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第30話 一世一代の告白

 海岸線をいくら進んでも漁村はおろか人にすら出会わない。予想通り海産物は結構採れたりはしたんだけど。


 そんな感じでまたひと月。ようやく魔王城の真南あたりまで戻ってきた。つまりあのエルフの里を襲った獣人たちの村の南でもある。


「あっ! シン、人がいるよ!」


 そこでようやく人の姿を見つけた。リアンがテンションを上げて駆け寄っていく。


「おい、リアン! 待てって」


 慌てて俺も追いかける。そして――。



「お、お前らは!!」


 北の村で最初に声を掛けて来た狼獣人だった。


「そう警戒しないでくれよ。そっちがなにもしなければこっちも手は出さない」


「そうですよ! 人を化け物かなにかみたいに言わないで下さい!」


 リアンも言えるようになったなぁ。


「す、すまん」


 あの時の印象通り、やっぱり素直な人みたいだ。


「焼け跡を見てきたよ」


 話ができそうだと思って切り出す。


「そうか……」


「そうか、じゃないですよ! とんでもないモンスターが生まれちゃってたんですからね!」


「!? そんな……」


 リアンが追い討ちをかけると驚愕の表情に変わる。やはりなにか言われていたんだろう。


「まぁ、リアンはちょっと落ち着いて」


 難しいとは思うけど、一応宥める。


「むぅ……」


 言いたいことはわかる。少しだけ我慢しててくれ。


「誰からとは聞かないけど、なんて言われて里を襲ったんだ?」


「エルフは人を襲う準備をしているんだと……」


 なるほど? その矛盾に気付かないのか。


「よく考えてみろ。掟があるならそんなことしないだろ?」


「はっ……」


 この世界の住人のほとんどがある意味洗脳されている。簡単な矛盾に気付かないほど。


「そのエルフはどんな理由で人を襲うのか言っていたか?」


「掟破りと言われて扱いの悪いことに対しての復讐、と…………あっ」


 なぜそんな胡散臭い相手の言うことを聞いてしまうのか。よほど強いやつが来てたのか?

 でも、脅されたと言うには信じすぎな気がする。


「掟破りなら復讐する必要ないでしょ!」


「全くだ。自分たちでそんな掟はないって言ってるようなものじゃないか。ならどちらが悪いかすぐわかるだろう」


 やっぱり王族は真実を知っているな。その口封じをした? にしてもなぜこのタイミングで?

 時期的に俺たちが召喚されたころだよな。でも、人間族には接触していない。なにか知る手段があるのか、たまたまなのか……。



「すまん! すまなかった!」


 考え込んでいると、狼獣人が土下座を始めた。


「俺たちに謝られてもな」


「それでも、すまなかった!」


「そう思うなら、村でも今わかったこと、伝えてください」


「必ず!」


 リアンが俺の言いたいことを言ってくれた。ハーフエルフのリアンが言う方がクるものがあるだろう。




 それでその獣人とは別れたけど、何を考えていたんだっけ。


「シンはあの指示を出したのは王様だと思ったんだったよね?」


 そうそう、その辺のことを考えてたんだ。


「そうだな。掟がないことも知ってたんじゃないかとも思う」


「だよね。それでね、あの王女様も知ってたのかなぁって」


「! リアン、ナイスだ。全然そこまで考えてなかった」


「えへへ、どういたしまして」


 あの王女様がエルフの里が滅びてることを知っていてあの取り引きを持ち掛けたんだとしたら……。


「やられたな、くそっ」


「やっぱり人間族なんて信用できないね」


 確かにそうなんだけど……。


「リアン。そういう考えはやめよう」


「えっ……」


「例えば……シャーリー、覚えてるか? 彼女は人間族だけど彼女も信用できないか?」


「ううん……。でも、あの人は騙されてたから……!」


「だろ? 確かに王族は現状信用できない。でも、人間族って一括りにしない方がいいと思う」


「そうだね……うん」


「アストも言ってただろう? 昔はハーフエルフもたくさんいたって。意識さえ変わればちゃんと共存できるんだ」


「でも……それって、難しいよ?」



 ふぅーっと深呼吸して決意を固める。



 言おう。



「だから俺はこの世界でみんなの意識を変えれるようにしていこうと思ってる。地球には戻らずに、ね」


「えっ……」


「どこに行っても嫌な思いをしないように……その為には時間もかかる。それを……リアンと一緒にやっていけたらって思う」


「シン……それって……」


「リアン、俺と夫婦になってくれ……!」


 心臓がバクバクいってる。俺、ちゃんと言えてるかな。ちゃんと伝わってるといいけど……。


 返事を待つ時間が果てしなく感じる。



「はいっ……!」



 リアンが感情を爆発させて返事してくれた。

 やばい。めちゃくちゃ嬉しい。


「リアン!」


「シン!」


 抱き合ってお互いを実感する。


「苦労はかけると思うけど……離れないでくれよ?」


「うん。シンも離さないでね?」


「ああ!」


 正直、二人とも他人には見せちゃいけない顔をしてる。それくらい嬉しかったし、リアンもそうだと思う。

 出会ってまだ一年も経ってないけど、もう隣にリアンがいないのは考えられない。


 でも、今言った通り、苦労は絶えないだろう。それでも、リアンと一緒なら乗り越えていける。


「シン……私、今幸せだよ。お父さんとお母さんが死んじゃって……あの時シンに出会えて本当によかった。シンがいたから今日まで生きてこれた。そしてこれからも――ずっと……」



「俺もさ。改めてよろしくな、リアン」


「よろしく、旦那様」


「はは、今まで通りシンって呼んでくれ。さすがにこそばゆいよ」


「ははっ、ごめんごめん」



 そして、新たな気持ちで旅を再開した。



 だけど、やはりエルフを見つけることのないままペリプル村に辿り着くことになった。


お読みいただきありがとうございます。


タイミング的にはここしかないかな、と。

これ以上伸ばすと本当に死亡フラグになってしまいそうなので。

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