十二 村の会合
信一郎から相談があった。村の若い男衆が鈴目当てに家の廻りをうろつき、
家の中を窺っている。気になり野良仕事にも行けない、何とかして欲しいと。
真夏のある日に村の家長の13人と18歳以上の息子を家に招集した。
「近く新政府の役人が刀剣と武器の検査・収集に来るから素直に渡すように
来年位に帯刀禁止令を公布するので事前に検査・収集するそうだ、
また私は村の古文書の言い伝えに従い異国に行く、宝刀が没収されないように
役人が来る前に行くつもりだ」
その話で村人達は動揺しざわめき始めた。
私は皆を落ち着かせるため古文書を皆に見せたが、急なので動揺はなかなか
収まらなかった。
「役人が来て長が居ないのは問題では?」
「次の長を決めてある、私の従弟の信一郎だ。本人も承知している」
と奥から呼び私の横に座らせた。
「今ここで皆に承認して欲しい。書も用意してある」
「信一郎は若くて大人しいので大丈夫か?」
「信一郎は25歳で私は22歳で長になった。信一郎には妻がいて色々
手助けもして貰える。それに前の時代と違い武術など必要なく、今は農作物
を作り、それを売り生活する。工夫すれば豊になれる。そういう時代になった。
其の点では信一郎は適していると思う」
「滝壷に飛び込んで遠い所に行くなど信じられない。異国とは?」
「私も半信半疑だが昔からの村の言い伝えでやらなければならない。
もし飛び込んでも変わりが無かったら戻ってくる。もし戻って来なければ異国
へ行ったと考えてくれ。私が思うに異国は清国の廻りの国か、
その南にある国だと思う」
色々な意見はあったが、村人達に承知してもらった。
次に私は鈴の話をした。
「最近村の若い衆が信一郎の家の廻りをうろつき家の中を窺っている。
鈴が目当てらしいが、今後そのような事はして欲しくない。今日若い衆を
呼んだのはそれを約束して欲しいから、提案だが鈴の件もこの村に若い娘
が居ない事が原因のひとつだと思う。鈴の村は若い娘が多いそうだ。
信一郎は長として仲介してやって欲しい」
鈴の話には色々と賛否があったが会合は終わった。
最後に私が出発する時、滝壷の廻りに誰一人も来ないように伝えた。




