九 盗賊の正体
妻を抱えて家に戻ってきた時には賊はもういなかった。
父親は囲炉裏のある居間で殺されていた。
右側の肩から袈裟掛けで一刀のもとだった。
その腕から先程の賊と確信した。
それを止めようした母親も殺された。
母親は胸や腹部を数か所刺されていた。
この村の女はそれなりに武術の心得があり、母親も小刀を握って死んでいた。
私は妻と両親を一度に失い激しい衝撃を受け、暫く食事も取れず憔悴していた。
村の男衆は15人いたが襲撃で2人殺され残り13人になっていた。
賊は総勢6人で私が倒した2人以外の4人は逃走した。
幸い女、子供は無事だった。
それは賊にも無抵抗の女、子供には手を出さないという暗黙の決まりがあった。
数日後、代官の部下が襲撃の調査に来た。
「隠密の仕事もここ数年行っていないので、その恨みによるものとは思えない。
多分盗賊だろう。廻りの村を調査して連絡する」
私は宝刀が狙われたと報告しよう思ったが、宝刀が没収されるのを恐れ止めた。
両親と妻の葬式も終わり、村の男衆の同意も得て私は22歳で村の長を継いだ。
それから半年後、村の周辺などで聞き込みをして村を襲った
盗賊の正体が分かった。
それは近くの村の小作人達だった。私は直接その村長に会いに行った。