三十四 源太との再会
私は斥候が持っている刀を見て驚いた。日本刀だった。
私は馬から降り、刀を抜き近づいて行った。
男の顔を見ると左頬に刀傷があり、年を重ねて陽に焼け顔も黒いが
面影があった。
妻と両親を殺した男に似ていた。男も私に気が付いたようだった。
私が近づくと男は身を伏せたまま「小次郎さんですね?」と分かっていたように
懐かしい言葉で聞いてきた。
間違いないと思った。そして男の言葉に頷いた。
こんな処で出会うとは不思議な感覚だった。
「源太なのか?なぜ村を襲撃した?」
「そうだ、宝刀を奪って来いと命じられた」
「誰の命令で?」
「分からない。ただ頭の中から聞こえたから神の声だと思った」
「何故ここにいる?」
「宝刀を奪うのを失敗し、代官に目を付けられ村を出て散り散りに逃げた。
何年も各地で小作人をして精根尽きた頃、又頭の中から声がした。
私は声の指示通りに、神隠しの滝壷に入った。気が付いたらこの国に来ていた。
そして将軍の配下になり、部族の妻も貰い子供も出来て生き甲斐を感じるよう
になった。今では将軍の警護を任されるようになった。私の本意ではないが神
に決められていた気がする。この状況では助かりそうにない。最後に小次郎さん
に頼みがあるこの金を妻に届けて欲しい」と袋をさし出したが、私は受け
取らなかった。
確かに襲撃から13年も経って恨みは薄れていた。
私はアイラと暮らしている自分が重なった。
許そうと思い刀を捨てさせ円陣から出した。
「この男は私と同じ異国から来た。色々な事情で将軍の斥候になった。もう戦う
気力もなく降参している。そして部族の妻と子供がいる。殺さないで欲しい」
馬に乗って取り囲んでいる部族の男達に向かって源太の命乞いをした。
賛否があるようで男達はざわざわしていた。
馬に乗ったアリーナが近づいて来た。
源太の目の前まで来ると「小次郎と同じ国でも、部族の妻と子供が居ても
今まで将軍と一緒に部族への虐殺を繰り返して来た罪は消えません。
それにこの男は信用できない!」
持っていた刀で源太の胸を突いた。
源太はそのまま倒れ込んだ。
側に行った私に「あの娘の言う通りだ。少しでも助かろうと思った私が恥ずかしい。
もう一度頼むこれを妻の処に届けて欲しい」と袋を渡して事切れた。




