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最終話 一緒に

「いい? シンはああ見えて時々無茶するからしっかり捕まえてるのよ?」


「はい! こないだので身に染みました」


 ミナがリアンに謎の助言をしている。返すリアンの言葉に実感がこもっている。そして、ミユやミカもリアンの周りに集まっていた。


「それじゃ、シンたちも元気でいろよ?」


「ああ。リョウもこれから大変だろうけどな。頑張れよ」


 風呂では触れなかったけど、リョウたちの関係は世間的には認められない。今はいいだろうけど、将来困難にぶつかることもあるだろうな。


「なーに、あいつらの為ならなんでも乗り越えてやるさ。シンだってそうだろ? お前も頑張れよ」


 リョウは最初からわかって三人と付き合ってるからな。本当になんとかしてしまいそうだ。


「お互いに子供を見せ合えないのが残念だな」


「ははっ、そうだな」


 これはお別れだ。プレベールが送還魔法でリョウたちを戻してくれることになり、召喚されたときと同じ玉座の間に集まった。

 この魔法もアポカリプス――ひいてはエウリュビアが召喚魔法と合わせて残したらしい。

 ちゃんと戻せるあたりエウリュビアにとっては召喚は一時凌ぎでもこの世界の危機を回避するために考えたものみたいだ。


 プレベールは俺がいない時に何度かリョウたちに戻すことを提案したけどリョウたちが俺が戻るまではと断固として拒否したらしい。

 結局俺は残ることにしたけど……ちゃんと再会できてよかった。



「そろそろよいか? 名残惜しいのは重々承知しておるが……」


 これではキリがない……。プレベールも勝手に召喚した立場だけにその言葉を言うことはできないようだ。


「そうだな……それじゃあ……」


 残る俺がその先を切り出す。


「ああ。みんな、いいか?」


「「うん」」


 リョウの確認にミナとミユが頷く。


「あ、ちょっと待って」


 ミカがそう言って俺の前に来る。


「どうした?」


「ありがとう。シン君。ちゃんとお礼言ってなかったと思って」


「いいって。気にすんな」


「ふふっ、さすがシン君。リアンちゃんと幸せにね」


「わたしも言っておくわ。ありがとう、シン」

「私も! ありがとう」


 ミカに釣られてミナとミユも頭を下げてくる。


「みんな元気でな」


 そう返すと、三人揃って涙を流し始めた。なんだかんだこの三人とも付き合いは長かったもんな……。


「プレベール。頼む」


「よいのか?」


 これ以上は俺も辛くなる。頷き返して一歩下がる。その隣にリアンが立って腕を絡ませる。本当に心を読まれてる気がする。


「では、ゆくぞ。『送還』」


 手を振りながらリョウたちは消えていった。



「それじゃ、今後のことを話し合おうか。人間国は混乱してるだろうし、早めに動きたい」


 なにせ王城が破壊されて国王が()()()()だからな。


「なら私は母探しに戻ります。連れて行った男も気になりますし」


 アストは手伝ってくれないのか。アストがいると色々話が楽になりそうだったのに。そう思ったそのとき――


「呼んだかい?」


 唐突にエウリュビアと信長が姿を見せた。


「居たんですか。私相手にも気配を消すのはやめてほしいんですが」


 アストも呆れ顔だ。


「悪いね。人が多いのは苦手なんだ。前と違う部屋だから探したんだよ」


 今は玉座の間で前回会った地下じゃない。召喚されたときとは違って魔族はプレベールだけしかいない。

 ただ、この数十年で増築されたこの場所はエウリュビアは知らなかったらしい。


「それで、わざわざなにをしに来たんだ?」


「これでも今回のことはアタシも反省してるのさ。だからノブナガを連れてきた」


 そう言って信長を手で示す。


「話は聞いた。俺はお前に救われたらしいな」


「まぁ、そういうことになるのか?」


 まさか俺に話が来るとは思わなかったからちょっと焦ってタメ口になった。


「お前の望みを叶えてやろう。すぐにとはいかんが」


 まぁ、元手になるものをなにも持ってないだろうしな。


「なら、人間族を纏める王になってください」


 最終的な目的でいいだろうと思ってそう提案した。


「くくく、自分に欲はない、か。エウリュビアの言う通り面白いやつのようだ」


 一体なにを吹き込まれたんだ。それに俺はむしろ自分の欲の為に戦ったようなもんだぞ。


「お前が俺に下につけというのなら従うつもりだったのだがな」


「いやいや、信長公を従えるとか考えてませんから」


 何を言い出すんだこの人は。


「くっくっく。まぁ良い。お前の望み、確かに聞いたぞ。エウリュビア、案内しろ」


「おやおや、人使いが荒いねぇ。どこへ行くんだい?」


「国王が死んだのだろう? ならばその兄のところだ」


 どうやら本当にこの世界のことを叩き込まれたらしい。俺が頼みたかったことを既に理解している。


「やれやれ……これは『転移』が必要だね。アスト、手伝いな。アタシは最近の場所へは飛べないんだ」


「全く……どこに籠もっていたのやら……。人使いが荒いのは貴女もですよ」


 とはいえアストに拒否権はなさそうだな。


「これなら外は任せてよさそうだな?」


「近いうちに使者を送ろう。それまでに道を拓いておいてくれよ?」


 俺がやることもお見通しか。アストに言ったつもりだったけど、信長から返事がきた。


「お前は俺に今のように話すことを許そう」


「はは、ありがとうございます」


 なんか今後の人間族が心配になってきた。そう思って苦笑いを浮かべる。


 そして、信長はエウリュビアを伴ってアストの『転移』で飛んでいった。



「なんか、色々あっという間だったな」


「そうだね」


 部屋に残った俺の呟きをリアンが拾う。


「改めて礼をさせてくれ。シン、本当にありがとう」


 残ったもう一人、プレベールが頭を下げた。


「もういいってば」


 焦る俺をリアンがくすくすと笑っている。


「それより、これからプレベールも忙しくなるぞ。間違いなく外交が始まる」


「なに?」


「道を拓いておけ、っていうのはそういうことだ」


 物理的に通れるようにするのは当然として、プレベールたち魔族にその準備をさせろ、そういう意味だと俺は受け取った。


「なるほどの」


「俺はリアンと道作りだな。まずは周辺の『浄化』から始めよう」


「うん!」


 いい返事だ。


「アレ、とってあるよな?」


「もちろん!」


 リアンは『収納』から魔力回復薬を取り出して俺に見せる。

 アストにはバレてたかもしれないけど、返したのはコピーだ。


「さすが俺の嫁だ」


「アナタの妻ですから」


 そうしろと言ってなくても伝わっていた。この周辺の『浄化』をしていくには俺たちの魔力じゃ少なすぎるからな。


 そんな俺たちのやりとりを少し羨ましそうにプレベールは眺めていた。


 後で聞いたらリアンはそれに気付いていたらしい。俺が望むならプレベールも一緒でも構わないとまで言っていた。


 でも、それを聞いた俺がリアンとしか結婚しないっていう考えを伝えると、その夜はリアンにめちゃくちゃ求められた。





 数十日後。


「よーし、リアン、イチ行くぞ!」


「うん!」


「ウォン!」


 イチに乗って魔の森を西に向かう。

 周辺のモンスターの『浄化』を終え、今度はペリプル村に向けて道を作っている。


 城の周りには魔族たちが更に壁を作り始めている。また、別の職人が道を担当し、俺たちが拓いたところを整備していく。


 この森の動物は魔力を持たない人を襲ってしまう。

 だからそれらから守れる道を作る必要があった。

 動物避けを研究してそれを道に少しずつ反映させていっている。


 壁を担当している職人はリョウたちと再会したときに城壁の補修をしていた人たちで、その護衛をしているのはシャーリーとコウだ。ペリプル村から連れてきた。

 なんだかんだあったけど、魔族たちもリョウたちのおかげで協力するのにあまり抵抗がなかったみたいだ。



「だいぶ変わってきたね」


 リアンもそんな魔族たちの変化を感じているみたいだ。


「ああ。王都とかも変わるといいな」


 俺に政治はできないからそこは信長たちに任せよう。

 意見を求められたら俺の意見でいいなら答える。

 何日か前にアストが来たときにそう伝えた。ちなみにエウリュビアはもういなくなったらしい。


 信長は国王となるべく動いていて、近いうちに王都へ入るらしい。今はまだ王都の混乱を元国王の兄が抑えている状態みたいだ。

 あと、国王の跡継ぎ候補は全員死んでいることもわかった。アポカリプスが『憑依』したときに殺したんだろう、とアストは言っていた。


 だから、その兄が立てれば信長の即位は問題なくいける、とのこと。


 現状上の言うことが絶対な国だからそこでなにか起こることはないだろうな。

 信長にはそれを壊してほしい。機会があれば会いに行こう。



「どうしたの?」


 考え込んでいると俺の後ろでしがみついてるリアンが聞いてくる。

 イチもそれに合わせてスピードを落とす。


「いや、なんでもない。まだ先の話を考えてただけ」


「そんなに気になるなら王様になればよかったのに」


 やっぱりお見通し。


「俺には向いてないって。リアンと一緒にいたいしな」


 そうなったら一緒の時間が減るじゃないか。と思えるほどあの日以降リアンとべったりだ。


「もう…………でも、そんなシンが好き……」


「俺もリアンが好きだ。だからリアンと一緒にいられる生き方を選ぶって決めたんだ」


「うん!」


「オン!」


「イチも一緒だよー!」


「よし、進めイチ!」


 イチの頭を撫でて、最後にポンと手を置くと、再びイチが走り出す。


 この世界での新たな人生はまだ始まったばかりだ。『ディストピア』なんて名前だけど、俺が死ぬときには理想郷だったと言えたらいいな。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

これにて完結です。

この物語の感想を一言でも聞かせて頂けると嬉しいです。


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