、それは無意識のうちに無視(・・)されて(・・・)しまう(・・・)のだった。



 標的にされたのは、長老の家、ミズキの操作している端末。

 そんなことを知る由もない彼は、口を押さえて手を壁に、膝を床につき、俯いて小刻みに震えていた。

 端末は、先ほど取り落としている。




 セキュリティを設定した張本人はというと、自分の夕食を調理するためにキッチンにいたのだが、急に、十数年ぶりに震えた、ハッキング探知用の小型端末に表示された文字を見て、お玉を取り落とした。


──サテライトキヤノン 発射 まで あと 12分


 赤く光った画面には、そう表示されていた。

 電気コンロの電源も落とさぬまま、人工衛星の制御装置の元まで駆けた。





















「誰だっ


   ……なんてことしてくれんだ!


             バカ野郎がッ!!」











 そう毒づきながら、盛大に、若かりし頃の自分の愚行を恥じ、呪った。

 『DANGER』と表示される画面の光に満たされて赤くなった部屋に駆け込むと、非常停止プログラムを起動し、何とか標的の座標だけでもずらそうと、無駄だとわかっていてなお、奮闘する。

 すでに、通常の非常停止プログラムは解除済みであったためだ。

 セキュリティの一部に組み込んだ際、どうしてもそのデータを見られたくなくて、見られるくらいなら死んでやる、と自棄になった結果だった。

 新たな停止プログラムを作成することもせず、今までたかをくくっていたのが災いした。


「せめてこの家に落ちてくれれば、被害はほとんどないのに。」


 その呟きを聞き取ったのは、家の周辺にある森に住んでいる、耳のいい獣たちだけだった。



──サテライトキヤノン 発射 まで あと 4分


 表示された数字は、虚しくも、減り続けていく。

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