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四 祝言


 信一郎と隣村の娘の祝言は娘の両親の希望もあって1か月後に地味に信一郎の

家で行った。祝言には長と家長だけが出席した。


信一郎の家の台所では、菊婆さんと数人の女衆が祝言の酒と料理の支度をしていた。


1人の女衆が菊婆に聞いた。「さっき、座敷で見掛けたが嫁さん綺麗だね。

信一郎さんには釣り合わない。菊婆が仲介したと聞いたが?」


「釣り合わないなんて言わないの。私も思っているけど。始めは娘の希望で

小次郎さんの嫁にと話を持って来たが、どうしても嫁を貰えない事情が

あるからと、それで信一郎さんの嫁に」


「でも娘さんの希望は小次郎さんでしょう? それに信一郎さんはちょっと

不細工で娘さんは納得した?」


「私もそれが気になり、2人を合わせて娘に聞いたら信一郎さんで良いとの

返事を貰った」


「やはり背に腹は代えられないか?」と女衆がぽつりと言った。


祝言で私は初めて娘を見たが、一目で惹きつけられるような美形だった。

得体の知れない魅力を醸し出していた。


あの時に自分の嫁にしていたらと迂闊にも思ってしまった。


奉公に行けばすぐ評判になり商家の奥さん、役人の妻か妾になれる。

そして、何不自由のない生活を送れるだろう。


15年以上も前に仕事で江戸へ行くことがあった。


吉原の遊郭の花魁行列を何回も見惚れていた。


装えばその花魁をも凌ぐ美形だった。


その娘が百姓の嫁になって野良仕事をして地目な生涯を送るのか? 


信一郎と美形の嫁の先行きが不安に思えて信一郎の嫁にしたことを後悔した。


祝言のめでたい時に不謹慎な事を考えてしまったが、何年後に村に戻れたら

この夫婦が正常でいる事が奇跡のように思えてきた。


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