町へ
一部ネガティブな時に書いたので文章がアレです。
家を出て、施錠もせずに坂を下っていく。
「施錠はしなくても、いいのですか?」
「盗むモンなんか居ねぇよ。」
そういうものなのだろうか。
カナデの家は丘の中腹にあったらしい。
暖かな陽を浴びながら木々の間を抜ける。
この時代についてから、一応薄での服に着替えておいたが、やはり凍えるような寒さの時代からきたせいで、余計に暑さに敏感になっているのだろう、汗ばんできた。羽織っていたものを脱ぎ、腕にかける。
だが、習慣で、首のネックウォーマーだけは外さない。
これは、マザーがわざわざ手作りをして、施設の子供全員に渡してくれたものだ。薄手の服でも重ね着すれば体は暖かくなるが、首は寒い。
マフラーだと多く布がいるからと、マザーはこの形を選んだ。正直、色も形もセンスがいいとはいえない。だが、それでもつけていたい、大切な品だった。
森を抜けると、少しずつ建物が増え、道路には自動車も走っていた。
通り過ぎる影と上から聞こえるタイヤの音に目を向ければ、限りなく透明に近い道路の上を車が走っている。遠くの道路をみれば、まるで飛んでいるようだ。
これは、未来……?
少なくとも、私のいたあの地域では、人々は辺り一面の銀世界の下に暮らしていた。文献でみた過去にも、飛ぶ車はでてきていない。
自動車に運転席はなく、談笑しながら横を向いている者も多く見かけることができた。
「ここはぁジンの国で一番科学が発達している古族の町だぁ」
「コゾク……?」
「あぁ、俺たち古代後を受け継ぐ部族の略称だぁ。」
古代語を受け継ぐ部族……か。
「どうして、ここがもっとも発達しているのですか?」
もしかして、古代語……と関係がある?
「俺が全部作ったからなぁ」
──……ぇ?
「ただ、たまたま近くの遺跡で出た文献のを手加えてやっていったらこうなっちまったんだなぁ……」
偶然ということか、このカナデがすごいのか。
「まぁ、ほかの町はこんな設備ぃ必要としてないからなぁ。」
「どうしてですか?」
「ん?だってほら、あれだろぅ。」
「アレ?」
「人間以外に、こんな設備を求めるモンはいないからさぁ……。
ここ以外には、小さな町しかないんだよ、人間のはなぁ。他はいろんな種族が混ざっとるから、その土地土地で必要なモンが発達しとるよぉ。」
そういうことか。
求めないから、発展していないのか。
やはり、人間は強欲だなぁ。
科学の発達を望むのは、人間だけらしい。人間は、ただ発達しているだけであり、本当は、何よりも馬鹿で、愚かなのだ。そうでなければ、あんなことは起きないだろう。
私は「どうして人間なんかに」生まれてきてしまったのだろうか。
「ん?
なんか言ったかぁ?」
いけない。言葉にでていたようだ。
「いいえ、なにも。」
「そぅかぁ。ならいいやぁ。
──服屋はあっちだぁ。」
そう言うと、歩いていった。
全体的に白い建物が多く、高層ビルもないために空が見える。
車道はほぼ透明で、車の影が直接降りかかってくる。不思議な気分だった。
少し歩くと、角にカラフルな建物があった。
その辺一体では最も高い、四階建ての建物で、外壁には装飾品が描かれていた。
入り口に近づくと、半透明な自動ドアが斜め上下に分かれて開いた。なんだか無駄に凝っている。
「お~い」
カナデが呼びかけると、店の奥──レジのようなカウンターの方から機械音が止み、声が聞こえた。
「誰。」
「カナデだぁ」
顔を出したのは、カナデと同程度の歳だろうと思われる、短髪の女性だ。
「カナちゃん。」
そう言うと、てこてこと歩いてきた。
「三年前の分。」
カナデの手を取ってその上に、手にしていた球体を置いた。
その球体は見る角度によって色が違って見える。
どんな材質でできているのだろうか。
「また壊れたのかぁ?」
女性は頷いた。
「用は。」
「服、見せてくれぇ」
「どれ。……キルツの?マルクの?ジンの?人間の大陸の?獣の大陸の?スパよ──」
「キルツのだぁ」
早口でまくし立てるように言ったのを、カナデが遮る。
「マリアの?ソフィアの?シエラレオネの?ピクシーの?ラパスの?トお──」
「ソフィア辺りでいいんじゃないかぁ?」
また、遮った。
「最近の?古いの?」
「両方頼む」
「……わかった。三分くらい、待ってて。」
そう言うと、レジカウンターの後ろの階段を上がっていった。
それを見届けると、カナデは、どこから出したのか工具を用いて不思議な球体をイジり始めた。
「あの」
「なんだぁ?」
声だけ返してくれたが、おそらく、殆ど聞いていないだろう。
「あの方は……」
「あれは、メイってんだぁ。
シンの妹だぁ」
つい首を傾げてしまう。
その間を感じ取ったのだろうか。
「シンも知らんのかぁ?」
と、尋ねてきた。
その人物を知っているのが当たり前と思っているのだろうか。それほどこの国では有名なのか?
「……はい」
「シンは人間の大陸から来てなぁ、この大陸の統一武闘会で優勝した奴だ。 普段は逆立ちして歩いてるなぁ。」
統一武闘会というものが催されるのですか。 大陸の──ということは、精霊や魔族も参加している? そこで優勝したということは、強いのか?
もしくは悪目立ちしているということか。
「それも知らんのなら、おまえさんは獣の大陸から来たのかぁ?」
獣の大陸……人間もいるのだろうか。
それほど深い疑問ではなかったらしく、すぐに他の話題へ移った。
「確かぁ……もうすぐ今年の武闘会が開かれるんじゃなかったかぁ?」
「一月後」
「あぁ、そうそう一月後だぁ。」
「メイさん……」
あまりにも自然に割り込んできたので、つい、先ほど教えてもらった名前が漏れた。
「何」
冷たい顔で返事をされ、困ってしまう。
「何でもないです。」
「服、持ってきた」
「おう、ありがとぉ
……コッチも直したぞぉ」
カナデから球体を受け取り、無造作にポケットへ入れてメイが広げてくれた服は、ドレスだった。
サイズは子供用のようで、スカートは短く、ノースリーブの。
「ソフィアのかぁ?」
メイは頷いた。
「そう言った」
「言ったなぁ。
──今のかぁ?」
メイは頷く。
「大きい方は、しばらく作ってない。」
「残ってないかぁ?」
「見てくる」
そう言って、メイはまた階段を上がっていった。
「ソフィア国王は、子供なのですか?」
そう質問すると、「ああ、見た目はな。」と答えてくれた。
「見た目は?」
「精霊は魔法で姿形を変えられるからぁ、ソフィア国王は幼い姿をとってるんだぁ。
本当はかなり美しいお嬢さんだと聞いたぞぅ?」




