雨音が消えるとき
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薄暗い喫茶店の窓際席。外は雨が降り続いていた。窓ガラスを伝う水滴を眺めながら、尚人は目の前に座る紗季の言葉を待っていた。
いつも穏やかな彼女の顔はどこかよそよそしく、口元を閉ざしている。その沈黙が、尚人の胸を締め付けた。
「……ごめんね」
ようやく紗季が声を出した。その一言で、全てを察してしまうほど尚人は彼女の仕草を知り尽くしていた。
「なんで謝るの?」
尚人は笑顔を作りながら言った。震えそうになる声を抑え、できるだけ軽く見せたかった。
「私たち、もう終わりにしよう」
雨音が一瞬、耳の奥で止まったような気がした。
「そっか」
それ以上、何も言えなかった。問い詰めたところで、彼女の心はもう離れているのだと分かっていたからだ。
紗季は俯きながら、小さな声で理由を告げた。
「私、他に好きな人ができたの……。でも尚人のこと嫌いになったわけじゃない。ただ……」
その後の言葉を聞く気力は、もう残っていなかった。尚人はただ静かにうなずくしかない。
「分かった。紗季が幸せなら、それでいいよ」
そう言葉を絞り出すと、彼女は驚いたように顔を上げた。尚人の目には笑みが浮かんでいたが、その奥にあった揺らぎに気づくことはなかった。
「ありがとう……本当に、ごめんね」
紗季が席を立つとき、尚人は思わず手を伸ばしたかった。けれどその代わりに、ただ冷めたコーヒーカップを握りしめた。
扉が閉まる音とともに、店内が静寂に包まれる。外の雨は相変わらず降り続いている。尚人は窓越しに彼女の後ろ姿を見つめながら、胸の中に空洞が広がっていくのを感じていた。
「雨、止みそうだな」
呟いてみても、返事をする人はもういない。
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