第28話 『勇者』にタイプがあるらしい
アストと別れる直前――。
「そういえば、俺たちに姿を見せた理由を聞いてなかったな」
ふと思い出した。経緯とかは聞いたけど本題を聞いてなかった。
「君たち、というかシン君に、だね。人間族に知られずにレベル5を超えた『勇者』は久しぶりだから」
あ、使ったスキルとか魔法でわかるのか。
「そうなのか? いや、聞く限りそうか。それで、俺は計算に入れられそうなのか?」
「ちなみにシン君の今のレベルは?」
「60を超えたところだな」
獣人たちと戦ったり昨日の怪物との戦闘でまた上がっていた。
「!? なるほど。君はステータス型の力の『勇者』なんだね」
俺のレベルが予想以上だったらしく、出会って初めて動揺する仕草を見せた。
「ステータス型? 『勇者』にも種類があるのか?」
「例えば同じ力の『勇者』でもスキル型――多様なスキルを覚えるタイプがいる」
確かに俺はあんまりスキルは覚えてないな。
「ってことはアストはステータス型の魔法の『勇者』か?」
「……よく、わかったね?」
アストから笑みが消える。
「カマをかけてみただけさ」
「それは一本取られたね」
予想はしたけど、本当だ。その俺の軽い言葉にアストの警戒も解かれる。
ナビでもそうそう知らない『勇者』のことを戦闘を見ただけで見抜けるとしたら『勇者』じゃないかと思ったんだ。
「全く、なにが君にしか倒せない、だよ。自分も同じ魔法使えたんだろ?」
「いやいや、アレに光属性が効くって私はわからなかったと思うよ。『ライトニング』にしたって、あんな使い方する『勇者』は初めて見たよ」
ああ、そういうことか。まぁ、ゲームのイメージ通りの相性で助かっただけなんだけど。『ライトニング』を光線にするのもこちらにはない発想らしい。
「そういうことにしておくよ」
「どちらにせよ君と私は相性が良さそうだ。それで、もし先にシン君が例の魔王――アポカリプスを……見つけたらコレで教えてほしい」
ガラス玉のようなものを受け取る。
「これは?」
「これは二つで一対になっているもので、私が作った。片方が割れるともう片方にその場所を通知する機能がある。もちろん私が見つけたらこちらを割って教えるよ」
そう言ってもう一つの玉を見せる。
「わかった」
「できれば会う前に合流したい。確証がなくても手掛かりが見つかったら教えてくれると嬉しいかな。違ったらまた次のを作ればいいんだから」
「そういうことなら勿体ぶらずに使おう。でもそんなに簡単に作れるのか?」
「ちょっと準備が必要だけどね」
見せておいても平気だろう。これで裏切られたらその時はその時だ。
「なら、ちょっとそっちのも貸してくれ」
アストのガラス玉も受け取り『複製』する。そしてオリジナルを『収納』する。
「これでいくらでも使える」
「『複製』かい? 珍しいスキルを持ってるんだね」
長く生きているだけあって『複製』のことも知ってたみたいだ。
「信用した相手にしか見せてないからな?」
一応釘を刺しておこう。
「わかってる。そもそも君たち以外、魔王に会うまで誰にも姿を見せるつもりもないから、信じて欲しい」
「ああ、それじゃあ」
「また会いましょう。シン君、リアンさんも」
「はい!」
別れの挨拶をした途端、アストの存在を感じられなくなった。
「行こうか、リアン」
「うん」
そこから東に少し進み――。
「イチ、アストの匂いは覚えたか?」
「ウォン!」
影から出てきて元気よく答える。
「別れてすぐも匂いはわかった?」
リアンも俺が考えていることを理解している。
「ウォン!」
これも肯定の返事だな。つまり俺たちが気配を感じなくてもイチには匂いがわかるってことだ。
「今近くにいるか?」
「ウォウウォウ」
首を横に振る。もし意識すれば匂いも消せたとしても、イチのことは全く見せてないから警戒してないはずだ。
ならば、今は近くにはいない。やはり信用してよさそうだな。
もし付いてきてたらやるつもりだったけど、そうならなくて済んでよかった。
「もし近くに来たら教えてくれ」
「ウォン!」
いい返事だ。頭を撫でていると、リアンも参加してモフり合いになる。
「あー癒されるぅー」
「ほんとにねー」
こうなると完全に休憩モードだ。歩みを止めてイチの腹に二人背中を預ける。
「シンはあの魔王……アポカリプス? のことどう思った?」
「まぁ、全ての元凶っぽいよな。ただ倒して終わりとはいかないだろうけど」
「そうだよね。モンスター化の原因の靄もすぐ消えるかはわからないし、モンスターも元に戻るかどうか……」
「それだけじゃない。ヒトの認識も変えられてるらしいんだ。それを戻すのは簡単じゃない。だからあちこち回るのは続けないといけないだろうな」
「あ、そっか。そうだよね」
そう。だから靄の方が解決したとしても俺は地球に戻らないつもりだ。そしてもうそのままリアンと……。いや、それはまだ先の話だ。リアンにするのはその時になってからにしよう。
……なんか死亡フラグっぽい。
「まずは生き残りのエルフ探しからだ。王女様に近付いておくのは市民の考えを変えるのに大事な要素だからな」
「うん!」
それから東に海を目指して進んだけど、結局海に着くまでエルフどころか人が住むような場所すらなかった。
「収穫なしだね……」
「まぁ、そうだろうな」
「えっ、わかってたの?」
わかりやすい住居があるとは思ってない。
「リアンだったらあの里から出たらどこに逃げる? あ、魔の森っていうのは普通ないからな?」
危険から逃げるのに危険に向かうことはないだろう。よっぽど冷静なやつならあるかもしれないけど、いきなり襲撃されてそんな判断ができるやつがいたとは考えにくい。
「う、私はそこしかなかったんだもん!」
「だからリアンがどうとかは言ってないだろ?」
まぁ、ちょっとしたイタズラ心が働いてしまったんだ。もー! と言いながら頬を膨らませるリアンもいいな。
「うーん……私なら……」
気を取り直してリアンが思索する。
「あっ! 食べ物あるところに行く!」
「だよな? でも里の周りは草原だ。たまに動物はいるかもしれないけど、食いつなぐには少ないだろ?」
「そうか! だから海なんだね!」
海なら魚に限らず海産物は多い……と思う。偉そうに言ってるけど、俺もただの予想だ。
「そういうこと。漁村でもあれば尚よし、だな。ここからは右回りに海岸線を行こう」
「わかった!」
そして、三角形に近い形をしたこの大陸の南東の頂点にあたる場所で、俺たちはとある謎の岩を発見した。
お読みいただきありがとうございます。
これでラスボス戦主要メンツが出揃いました。
それ自体はまだ先なのでもしかしたら増えるかもしれません。




