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第31話 再会したら様子が変だった

「おっ、シンじゃないか!」


「ええっと……宿屋の……?」


 ペリプル村に着いたら宿屋の主人が気付いて声を掛けてくれた。名前は……なんだっけ?


「ヨウだよ。それより、お前もソウの店行くだろ? 一緒に行こうぜ」


「お、おい」


 ガシッと肩を組まれ連行される。まだ行くとは言ってないんだけど。っていうか、また昼間から飲む気かこいつは。


「あっ、シン……!」


 リアンも仕方なく付いてくる。まぁ、診療所も近いからいいか。先にソウに挨拶しとこう。



「ソウ! シンが戻ってきたぞ!」


 酒場の扉を乱暴に開けてヨウが派手な登場を演出するが、メシ時を外してることもあって誰もいない。奥の方からカチャカチャと食器を洗う音が聞こえてくる。


「なんだい? 騒がしいね…………シン!」


 ヨウの声を聞いて出てきたソウが驚く。


「やぁ、ソウ。久しぶり」


「あ、ああ」


 ん? なんか思ってた反応と違うな。


「あれ? どうしたの?」


 リアンもすぐ気付いたみたいだ。


「いや、なんでもない。無事みたいで安心したよ」


「なんとかね。今日は先生に用があって来たんだけど、診療所にいるかな?」


「! そ、そうさね。いつもならいる時間だよ」


 やっぱり何か変だな。


「ちょっと込み入った話になりそうだから先に用を済ませてくるよ」


「待った。ワタシも行くよ」


 どうしようか。別にソウなら聞かせてもいいかな。


「うーん……」


「おそらくワタシも関係ある話のはずさね」


 どういうことだ?


「わかった」


「お、おう。俺はお邪魔みたいだな。出直すとするか。シン、また泊まってくれるんだろ? また()()()()部屋用意しとくからな!」


 思いがけない空気に戸惑いつつも、俺にウインクしながら親指を立てるヨウ。


「ああ、頼んだ」


「ん? なんか反応が変わったか? 前はあんなに嫌がってたのに」


 前はダブルベッドを用意されて怒ったっけな。まぁ、結果的にリアンと手を繋いで寝るのにはちょうどよかったんだけど。


「リアンとは正式に夫婦になったんだ」


「おー! そりゃめでてぇ! 今夜は宴だな! ソウ!」


「そうだね。シャーリー! ワタシはちょっと出てくるから準備頼んだよ!」


 ソウが奥にいるらしいシャーリーに声を張ると、奥からは「はーい!」と声が返ってきた。

 それにしてもソウの様子が変だ。そわそわしてるというか、前なら出ていくことより祝福してくれてたような気がする。



「なんかソウがヘン」


「だよな。俺もそう思う」


 コソコソとリアンと確認し合う。



「それじゃ、診療所に行こうか」


「ああ」


「それじゃ、シン、あとでな! リアンちゃんもおめでとう!」


「ありがとう!」


 酒場を出ると、ヨウはリアンにも祝いの言葉を掛けて帰っていった。





「先生、いるかい?」


「おや、珍しい患者……じゃないね。シン君、久しぶりだね」


「お久しぶりです、先生」


「やぁ、リアンさんも久しぶり。前はコウが世話になったね」


「そのコウはいないのか?」


「もちろん怪我が治ったんだから家に帰したよ。ここは宿屋じゃないんでね」


 うん、ちょうどいい。


「実は先生に相談があって来たんだ」


「僕にかい?」


「アスト、って知ってるかな? その人が先生に聞いてみろってさ」


「なるほど。彼に会ったのか。なら、聞こうか」


 友人というのは本当らしい。

 それから俺たちが王女に会ってからアストと出会うまでのこと、そして王女と交わした約束のことを伝えた。




「うん、ソウの狙い通りになったわけだけど、どうする?」


 え?


「どうするの前に謝らせてくれ、シン」


「え、いや、どういうことなんだ?」


「すまない。ワタシたちはエルフの里が襲われたことを知ってたんだ。それなのにお前に「エルフの里を探してる」と言わせたんだ」


「嘘……なんで?」


 リアンも意味がわからず困惑している。


「先生、もういいよ。戻しておくれ」


「ふぅ。いいんだね?」


 大きく息を吐いて先生が確認を入れる。


「ああ」


 その返事を受けて先生がソウの頭に手をかざすと、ソウの体が輝き、だんだんと熊獣人だったその姿が人間のものになっていく。ただし、耳はヒトのものより長い。


「えっ、エルフ!?」


「ソウがエルフだったのか!?」


 さすがにこれから誰か匿っていないかを聞こうと思ってたところだったからビックリした。



「ああ……浅ましい話さ。シンなら釣れた人間族に復讐してくれるかも、ってさ」


「そうだったのか……。でも、その姿を見せてくれたってことは今は違うんだろ?」


「シン君は相変わらず優しいね。いや、甘い……かな」


「シンだもん」


 先生にもリアンにも見透かされているみたいだ。


「まぁ、こうなったらソウに来てもらうんだけど、復讐なんてさせないからな」


「どうする……つもりだい?」


「簡単なことさ。約束を守らせる。ソウがいれば拒否はできない。王女様には俺のスキルが効いてるからな」


 当然ながらスキル『誓約』を掛けている。しかも俺が連れてこなかった場合に言及してないから俺にはリスクはない。

 問題はちゃんと王女様の前に立てるかどうかだな。


「スキル?」


「あれ? 言ってなかったっけ? 『誓約』したことを守らせるスキルだ。逆らおうとすると激痛に襲われるらしい」


「アンタもしかして……」


「ああ、あの貴族にも掛けてるぞ」


「道理であれから音沙汰ないわけだ」



「それで、どうやって王女様に会うかだけど……」


 思いついた作戦を伝えるとソウも先生も賛同してくれた。

 そして、その時までまた熊獣人の姿に戻すことにした。この村で変な騒ぎになっても面倒だしな。



「ワタシはシンに任せるよ。失敗しても恨んだりしない。それだけのことをしてしまったんだからね」


「そう思い詰めないでくれ。俺はそもそも怒ってない」


「ここはシン君の優しさに甘えておきなよ。ガチガチで行っても警戒されてしまうよ?」


「ああ、そうだね。すまない。そうさせてもらっていいかい?」


「もちろんだよ! ね、シン!」


「ああ!」



「それじゃあ、君たちは旅の疲れを癒しておいで」


 一通り話終わったところで先生が出口へ誘導する。


「そうだ、先生。今夜はシンたちのお祝いをするんだ。先生も来ておくれよ」


 すると、ソウが思い出したように先生を誘う。


「お祝い?」


「私、シンのお嫁さんになりました!」


「おお、それはおめでとう! もちろん参加させてもらうよ」


「詫びも込めて振舞わさせてもらうよ」


「気にしなくていいのに」


「いいじゃないかリアン。それで借りはなし、ってことで納得してくれたら俺も嬉しい」


「ふふ、シンは……卑怯だね」


「優しい、でしょ? ソウ」


「そうだね。ありがとう」



 その夜はヨウによって話が広まり、村を上げて盛大に祝ってもらった。


 そしてまた酔い潰れたリアンを連れて宿へ帰ることになるのだった。


お読みいただきありがとうございます。


結婚しても酔いつぶれた相手を襲ったりはしません。


今月もよろしくお願いします。

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