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三十六 憑依されたアリーナ


「アリーナ!」叫ぶと、こちらを向いたその目は虚ろで何かに

憑依されているようだった。


頭の中から声が聞こえて来た。


(アリーナから神を取り出せ!)と、私はアリーナの前に立ちふさがった。


アリーナは馬から降りて将軍のサーベルを抜いた。私のことは解らないようだった。


私も腰の刀を抜いた。


それを見たアリーナと共に闘ってきた部族の戦士が一斉に銃、弓を私に向けて来た。


祈祷師が間に入り一旦止めたが、アリーナを傷つけたら、

ただでは済まないと感じていた。


アリーナと戦えばかなり苦戦し負けるかもしれない。


私は急に怖くなり命が欲しくなった。


アイラとの生活を失いたくないと考えた。


神の命令で逆らえないと覚悟をしているとアリーナが近づいて来た。


その顔が上気して大きな眼は虚ろだった。意識が朦朧していると感じた。


その証拠に私の剣を払う速度が遅かった。


アリーナは将軍のサーベルを抜いていた。


宝刀は将軍を斬ったので一時効力を失うが、アリーナの持っているサーベル

まだ効力がある。何回も打ち込んでも跳ね返されてしまった。


古文書に宝刀は人を切ると一時的に効力がなくなると書かれてあったの

を思い出した。


私はアリーナの左側に廻り込み、一撃を加える振りをして、サーベルに自分の腕

を押し当て傷を付けた。


するとアリーナを防御していた堅い殻がなくなった。


私は両手の平でアリーナの右胸を突き失神させた。


倒れる彼女を抱き止めると「サーベルの柄を彼女の頭に当てろ!」

と頭の中で神の声が聞こえた。


サーベルの柄をアリーナの頭に近づけると霧状のような物が出て来て

サーベルの柄の部分に吸い込まれていった。


状況を見て戸惑っている部族の戦士に気絶しているアリーナを村に

届けてくれるように頼んだ。


又も頭の中から(これで貴方の役目は終わった。そのサーベルと宝刀を回収する。

川の中の白い球体の処へ来なさい。そして、元の世界に戻そう)と聞こえた。


私は不安になった。元の村に戻されると二度とアイラに会えなくなる。

でも他に選択がなかった。


心の中で(この世界に留まりたい! 元の世界に帰りたくない!

 源太との約束もある)と心の中で叫んだ。


私は川の畔にいた。川は月の光りを写し水面が光っていた。


天を見つめ覚悟を決め、川に飛び込み白い光を目指しながら泳いでいった。


辿り着くと、球体に吸い込まれすぐに気を失った。


そして気がつくと水面に向かって泳いでいた。


不安に思いながら水面より顔を出すと暗闇だが村の滝壷ではなかった。


小次郎は喜んで神に感謝しながらアイラいるテントへ向かった。


その夜遅く、川の中から白い球が水面に浮上し空に向かって飛んで行った。


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