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耳をふさぐ  作者: 染井
1/1

わからない

ありがとうございました。

部屋の隅に、昼と夜の区別がない。

空気はよどみ、時間だけが黙って通り過ぎていく。


与えられてきたものが多すぎて、手はずっと塞がっていた。

誰かの期待で満たされて、誰かの夢で飾られて、誰かの愛情で包まれた場所で、自分だけがどこにもいなかった。


光のない部屋にいると、ようやく自分の輪郭を思い出せる気がする。

何も求められず、何も答えず、ただ沈んでいく時間。

それが、たまらなく心地よかった。


けれど現実は、思い出したころにやってくる。

「今日は何かしたのか」「この先どうするのか」

言葉ではなく、空気の揺れとして、壁越しに染み込んでくる。


顔を上げれば、鏡の中の顔が何かを問うてくる。

ぼやけて見えない、それでも、「よく育った」という印だけははっきり見える


かつての温もりは、今では刃で、思い出すたびに胸の奥が静かに痛む。

優しかった声も、笑っていた顔も、今の自分にはただ鋭い。


「良かったはずなのに、どうして」と誰かが言うだろう。

そこには熱がありすぎて光が強すぎた。

焼かれた影が、心の奥にずっと残っている。


笑う誰か、手を差し伸べる誰か、その全てがまぶしすぎて。


だから音も光も届かない。

何も求められず、何も応えずに、ただ沈んでいける場所。

底のように静かで、冷たい。息を止めている方が、ずっと楽な場所。

ただひたすらに、静かで暗く、誰も何も語らない場所を望んでしまう。

ありがとうございました。

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