五十一 保安官事務所
保安官の事務所では入口の右側の壁際にある椅子に2人の男が座っていた。
先程、馬に乗せられ綱で引かれていた男達だった。
その前の四角いテーブルの角に保安官が腰かけていた。
後の椅子には部族の助手が長い銃を持って座っていた。
2人は従兄で共に30歳を超えていた。
隠れて悪い事をしているのは保安官も知っていたが目撃者も証拠もない。
欲望を満たす為に部族の娘を襲う。
狡賢いことに白人の娘は大変なことになるので襲わなかった。
あとは街の酒場に盛んに出入りしている。
仕事をしていないので金がないはずだが? 可笑しいと保安官は思っていた。
大分前から開拓者の幌馬車が襲われて皆殺しにされ金品を奪われる事件が何件か
起きており、この2人と伯父の2人の仕業と考えているが証拠がない。
それに伯父の1人が将軍の元配下であった事も躊躇させていた。
保安官は二人に聞いた。「何か言うことはないか?」
2人は頭が悪そうで不思議な顔をしていた。
「あそこで凍死か餓死をしていた方が良かったのかな?」
助手に言われ気が付いたようだった。
「助けてもらい有難うございました」と1人が礼を言うと続けてもう1人も
同じ事を繰り返した。
「誰に襲われて、誰に縛られた?」
「部族の娘に襲われて、連れの男に縛られた」
「顔は見たか? 知っている奴か?」
「娘の顔は見たが男の顔は見なかった。知らない娘だった」
「縛られている時に男の顔を見なかったのか?」
「気を失っていたので見ていなかった」
「気絶する前に男が一緒にいなかったのか?」
男達はびくびくしながら「襲われた時はいなかった」と答えた。
「じゃあ、2人が一緒に娘に襲われ殴られて気絶させられた。男が後から来て
気絶しているお前達を縛った。本当か?」保安官は不審そうに聞いた。
「本当です。強い娘だったです」
「この話は他でするな、お前ら一生笑い者になるぞ、それに先程、アリーナだ
と部族達が小声で騒いでいたが、アリーナが生きているとの噂で部族の戦士達が
結束し戦闘が激しく成るのは御免だ。部族の娘に襲われた件は事件として取り扱わない。
悔しかったら自分達で処理しろ、その件でこの街に少しでも被害が出たら捕まえる」
「最後に幌馬車襲撃の事件はお前らと伯父達が犯人と想定しているが証拠が無い。
何人も殺されているので、連邦保安官が重要事件として近くこの街に来る。
その時に家を調べに行くから伯父達にも伝えておけ」厳しい口調で話した。
「俺達は襲っていないし、伯父さん達も襲っていない」主張していたが外に出された。
助手の部族の男は部族の娘が襲われている件は何件もあり、殺された娘も何人
もいるのに問題にされていない。
理不尽だと思ったが諦めるしかなかった。




