ヴィクトリア朝ロンドン警察の仕事/ノート012
ロンドン警視庁総監
ヴィクトリア朝時代の警視総監は、女王から親著を受けた者がなった。なんと裁判権があった。出勤早々、執務室に入り、治安に関する企画立案を作成。各管区の警視を召集して会議(警視連絡会議)を行うため、業務は夜遅くにまでなった。激務である。
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副総監
1856年以降に2名増設されたポストだ。
各管区の警察署を巡察。警官の服装、装備品、警察馬の点検。署の施設、備品、帳簿を点検。巡察後に警官たちの分列行進を観閲する。
遠隔地の警察署を巡回。現地の状況、警官たちの苦情・要求をきき総監に報告する。
暴動が起きた場合は、暴徒鎮圧の総指揮を執る。
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警視
警視は各管区の警官を指揮監督する。
毎朝の警視連絡会議に出席する。草創期は日曜日を除く毎日だったが1868年ごろから週3回に減った。
管区内で事件が起こると、乗馬して、現場にかけつける。
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警部
草創期は各管区のもとに警部が平均4人配備。ヴィクトリア朝注記から、先任警部と平警部の序列がつく。ホームズに登場するレストレイドやグレグスンは本庁C・I・Dの平警部だ。
各警察署長の階級は当初は先任警部だったが1939年以降は警視がなる。警視正の警察署長は1946年3月からだ。1904年発表、コナンのホームズシリーズ「美しき自転車乗り」に登場する田舎の警察署長が警視になっているのだが警部の誤り。
大事件が発生すると、巡査部長から受けた報告を本庁に第一報を届け、以降は三時間ごとに経過を報告する。
所管内で火事が起ったとき警視がいない場合は警部が指揮をとる。
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巡査部長
パトロール・外勤主任である。
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巡査
パトロール担当区の巡回。
巡回が終わるまで食事・休憩はおろか飲み物を飲むことすら禁じられていた。激務で、内臓疾患・鬱病を患い退職する者が続出した。貧民街に住み、パトロール担当区に早朝勤務の労働者がいると、竿で窓を叩いて起こしてやるサービスも行っていた。
火事が起こると消防隊がくるまでの初期消火や人名救助を行った。
早朝パトロールではゴミ拾いも行い、署にそれを持ち帰り、環境美化も行った。その一環で、野犬や迷い犬の捕獲・保護もやった。
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内藤弘「スコットランド・ヤード物語」晶文社1996年 133‐148頁