二十九 アリーナの精神力・部族の移動
私は急いで娘達の処に駆け付けた。
兵隊が全て倒れているのを確認した。
娘達は宝刀の力で返り血は浴びていなかったが、娘達の廻りは血の海だった。
「大丈夫か?」としか聞けなかった。
アリーナが「大丈夫です。私が4人をアイラが1人倒しました。宝刀の力
は凄いです」と興奮して答えた。
兵隊の傷を見ると稽古通りだが、いくら宝刀が弾、剣を避けるといっても
短い間に五人の兵隊を始末するとはかなり腕を揚げているのは確かだった。
ただ最初の戦いで躊躇なく4人を殺傷するアリーナの精神力の強さが気に
なったが、目標に近づいていることは嬉しかった。
最初の戦いでアリーナは高揚していたが、アイラは青い顔をして
憔悴しているようだった。
私はアイラに近づき話した。
「人を殺すのは辛いことだが、やつらを人とは思わないで戦う。やつらも
部族を人と思っていない。だから無抵抗の女・子供を虐殺する。殺さないと
殺されると思い戦って欲しい。アイラにとって最初にこの修羅場は大変だった
と思う。今日一人倒したから自信を持って」
アイラは自信なさそうに頷いたが、アリーナは横で聞いていて闘争心を高めていた。
部族の男達が狩りから戻って兵隊と戦っていると伝えると、アリーナは戦いたい
とアイラと戻って行った。
村に戻ると隊長が戦死し統率を失った兵隊はばらばらに引き揚げていた。
部族長は沈痛な顔をして話した。
「この襲撃で二十人程の女、子供が無残にも殺された。ここにいても
悲劇を繰替えすだけ、他の部族が集まっている西の方に移動する。そこに行けば
今より襲撃されることは少ないだろう」
部族達にテントを畳み西への移動の準備を命じた。
兵隊が襲撃し部族はその土地を追われる。
それを繰り返しながら部族を西か北へ追い詰める。
そのたびに部族は戦う。
私はどうやら黒船のペリーの国だと思うようになってきた。
部族が戦って勝てる相手ではない。
部族の最後はどうなるのか不安になってきた。
部族と生活し自然のままで欲を持たない生き方が自分に合うように感じてきた。
白人に付け入られる弱点だったが、弱点ではなく純粋な精神だと思った。
移動する前に私は部族長、祈祷師、主な部族の男達に集まって貰いアリーナ
に宝刀を渡すと報告した。
前にアリーナは白人の子で相応しく無いと発言した男が反対したが、前の襲撃で
兵隊を4人殺したこと、闘争心が強く戦闘能力も高い事を説明し承諾して貰った。




