第44話 王城侵入!
アストの助けで二度目の転移。前回は海の側から村の前で風景がガラッと変わって軽く酔ったような感じになったけど、今回は城から城で内装もそこまで違いのない石造りだったからすぐに順応できた。
既に夜は明けつつあり、視界は悪くない。それでもこの世界の住人的にはまだ寝ている時間だ。
着いた先を見回して確認すると、広い廊下の各部屋の前に騎士が二人ずつ立っている。想定にあった「どこに現れてもいい守り」のパターンだな。普通はここまで厳重じゃないはず。
というか、魔王城でも転移を想定しなければ夜は誰もいない。
「来たぞ侵入者だ!」
「囲め!」
俺たちに気付いた騎士たちは声を掛け合って集まってくる。前に六人、後ろに八人。
当然、アストは既にここにはいない。転移が完了した時点で姿を隠し、後ろ側にある最初の目的の部屋へ向かっているはずだ。
『快眠』
『睡眠』
前後を囲まれたタイミングで前にミユが『快眠』を、後ろにミカが『睡眠』を放つ。
道を塞いでいた騎士がバタバタと眠り倒れていく。
本来治癒力強化に使う『快眠』は回復魔法であり、基本的にレジストできない。それを利用して進行方向に確実に効く方を任せた。
ミカの『睡眠』は魔力持ちには効かない。残った三人の騎士の首筋に俺の打撃が入り昏倒させる。眠らされるのが予想外だったのかほぼ棒立ちであっさりと終わった。
「よし、想定通り。俺たちも行くぞ」
おそらく部屋に着いたであろうアストからの連絡はない。これも計画の内。突入から5分はアストには待機してもらう。そちらが当たりだった場合にアストが危険だからだ。
その想定を思い出しながら俺たちが走って目的の部屋へ向かっていると、不意に声がした。
「あちらはハズレです。騎士の詰所で溢れ出して来てました」
反対側に向かったアストだった。さすがに寝室の中に待機させるとは思えないし、俺もその予想を肯定して頷きを返した。
となると、こちらが寝室か。
そう確信すると同時にある予感が過ぎる。
「罠……」
「えっ?」
想定になかったわけではない。両方ともハズレなパターン。
それを俺が口にすると、横を走るリアンが振り返る。
「私が行きましょう」
もう一つの予想。三階の謁見の間だ。俺たちがこちら側を担当した理由。それがこちら側にある階段だ。そこを登って確認する役目をアストが買って出る。
「わかった」
返事を返して分かれる。正確には声がしなくなっただけで俺たちにもアストがどこにいるかは分かっていない。
それからすぐに目的の部屋へ着く。走ってきた向きの左手一番奥の部屋だ。この部屋の守りの騎士もさっき向かって来ていたらしく、今は誰もいない。
その時点でここがハズレだと予想できた。国王を守っているなら持ち場を離れるはずがないからだ。
「一応確認しようぜ」
それはリョウも気付いたらしく、確認だけはと提案してきた。裏をかいて実は……なんてことも操っているならあり得ないこともない。
「よし、開けるぞ」
後ろからは詰所から出てきた騎士も向かって来ているし、あまり時間はない。
俺以外は扉の左右に分かれて、俺も半身になりながらそっと扉を開けた。
まずは中が覗けるくらいに。人の気配がないことを確認して思い切り開き中へ入る。
確かにそこは寝室だった。入り口から奥まった位置に豪華なベッドが置いてある。
しかし、残念ながらそこは無人だった。幸い特に罠はなさそうだ。
――と、そのとき、アストから位置を知らせる連絡が来る。向こうからは初めてだったけど、ガラス玉を入れてるポケットの辺りが光り、地図が表示される。
といっても、世界地図だ。王城の位置が点滅している。
まぁ、今回は行き先がわかっているからそれで問題はない。
「やっぱり上か! 戻るぞ」
みんなにそう声を掛けたときには既に入り口は騎士に塞がれていた。
「ミユ頼む!」
「うん!」
リョウが指示し、すぐさまミユの『快眠』が発動する。しかし、どうやら効果範囲は視界内だけのようで、廊下に残った騎士は眠ることなく立っている。
『睡眠』
そこにすかさずミカが魔法を撃つが、それで眠ったのは二人だけ。残り五人いる。
「俺が突っ込む。一気に抜けるぞ」
そう言って剣を抜いて飛び込む。廊下は広いとは言え、剣を振るうのは難しい。
それは騎士の方も同じようで、ギチギチに固まっているせいで全員が正面に剣を構えている。横振りだと仲間に当たるからだ。
そんな騎士の一番右側、俺たちが抜けたい方向にいる一人に剣を振らずにダッシュ力だけで剣の腹を騎士の手元に当てる。
その衝撃で剣を手放した隙を狙って右に抜け、思い切り回し蹴りを横っ腹に叩き込む。
全員まとめて吹っ飛ばすつもりだったけど、残った四人はなんとその一人を盾に踏ん張って堪えていた。
盾にされ両側から強烈な圧を食らった騎士は「グバッ」とフルフェイスの兜の内側に口から何かをぶち撒けて倒れる。
妙な連携をしてくるな。そういう動きができるのなら最初から距離をとっていれば良さそうなんだけど……
予定が狂って俺一人が部屋から飛び出し、他の五人はまだ部屋の中だ。しかも、『快眠』を複数人に連発したミユがもうあまり魔力が残っていないようだ。
「悪いな、シン。手加減してるとヤバそうだ。『氷結』!」
リョウが部屋の中から騎士に魔法を放つと、四人の動きが完全に止まる。よく見るとプレートアーマーに霜が付いている。
「へへ……うまく鎧だけ凍ってくれてるといいんだけどよ」
手加減しないと言いつつも殺さないようやってくれたみたいだ。凍傷くらいしてるだろうけど。
「助かった。行こう!」
「おう!」
拳を出し合って礼を言ってまた走り出す。今度は階段登りだ。
ぐるりと一周すると、大階段に出る。そこを登った正面が謁見の間だ。
その大扉の前にまた騎士が五人。
「邪魔よ! 『ストーム』!!」
その姿を見た瞬間に問答無用でミナが暴風を発生させ、その騎士たちを吹き飛ばす。
「おい、アストがいたらどうすんだ!」
「あっ……」
どうやらなにも考えていなかったらしい。ここまで出番がなかったからだろうか。
というのも、ミナの魔法は強すぎて正直今回は役に立たない。
今の魔法も騎士だけでなくその後ろの重厚な扉すら吹き飛ばしてしまった。
範囲と威力がある上にリョウのように加減ができないのは性格的なものもあるかもしれない……とは本人には言えない。
「いやぁ、間一髪でした」
冷や汗たっぷりのアストが横から姿を見せる。どうやら『身体強化』が切れたらしい。
「ご、ごめんなさい……」
さすがのミナも小さく肩を窄める。
「いえ、それより……いますよ。外からもわかりました」
そう言って視線を吹き飛んだ扉があった入り口のその先に向ける。
そこには高貴な服に身を包み、王冠を頭に乗せた俺の父親くらいの歳の男が玉座に鎮座していた。
お読みいただきありがとうございます。
今度こそラスボス戦です。




