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第23話 エルフの里探し

「シン、王女様に気に入られたからってニヤつきすぎ!」


「え? そう?」


 夜に追い出されて表情なんてほとんど見えないはずなのにそう言われるってことは声とかも浮ついてたんだろうな。


 それはともかく、今までは避けてきた夜の移動だ。棒にボロくなった服を巻きつけただけの簡単な松明を頼りに歩いているけど、これじゃ長持ちしないことくらいはわかる。


 『ファイア』でもいいけど魔力消費があるし、当然光属性の『ライトニング』は論外だ。そもそも俺が魔法を使うこと自体見られたくないし、そうなるとリアン頼りになってしまうけど、リアンはまだ『ファイア』の火力調節は上手くない。『ウォータ』と違って魔力を調整しないといけないからだ。


 とはいえ、野営をするなら村の近くはできるだけ避けたい。防犯的な意味でも、俺の秘密を隠す意味でも。


 そうそう、隠すといえばエルフの里。



 なぁ、ナビ。エルフの里って本当に見つかってないのか? 正直この程度の広さの大陸で見つからないんなら何かしらの方法で隠されてると思うんだけど。


(「確信がないので申し上げにくいのですが、認識阻害系の魔法のような何かが使われている可能性はあります」)


 魔法のような何か、ってことは魔法じゃないのか。


(「魔法であれば探知できるはずですので」)


 あ。


「そういえば、リアンって魔の森に入ったときはモンスターに見つからないでいられたんだよな?」


「え? うん。そうだよ」


「それって何かするのか?」


「うーん……笑わないでよ?」


「ん? もちろん」


「あのね、森の中だけみたいなんだけど、「隠れよう!」って思うと見つからなくなるの」


「それだけ?」


「うん。おかしい、よね?」


「そんなことないさ。息を止めてる間だけ見つからない、とか言われたら笑ったかもしれないけど」


「ふふっ、そんなのすぐ見つかっちゃうじゃん」



 イメージ的にはスキルの発動に近いかもしれない。スキルは魔法と違って声に出さなくても使えるし。もしかしたらエルフの種族固有の能力なのかな?


(「そういったスキル以外の能力というのは認められていませんが、可能性はあります。そう考えると辻褄つじつまの合うことがあります」)


 例えば?


(「魔族による魔道具の作成です。魔法をモノに込めるというのは魔族のみの技術ですので」)


 ああ、確かにあの結界の魔道具はプレベールの魔法が込められているな。

 ちなみにだけど、魔道具で発生した効果ってナビは探知できる?


(「そうですね、発動自体は察知可能ですが、発動中のものに関しては不可能です。例えば発動している結界に入ってもそれを察知することはできません。それは魔法でも同じです」)


 なるほど。もし仮に今ここに何かの結界が張られているとしてもナビにはわからないってことでいい?


(「はい、そういうことになります」)



「エルフが常時その状態を保てるとしたら見つけるのはかなり大変そうだな」


「そうだね。もしかしたら私にはわかるかもしれないけど」


「頼りにしてる」


「あっ、あんまり期待しないで! 試したことないんだから」


「ああ、程々に期待しとく。ちょうど松明も限界っぽいし、この辺で休もう」


「うん。お腹空いちゃった」


 起きてる間はだいぶ安定してきたな。前の村の時は追い出されてしばらくヘコんでたけど、今回はそこまでじゃなさそうだ。





 テミス王女に宿の部屋を奪われてからまたひと月、俺たちは魔の森の南側を東に進んできた。

 エルフの里を探すのなら南東側が可能性が高いだろうという予想から人間族の街とは逆方向に向かっている。


 現在地はナビによると魔王城のほぼ真南あたり。そこにまた獣人の村が見え始めていた。



「おいおいおい、絶対なにかあるぞここ」


「え、なに!? どうしたの!?」


「前に黒いモヤが見えるって話したの覚えてるか?」


「うん、覚えてる。恨みとか込めたとき出るんだったよね?」


「確証はないけど、それだ。それがあの村中覆ってる」


「ええっ!? そんなに!?」


「いや、覆ってるっていうのは違うな……流れてる……森の方?」


 その方向を指差す。


(「その方角には魔王城があります」)


 ……となると、一概に森とは言えないか。


「ねぇ、シン。私ものすごく嫌な予感がするんだけど」


「ああ。もしかしたらあの靄が魔の森の――」


「違うの! 嫌っ!!」


 俺の言葉を遮ってリアンが急に俺の腕を掴んで叫ぶ。その手、いや、身体が震えている。


「おい、大丈夫か!?」


「ごめん、ごめん」


「落ち着け、どうしたんだ?」


 震えながらただ謝るリアンに困惑してしまう。


「ごめん、ちょっと無理そ……――っ」


「リアンっ!」


 突然腕を掴んでいた手から力が抜け、その場に倒れるリアンを辛うじて抱きとめる。


 一体どうしたんだ……?


 考えても仕方がない。まずは安全な場所でリアンを休ませることにしよう。




「……んっ」


「気が付いたか?」


 村から離れ、周りになにもないところまで移動し、野営の準備をしていると、リアンが目を覚ました。

 既に夜になってしまったけど、ときどきうなされるリアンが落ち着くまで手を握っていたりしたからあまり準備らしい準備はできなかった。

 テントを出して焚火を起こしただけだ。あと念のために結界を張っている。


「うん……」


 目を覚ましたけど表情は暗いままだ。


「なにが起きたのか話せそうか? 無理なら今日はこのまま休め」


「大丈夫、さっきよりは落ち着いたから。でも……シン、手を握っててほしいの」


「わかった」


 リアンの隣に座って手を取る。


「ありがとう。…………ふぅ」


 一言お礼を言って、深呼吸するリアン。そして、決心したように「うん」と小さく頷いて、口を開いた。


「お父さんが死んだときのことを思い出した……ううん、()()()()ってことを思い出したの」

お読みいただきありがとうございます。


次回は靄に覆われた村の話です。長さ次第でエルフの里まで進めます。

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