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第14話 騎士と戦うことにした

「ふぇっ!?」


 翌朝、リアンの叫びに起こされた。

 どうやら酔いは完全に覚めてるみたいだな。


「ん? ああ、リアン起きたのか」


「な、な、な、一緒に寝たのを覚えてないなんて……」


「酔い潰れてたからな。安心してくれ。何もしてない」


 一緒に寝るのも迷ったくらいだ。


「よかったぁ。はじめてはちゃんと覚えていたいもん」


 うん、してもよかったとか言い出さなくて安心した。



「平気か? 昨日は相当飲んだだろ?」


「ちょっと頭痛いかな? でも大丈夫だよ」


「それでも念のため、『治療』」


 二日酔いは結構しんどいしな。

 俺は毒が効かないのと同じなのか全然平気だ。昨日も全く酔わなかった。


「ありがと。楽になったよ。自分でも出来たけどね」


「これくらいさせてくれ」


「ふふっ」


 さて、リアンはどこまで覚えてるかな。

 ソウと話してたときには潰れてたよな。


「とりあえず、昨日の酒場に行くぞ。朝飯も出してくれるってさ」


「ホント!? そんなにしてもらっていいのかな?」


「もちろんタダじゃないぞ。リアンにも働いてもらうからな」


「え? 私が寝てる間になにがあったの?」


「まぁ、ちょっとした人助けだ。ケガ人がいるらしいからリアンが『ヒール』してやってくれ」


「あ、シンが使えるってことは言ってないんだね」


「それも念のためな」


「うん、いいと思う。でもいざってときはやるんでしょ?」


「まぁ、危なくなったらな。それにここの村の人は良い人たちばかりみたいだし、『勇者』だって言ってもいいかもしれない」


 人間族でも珍しい魔力持ちってことは言ってあるしな。

 ソウは勘も良さそうだし、気付いてるかもしれないけど。


「うん、久しぶりに昨日は楽しめたよ」


「だろうな。昨日は手を繋がなくても眠れてたしな」


 リアンは森の中で眠るときは必ず手を繋いでいた。

 そうしないと両親を失ったことを思い出してうなされていたからだ。

 それを見てしまってからは俺からも出来る限り手を繋いでおくようになった。


「でも、また次寝るときは、お願い、ね?」


「わかってる。心配するな」


 まだ両親を失って日が浅い。完全に立ち直るにはまだ時間がかかるだろう。

 昨夜みたいに大丈夫そうでも出来るだけ一緒に寝ておこうと思ってる。


「ありがと」


「さぁ、行こう」


「うん」


 軽く身支度して宿を出る。

 出掛けに宿屋の主人のヨウにも会って挨拶したら、まだ泊まるなら夕方までに来てくれとのことだった。

 その時はまた肉でも振る舞おう。



「やぁ、いらっしゃい。簡単で悪いけど、用意できてるよ」


 酒場に着くとすぐにソウが朝食を出してくれた。


「それで、昨日言ってた話だけど」


「コウちゃんね。診療所にいるからこの後行ってやっておくれ。何しろこの村で一番強いのはあの子なんだ。あの子にあれだけケガを負わせる相手には誰も敵わないだろうしね」


「一体なにがあったんだ?」


 昨日はその「コウ」の治療を頼まれただけで詳しくは聞いてない。


「昨日の昼間に人間族の貴族が騎士を連れてやってきたんだよ。それで代表一人と騎士が一騎討ちして負けたら村ごと従属しろ、なんて言い出してね」


「なんだそりゃ。いきなり来たのか?」


「ああ。それにこっちの話には聞く耳持たなくてね。コウちゃんが買って出てくれて一騎討ちには勝てたんだけど……」


「そのコウって子も大ケガしてしまった、と」


「また近いうちにやってくるだろう。負けたままならアイツはもう終わりだからね」


「なるほどな。だからケガを治して対抗できるようにしておきたいってことなんだな?」


「そういうことさ。頼んでも、いいんだね?」


「いや、話を聞いて気が変わった」


「なんだって!?」


「シン!?」


「ああ、勘違いしないで。治療はする。だけどコウじゃ、もっと強いやつを連れて来られたらもう太刀打ちできないだろう?」


 というか、間違いなくより強いのを連れてくるだろう。


「あんたが代わりにやるっていうのかい?」


「鋭いな。まぁ、任せてくれ」


「いや! これはワタシらの問題だ! 通りすがりのあんたに頼るわけには――」


「なら、今からここの住人になろう」


「全く……止めてもムダなんだね?」


 悪いけど見捨てたりとかは論外だ。なら俺がやるのが一番確実だ。


 そんな俺にソウが呆れた顔をする。


「そうだな。だから周りの人にもそう言っておいてくれないか?」


「はぁ。わかったよ。けど、負けたってあんたは逃げるんだよ。そこまで背負わせたくはないし、ワタシらにも意地ってもんがある」


「わかった。まぁ、負けないから安心してくれ」


「大した自信だね。期待しとくよ」


 俺の強気に多少は不安が消えたみたいだ。




「それじゃ、診療所行く?」


「ああ。場所はどこなんだ?」


「ここを出て右に三軒隣さ」


「わかった。あ、コウってのは……どういうやつだ?」


 そういえば名前しか聞いてなかった。


「豹の獣人だよ。診療所には昨日のうちに話を通してあるから行けば案内してくれるよ」


「夜にわざわざ……助かる」


「助かるのはこっちだよ。じゃあ、頼んだよ」


「ああ。リアン、行こう」


「うん! ソウさん、ごちそうさま!」


 リアンがソウに手を振りながら礼を言うと、俺たちは診療所に向かった。


お読みいただきありがとうございます。


次回は初対人戦です。

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