第37話 告げられた事実
「やっぱりあったね」
「これがその魔道具なんだね」
南西の端、そこにも大きな岩の魔道具があった。ということはアストが向かった北にもあるんだろう。もうないかもしれないけど。
「それじゃ、リアン」
「うん」
『『ウォータ』』!
前回同様二人のウォータージェットで破壊する。
「んなっ!」
「凄いね。本当にそれ『ウォータ』かい?」
初めて見せたウォータージェットにソウは目を丸くし、先生も驚嘆する。
「ちょっと撃ち方を工夫してるけど『ウォータ』だよ」
今じゃ『ウォータ』はリアンの主戦力だ。威力もスピードも申し分ない。
この世界ではそういう用途には使われてないみたいだけど。
「それじゃ、アストを呼ぼうか」
納得してもらったところで切り替える。アストの説得だ。
テミス王女に会ってもらって援護してもらう。それと王都と魔王城どちらに向かうかの相談もしたい。
ガラス玉を取り出して砕く。
「おや? アスクがこんなところまで来たのかい?」
相変わらず唐突に現れる。
「いろいろあってね」
「い、いつのまに……」
話しかけられた先生よりソウの方が驚いていた。
「なるほど、目的のエルフには会えたんだ?」
そのソウを見たアストはすぐに理解したみたいだ。
「知り合いがエルフだったんだけどな。それよりまた嘘ついたな?」
「アハハ、バレちゃったか。アスクが喋ったんだろ?」
「知り合いが騙されてるのは忍びなくてね」
突っ込むとあっさり白状するだけマシか。
「ちなみに靄が見えてたのは本当なのか?」
「うん。しっかり見えてるよ」
ということはアレは『勇者』限定で見えてるわけじゃないのか。リョウには見えてなかったみたいだから天職は関係ないな。確認したいことはこれくらいか。
「それで、ここに呼んだ理由だけど――」
アストと別れてからの流れを大雑把に説明する。ここの魔道具の話をしたときに忘れていた北の端のことも確認したけど、やはり同じ物があったらしい。
「――というわけで、王女のクーデターに協力してくれないか?」
アストは俺の予想とかを興味深そうに聞いていたけど、王女の話を出したところで初めて表情が険しくなる。
「なるほど……いや、実はなかなか連絡が来ないからその街にさっきまでいたんだけどね……」
更にアストのトーンが下がる。
「なにかあったのか?」
「その王女が暗殺されたみたいなんだ。街は大騒ぎだったよ」
「は?」
え? 嘘だろ?
「嘘だよね……?」
「アスト、本当なのかい?」
「さすがに人の生き死にで嘘はつかないよ。忍び込んで確認したから間違いない」
それからアストと先生が状況確認していたみたいなんだけど、俺の耳には全く入ってこなかった。
「シン、シン!」
「あ……?」
気が付いたらリアンが地面に座り込んだ俺を揺すっていた。
「やっと反応した! もー! 心配したんだから!」
「悪い……」
「しっかりしな! この後どうするかも決まってないだろ?」
ソウも発破をかけてくれる。
ゆっくりと深呼吸して考える。正直なところ自分でもテミスの死にここまでショックを受けるとは思わなかった。
「街に戻ったらテミスに会えるかな?」
「どうだろうね。屋敷はもぬけの空だったし、まだ埋葬されてないかもしれない」
「もぬけの空?」
「言葉の通りさ。誰もいないんだ。憲兵も困惑していたよ」
「裏切り者が殺して逃げた?」
「というか、ほとんど味方がいなかったんじゃないかな? じゃなきゃ家人みんないなくなるのはおかしい」
「監視されてたってことか」
だったら俺があのとき連れ出していれば……。
「シン? ここに連れて来ないのにはみんな賛成したんだからね」
いや、それでも……主導権を握ったとか浮かれていたのは事実だし……。
「シン君。キミの判断は正しかった。彼女がここにいたら私は姿を見せなかっただろうね。起こってしまったことはもう取り返せないんだ。だから先を見よう」
「あんたは元々目的が違うだろ!」
ゴンッ
「シン君、一旦冷静になろうか」
先生に拳骨を食らっていた。
「先生……ごめん。アストも」
「シン君が王女様と波長が合ってたのは見たらわかる。だからショックなのもわかるけど、今は冷静に状況を見つめるんだ」
状況……。そうだ。
「テミスはどこで殺されたんだ? それにほかに犠牲者は?」
「やっぱり聞いてなかったんだね。いいかい? 王女様は私室で殺されていたらしい。タイミング的に僕たちが出てすぐあとだね。あとは家人が何人か遺体で見つかっている」
アストから聞いたらしい情報を先生が話してくれる。
「なら……近くには騎士団長がいたはず」
「そう。僕の予想も同じ」
そうか……。団長が死んでいないということはそういうことなんだな。
「魔王城に向かおう」
少し考え込んだ後、そう提案した。
「私は構わないけど、いいのかい?」
「仇を討ってやりたいとは思うけど、今行っても……魔王アポカリプスが操っているとしたらまた同じことが起きる」
次に頼るとしたらテミスの言っていた王の兄だろう。でも、この状況だとおそらくそちらも監視されてるはず。
ならやはり魔王アポカリプスを見つけることを優先した方がいい。
魔王城にいるかは別として、靄を集めているなにかはあるはず。それを処理できればなにかしらの動きをみせるかもしれない。
そう説明すると、アストも納得してくれた。
「ならまずはペリプル村に『転移』しようか。アスクとエルフの彼女はそこにいた方がよさそうだ」
そう言ったアストはちらっとリアンを見やる。
「私はシンと一緒に行くから」
もちろん置いていくつもりはない。リアンだって俺とレベル上げをしたしかなり上がっている。下級魔法しか使えない方の『魔道士』だけど、十分戦力になる。それに、なにかあったら俺が守る。
「ああ、一緒に行こう」
「ありがとう、シン君」
リアンに答えたのに何故かアストから礼を言われた。
「アストはエルフの扱いをずっと嘆いていたんだ。だから嬉しいんだよ」
不思議がっていると先生がその理由を教えてくれた。
「そうだったのか」
「アストもちゃんと言わないと伝わらないからね」
「そうだね。あのモンスターを倒してくれたことも感謝しているよ。本当に私にはどうにもならない相手だったんだ」
先生に促されて改めてアストから礼を言われた。そうか、光属性が弱点だったから俺には倒せたけど、『勇者』じゃないなら本当にアストには倒せなかったんだな。
「里にいたみんなもあれで救われたと思う。ありがとう」
「いいって、何度も言われると反応に困る」
「シン君もだいぶ立ち直ってきたみたいだし、アスト頼む」
「わかった、みんな私に触れてくれ」
アストに触れると『転移』で全員ペリプル村の前に移動した。何ヶ月もかかる道のりがあっという間だ。
「それじゃ、私は姿を隠しておくから準備ができたらここに戻ってきて。できれば今日中に森に入りたいかな」
アストは村には入らず待つらしい。でも、待つのに慣れてるアストが今日中に、なんて意外だな。
「なにか急ぐ理由があるのか?」
「夜になればわかるよ。リアンさんはわかってるかもね」
そう言われてリアンもハッとした顔になる。なんだろう?
「シン、早く行こ。みんなに挨拶するだけだろうし」
何かに気付いたらしいリアンも急かしてきた。
「わかったよ。行こう」
アストを残して村に入り、一通り挨拶まわりだけして戻ってきた。実際、旅の準備自体はいつもできてるから特にすることもなかった。ソウとシャーリーが作ってくれた料理を『収納』に詰め込んだくらいだ。
「来たね。それじゃあ向かおう」
元の場所でアストがまた姿を見せて、魔の森に向けて歩き出した。
お読みいただきありがとうございます。
あと・・・何話だろう。




