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七 男の自殺


 私は鈴がこのまま信一郎の嫁でいると夫婦共に危険な目に会うから、お金を

渡して鈴を実家に帰し、すぐに信一郎に村の長を継がせて古文書通りに異国へ

行ってもらう。鈴の実家を援助し、時期を見て鈴を嫁に貰うと自分に

都合の良い話を想像していた。


そんな事を考えながら暇な日々が過ぎた頃、鈴を襲った男が隣村に戻ってから

3日後に山の中で首吊り自殺したとの連絡が入った。


家族の話では鈴が忘れられず仕事もしないで悶々としていたらしい。


鈴は気が付いていないが、男を惑わす妖艶な女の色気を出していて

私も虜になっていた。


鈴に男が亡くなった事を報告するために私はすぐに信一朗の家に向かった。


私が報告しなくても何時か鈴の耳に入ることだが鈴に会いたかった。


玄関の戸を開けて声を掛けると奥から鈴が出て来た。


「小次郎さん何か? 信一郎さんは畑に行っていますが?」


「いや鈴に話がある」私は男が亡くなった話をした。


鈴は悲しそうに聞いていたが、心を切り替えたようだった。


「小次郎さんお茶でも飲みますか?」


「有難う頂く」と言いながら座敷の敷居に腰かけた。


鈴はお茶の支度のため台所へ行った。


外に人の気配を感じたので障子の隙間から覗くと、若い男が木陰よりこちらを

窺っていた。この村の若い男だと分かった。


鈴が高そうな柄の着物を着ていることに気が付いた。


鈴がお茶を持って来たので湯呑を取りながら聞いた。「その着物は?」


「これは母が持たせてくれたものです」


「高そうな着物だが?」


「母が武家の時に着ていたもので最後の一枚です」


タスキ掛けで袖が肘まで捲れ細い白い腕に産毛が見えた。


鈴の臭いもあり思わず欲情したが懸命に堪えた。


「野良仕事は一緒に行かないのか?」


「いつもは一緒に行きますが、今日は簡単な作業なので信一郎さん1人

で行きました」


「何時でもいいから何かあったら遠慮しないで相談に来て」


「分りました。有難うございます。信一郎さんにも伝えておきます」


私は外で窺っている村の若い男について鈴に聞いた。


毎日のように来ていて、5人程で別々に来ては様子を窺うだけで危害を加える訳

ではないので気にしていないが、信一郎が神経質になっているらしい。


また鈴を巡って事件が起きる不安が増してきた。


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