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第33話 会いに行く理由

 目指した場所、人間族の街に着いた。

 ちなみに街の名前は特にない。ただ、王族や貴族の間では第二の都と呼ばれているらしい。

 明確に王都より下という位置付けなのがこの世界らしさが出ている気がする。


 一晩宿に泊まることにして、大部屋に四人揃って入っている。


「先生がこの街に詳しくて助かるよ。俺とリアンだけだったら王女様の屋敷を探し回るとこだった」


「詳しいといっても、○○さんの家はここですよ、なんて案内できるのは王族と一部の貴族くらいだけどね。それに僕だってそれらの家に行くことすら初めてなんだ」


 先生は軽いノリで話してくれる。緊張してる俺含む三人をリラックスさせてくれてるみたいだ。


「私、作法とか全然わかんないけど大丈夫かなぁ?」


「それを言ったら異世界人の俺はどうなるんだ? さすがに口元隠すなんてできないだろうから喋るだけでバレるんだぞ?」


 ほんと、そこだけが心配だ。前は旅支度してから会ったから隠してたけど……どうしようか。


「リアンさんはともかく、シン君は隠さず堂々としていればいいと思うよ。問題はどう相手を動かすかだからね。指摘されるのも想定しておけばいい」


「そうさね。向こうの動きを読んで誘導するのさ」


 今回わざわざ向かう理由はエルフの掟に関することの撤回と流布るふだ。前者は俺のスキルでほぼ間違いなくいける。後者までどう辿り着くか。


 ソウに確認したところ、里を出たエルフやハーフエルフはそこそこいるらしい。特にハーフエルフ。奴隷となっている者が結構いるようでその解放に協力させたい、というのがソウやそれを聞いたリアンの意見。

 そして、その為には人間族の制度そのものに介入する必要があるというのが先生の意見だ。


 となると、王女と協力関係になりつつこちらが主導権を持った上で王女に王を脅かす存在になってもらう。

 障害となる王の武力には俺の力で対抗する、というところまで行きたい。


 つまり、王女に俺の力を示して主導権を認めさせることができればオーケー。



「あとは、ソウが偽物だとか言われたらどうしようか」


 先生には直前でソウを戻してもらう予定だ。ということは当然姿を変えられることはバレる。そこを疑われるのは当然だろう。


「なに、王族なら屋敷に『鑑定』持ちがいるはずさね。そいつに見てもらえばいい。それでも信じないならまたこの姿で『鑑定』すればわかるさ。ステータスは変わらないからね」


(「『鑑定』は対象を決めて発動することでステータスや情報を視認することができるスキルです」)


「なるほど、『鑑定』か。なら俺のステータスは『隠蔽』しておくか」


 こんな高レベルを会う前に見られたら面倒だしな。


「アンタどれだけスキル持ってるのさ」


 使う機会がなかったからこれも言ってなかったな。俺のスキルを一通り知っているソウが呆れる。


 ちなみに、この『隠蔽』。人には使えない。ステータスや物にだけだ。ただし、例えばタバコを隠してもニオイは隠せないし、煙も出る(これは俺が煙をタバコの一部と認識していないせいかもしれない)。正直使うことはないかとも思っていたスキルだ。


「一応これで最後だよ」


 『鑑定』のことを聞いて、もし俺が持ってたら他人のスキルを『複製』できたかもしれないと思ったのは秘密だ。


「そうかい」



「そろそろ寝ようか。屋敷に行くなら早い時間の方がいい。予定が埋まって会えません、っていうのが一番面倒だよ」


 先生の言う通りだろうな。というか王女なんだから毎日埋まってそうではあるけど。


「まぁ、あの王女様なら俺が来たとわかれば会ってくれそうな気はする」


「むー、騙されてたくせにー」


 リアンが頬を膨らませる。まだ騙されたと決まったわけじゃないけど、その可能性は高い。それでも、あの会話のやりとりはどこか楽しかったと感じたのも事実。

 向こうも同じように感じたんじゃないかと思うのは思い上がりだろうか。


 そんな俺にリアンは嫉妬してるみたいだ。この世界に来るまでは俺が散々幼なじみのリョウに嫉妬しまくってたけど、される側になるのは初めてかも。

 リアンの気持ちがわかったからにはこの話はここまでにしよう。


「ごめんごめん」


「今日も一緒に寝てくれたら許してあげる」


 むしろそうしないと寝れないだろ、とは言わない。


「わかってるよ」


「ワタシが言える立場じゃないんだけど、アンタらイチャつくのは終わってからにしてくれないかねぇ」


「悪い」


「ごめん、ソウ」


「ふっ」


 先生はいつも優しい顔をしてたけど、笑ったところは初めて見た。


「ふふ、いや、ごめんね。ソウもやっといつもの調子が出てきたなぁって」


 驚いた表情の俺たちに先生が弁明する。


「んもう、いいから寝るよ!」


 ソウは照れて布団に入っていった。


「それじゃあ、先生、リアンおやすみ」


「うん、おやすみ」


 リアンと俺は同じベッドへ、先生はまた別のベッドの布団に入った。







「テミス様に確認して来ますので、そのままお待ち下さい」


 屋敷の門衛に声を掛けると、しばらくして執事姿の壮年の男性がやってきた。怪訝な顔をされたので、王女に渡されていた短剣を見せると、目を丸くした後、慌てて屋敷の中に戻って行った。



「お会いになるそうです。準備ができるまでの待合室へご案内します」


 先程の執事と姿は同じで歳は近そうだけど、明らかに物腰の違う男性がやって来て屋敷の中に案内された。


 なんていうか、日本にいた時には見たことがない、めちゃくちゃ豪華な建物と内装だ。石造りで厳かな魔王城とはまるで違う、ゲームでしか見たことがない雰囲気に「まさにファンタジー!」と思わずテンションが高くなるのを辛うじて表に出さないように堪えた。



 しばらくして、案内してきた執事が呼びにきた。


「謁見の間にご案内します」


 その言葉に違和感を覚えた。いくら王族でも街の主でもないのに"謁見の間"。だいぶ虚栄心が強いというか、欲望が漏れているというか。


 その執事に付いていくと、これまた豪華な扉の前に着く。そこにまた別の執事がいて「ご苦労様」と声を掛けて案内してきた執事と入れ替わる。

 こちらの執事の方が立場が上らしい。所謂いわゆる執事長ってやつかな?


 その執事長は俺たち一人一人を見つめている。


(「おそらく『鑑定』されています」)


 そういうことか。ならもうここで明かしておこう。


「先生」


「うん」


 先生にはそれだけで伝わった。先生がソウをエルフの姿に戻すと、執事長も若干驚いたようだが、やはりソウのステータスを見たのだろう、大きな動揺は見せなかった。


 ちなみに、エルフ姿のソウは熊のゴツい身体と真逆の華奢な細い体つきだ。短髪の頭に熊のときの名残があるくらいでほぼ別人だ。かなり美人なのにおばさん口調なのが非常に残念なアンバランスさになっている。



 そして、扉が開かれる。



 俺たちが入室すると、これ見よがしな玉座に座り、ニヤついているように見えた王女の顔がだんだんと不快感に染まっていくのがわかった。


お読みいただきありがとうございます。


チートなスキルを期待させてしまっていたらすいません。

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