プロローグ 古代の記録
遥か昔の「楽の国」
この国には日女神様と呼ばれる姫が女王として国を治めていた時代がありました。
元々平和な国でしたが、この美しく賢く聡明な女王の時代は特に人も土地も豊かでした。
この女王がまだ姫であった頃、隣国の傷心の王子が婿として迎えられました。
最初は心を閉ざしていた王子も姫の優しさと聡明さに触れるうちに姫を深く愛するようになりました。
王子は姫を片時も離さず、姫だけを愛し、姫とともに政事に励んだのです。
やがて二人の間には子供たちが生まれました。
姫には秘密がありました。
日女神様として人間を超越した能力があること。いつまでも娘時代の若いままの容姿でいられること。
この秘密を姫は誰にも明かしませんでした。
そしてこの能力には短命という代償があったのです。
姫は二十四で寿命を迎えました。この時、年齢よりも少し幼い齢十七頃の少女の姿のようにも見えました。
王子は姫の死に嘆き悲しみました。その悲しみはあまりにも深いものでした。
姫と姉弟のように育った幼馴染の騎士は叶わぬ恋でしたが姫の墓前にて後追いをしました。
王子は魂が抜けたように暮らしていましたが、姫のために奮い立ち、再び政事に励み、子供たちを育て上げたのち、姫と楽の国のために命を使い果たし亡くなりました。王子は姫亡き後、他の女性には触れることすらありませんでした。
王子に愛された、その日女神の姫の名は……