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 大西洋に面した断崖にそびえるレオノイス城は、いかついゴシック調の石積み城館であるのとは裏腹に、客室が瀟洒なヴィクトリア朝様式の明るい内装であることが特徴となっている。

 ヴィクトリア朝様式は、アール・ヌーボーのような統一された様式ではなく、使っている人の好みで、様々な内装・家具をトッピングしていくものだ。

 レオノイス城の内装はさほど華美でもなければ貧相でもない。しぶめの色調の部屋に、華やかな白い鏡台をワンポイントとして置く趣向になっており、昨日やってきた客人は二階にある一室に案内され休んだ。

 朝方、目覚めたアーネスト・サトウは寝室の窓から外を眺めた。眼下には大西洋が広がり、城の断崖から少し離れたところにあるイゾルテ島、その奥にあるトリスタン島、さらに奥にはかもめ岬が入り江の港の向こうに臨むことができる。

(イゾルテ島には灯台があるな。ああ、待てよ、殺人があったとすれば、あそのこの灯台守ならば……)

 老勲爵士が起きあがると、ジョン少年がノックしてドアから顔をだした。

「あのおっ、サトウ卿、朝食のご用意ができたんですけどおっ……」

「ああっ、坊や、ちょっときてごらん。この窓からトリスタン島がみえる。手前の灯台があるイゾルテ島からは、トリスタン島の裏側もみることができるはずだね?」

 寝台から起きあがってきた老勲爵士に、窓際に立った少年は振り向いて双眼を大きく見開いて抱きついた。

「ありがとう、小父さん。僕を信じてくれるんだね」

「ああ信じるとも、朝食が済んだら、早速ボートを手配して島に行ってみよう。灯台守に話しをきいてみるんだ」

 人は階段を降りて一階にある食堂にむかった。食堂は大広間になっており、奥の暖炉を基点に部屋中央には四角い大きなテーブルが置かれている。

 上には、金色の刺繍がはった赤いテーブルクロスで覆われてあり、燭台、ハムエッグとトーストを載せたウェッジウッドの皿、ティーカップ、それに紅茶を満たしたヴィクトリア朝時代の銀ポットが置かれてある。

 伯爵と伯爵夫人、それに令嬢のシナモンが客人を迎えた。

「おはようございます、アーネスト様。朝食がおすみになりましたらイゾルテ島に参りましょう。ボートを手配しておきました」

 その人が小首をかしげて微笑んでいる。

(はっ、早い。こっ、このご令嬢……なんて手回しがいいのだ)

 サトウ卿とジョン少年は顔を見合わせた。

【登場人物】


●レディー・シナモン/後に「コンウォールの才媛」の異名をとる英国伯爵令嬢。13 歳。

●伯爵夫妻(シナモンの両親)及び使用人たち

●ウルフレザー家宰、老庭師夫妻、ジョン(庭師の孫)、調理師夫妻。

●サトウ卿/英国考古学者・元外交官・勲爵士。サー・アーネスト・サトウ。歴史上の人物。

●T.E.ロレンス大佐/アラビアのロレンス。第一次世界大戦の英雄。歴史上の人物。

●オットー・スコルツェニー/後にナチスドイツ大佐となる。歴史上の人物。

●ミューラー/スコルツェニーの友人。

●ジョージ・セシル及び関係者/レオノイスの町の大地主(第1の被害者)。エリー(妻)、モーガン(友人)、チャールズ(従弟)、エディック(従弟)

●その他/灯台守(第2の被害者)、商工会会長(劇団座長)、駐在の巡査、レザー警部(コンウォール警察)

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