十四 襲われた部族
気がつくと白い球体から出て水面に向かって泳いでいた。
箱を確認すると体に紐で繋がれ後ろから付いて来ていた。
水面より顔を出すと、廻りの景色が変わっていた。
滝壷ではなく、緩やかに流れる川の一部に水の流れが滞って出来た広い場所で
川底に白い球体が薄く見えていた。
廻りに高い木はなく川の廻りは草が生い茂っていた。
草の間から金色の光が差し込み朝だと感じた。
私は川から出ると野良着と袴に溜まっていた水を絞り出した。
これで少しは動き易くなり箱を背負った。
此処がどんな世界か分らず不安だった。
草を掻き分けて行くと川に沿って出来ている細い道に出た。
少し空気の臭いが違う気がした。
私は目的地が分っているように細い道を川上に向かって歩き始めた。
空気が乾いているようで歩いていると着物はもう乾いていた。
暫く行くと廻りの草も減り、道は石と砂が多くなってきた。
そして草木がなく廻りが崖のようになって赤土が見えている山が幾つも
見えてきた。
私が歩いて来た細い道は広い砂利道に繋がっていた。
広い道は蹄の跡や馬車の轍が無数あった。私はその広い道を進んだ。
道の両側は先程の山が連なっていた。
すると前方に砂煙が上がり蹄の音が聞こえて来た。
私はとっさに道の側に転がっていた大きな石の後に隠れた。
50人程の青い服を着た男達が馬に乗り私が来た道を反対方向に
駆け抜けて行った。
馬は村の馬と比べると足が長く細くて一回り大きかった。
頭に被っている布製の物や服で清国とは違う国だと分かった。
初めて見る光景で細い剣と短銃を腰に付けた統制の執れた集団で
兵隊だと感じた。
顔は遠くでよく見えなかったが体は大きかった。
暫く歩くと小高い丘が右手に見え頂上より幾筋も煙が上がっているのが見えた。
部族の集落があると考え丘の上に続いている細い道を登って行った。
着くと、円錐形の部族の住居が多くあったが、ほとんどが燃えていた。
そして酷いことにその廻りに女性と子供の死体が転がっていた。
特に女性は頭の皮を剥がされ体を切り刻まれていた。
子供の傷は銃創と刀の刺し傷だった。
廻りのすべてがそのような状況ですぐ把握できなかった。
衣装は初めて見るもので頭には幅のある鉢巻に鳥の羽根を差して
ある物を付けていた。
私は幕府の隠密として何人もの命を奪って来たが全て屈強の男で無抵抗の女、
子供を殺す事は考えられなかった。
この様な惨状を見たのは初めてだった、蹄の跡が無数にあり馬に乗った
数十人の集団に襲われた。
それは先程の集団だと推測した。
統制の執れた兵隊が無抵抗の部族の女、子供達を蟻を潰すように殺した。
虫けらの様に考えているのかと憤り感じた。




