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第10話 ノーブラは凶器

「そういや、リアンは『浄化』のことどこで知ったんだ?」


 襲ってきた『勇者』が使ったとは思えない。


「父に言われてたんです。『勇者』は『浄化』した恩を着せて何してくるかわからないから気をつけろって」


 まぁ、俺が何か言えることじゃないな。でも……


「それって単に魔力枯渇のせいじゃないか?」


 『浄化』は結構魔力を使うからな。


「シンさんの様子を見て私もそう思いました。でも、シンさんはむしろ私を見ないようにしてくれたりしたから……」


 そういや、プレベールは女に慣れておけって言ってたな。

 確かにあそこで襲ってたら信用もクソもなかった。

 あれはあんまり慣れてないおかげだったけど、童貞のままだったらそれはそれでヤバかったかも。


 女にカモられないようにって話だったけど、こっちから手を出すことでも状況が悪くなることもあるよな。

 知ってるのと知らないのとではやっぱり誘惑度も違う。


 あのときはリアンを襲いたいとかは思わずに済んだもんな。


「いや、まぁ、ごめん」


 とはいえ、見てしまった上に口でして貰ってるしなぁ。


「いえ、いいんです。こんな小さな胸なんて……お母さんあんなにおっきかったのになぁ」


「いや、今は上の下着を着けてないんだから触るのやめようか。浮き出てるのが見えちゃうから!」


「あっ! もう、シンさんのエッチ!」


「あーエッチですよー。そのくらいの大きさが好きな変態ですよー」


「えっーーもう! どうせおっきいのが好きなんでしょ!?」


「そんなこと言ってもまだ成長するんじゃないの?」


 まだまだこれからだろうに。


「シンさん……私のこと何歳に見えてます?」


「16くらい?」


「あっ、やっぱり! これでももう20です! だからもう大きくならないんですー」


 マジか。でも、そうだよな。

 今更だけどそんな年下と思ってた相手に口でさせるとか……本当に魔力枯渇には気を付けよう。


「落ち込まれても困るから言うけど、俺は大きい方がいいなんて言ってないからな」


「え? あっ! もー!」


 ポカポカと殴ってくる。こんな甘々体験を地球でしたかった。



「さ、それよりレベル上げやるぞ」


「その前に、シンさんは何歳なのか聞いてもいいですか?」


「俺は22だよ。もっと老けて見えてたか?」


「ううん、時々口調が強かったり優しかったりするからよくわからなくて」


「それなー……」


 たぶん『勇者』になったせいなんだろうけど、正直自分でもどっちが素なのかわからなくなってきた。

 というか、性格にも影響するあたりが早く地球に帰りたい理由の一つでもある。それでこの世界が怖いと思ってたのが、怖いと思わなくなってきたんだよな。


 地球の俺とここで『勇者』になった俺の両方が別々にいるような一緒にいるような、とリアンにも説明してみたけど、雰囲気は伝わったみたいだ。




「そういえば、シンさんが私を助けてくれたときに使った魔法って、『ウォータ』でしたよね?」


 リアンは『魔道士』だから使えるんだったな。

 でも、ウォータージェットみたいな撃ち方はわからないんだな。


「ああ。水を超圧縮して噴射するんだ」


「圧縮?」


 さて、どう説明しようか。たぶん物理的な説明しても通じないよな。


 そうだ。


 風呂桶を取り出す。『収納』は服を出したときに見せてるから大丈夫だよな?


 ちなみに冷め切ってるけど、水は入れたままだ。

 水を出す魔力と回数だと一回『浄化』する方が楽だったからな。


 まぁ、今回は風呂に入るわけじゃないから『浄化』はしない。



「例えば、この水をこう手の中に入れるだろ?」


 手を組んで掌の間に水を貯める。


「で、この手を合わせるように力を入れるとーー」


 小指の付け根あたりの隙間から水がピュッと飛び出る。飛距離は1メートルってところか。


「はい、それはわかります」


「じゃあ、この隙間を出来る限り狭くなるようにして、さっきより力を入れると?」


「あっ、勢いよく出ます!」


 リアンも実践して理解したみたいだ。


 一瞬リアンに向けて打ってキャッキャウフフしたいとか思ったのは秘密だ。


「えいっ!」


 パシャン。


 俺が自重したのに何してんのこの子は!


「えへへ」


 あ、ダメだ可愛い。


「やったな! お返しっ!」


「きゃっ」



 いや、ほんとすいません、調子乗りました。

 なにがって? ほら、濡れちゃまずかったんだよ。今は特に。



「乾いたら『ウォータ』で実践しようか」


「うん」


 『複製』はまだ秘密だ。だから着ていた上着を脱いで乾かしている。


「でも、シンさんには一度見られてますし、別に誰かいるわけじゃないですからこのままやってもいいですよ?」


 またそういうことを言う。


「俺がムラムラしちゃったらどうするんだ?助けた恩を体で返せ、とか言うかもしれないぞ?」


「ふふっ。いいですよ?」


 はぁ。


「そうじゃなくて、もっと男を警戒しろって話」


「むー。私がシンさん以外にそんなことするわけないじゃないですかぁ」


 いかん。この子と話してるとホントに襲ってしまいそうだ。

 ナビって俺の魔力残量把握することできる?


(「はい。可能です」)


 もうリアンの前で魔力枯渇するのは危険だ。だから、そうなる前に教えてくれ。


(「してあげてもいいと思いますが……かしこまりました」)


 なんだ? ナビはやたらリアン寄りだな。

 ナビってホントにただのスキルなんだよな? 誰かの意思じゃないんだよな?


(「そうです」)


 なら事実から最適解を出すっていうんだからそういうことなんだろうな。

 だからといってコレは大事なことだろ。プレベールの時とは違うしナビの意見だからってするのも違うと思う。


(「ヘタレですね」)


 違う。もうそれに関しては黙っててくれ。



「シンさん?」


「あ、ああ、ごめん。リアンの気持ちは嬉しいけど、それもまだ待ってくれ。俺なりのケジメみたいなものなんだ」


「わかった!」


「そろそろ乾いたんじゃないか?」


「うん、着てくるね」


「話し方はそっちの方が好きだな」


「あっ……ズルいよ、その不意打ち」


「悪い悪い。でも、それがいいよ。名前もシンって呼び捨てでいい」


「それは……ううん。わかった、シン!」


「よし、服着たら実践だ。上手くいったらモンスターでもやるぞ」


「おっけー!」


 リアンは完璧に理解できたみたいで俺のそれと変わらない威力の『ウォータ』が撃てるようになった。


 それを使って俺一人のときと同じようにイチに先制してもらってリアンもモンスターを倒すことができた。


 それにこの世界の経験値システムはよくわからないけど、見ているだけでもレベルが上がることも確認できた。


 戦闘を見る、という経験になってるんだと思うけど、同時に別々のモンスターと戦ったらどうなるんだ?


(「その場合はその戦った経験のみが入ることになります。リアンさんを気にしながら戦う等別の経験をすればまた話は異なりますが」)


 なるほどな。

 ということは同じ戦法でずっと戦うのはよくないのか?


(「同じ相手に繰り返さなければ大丈夫です。むしろ今の戦い方は安全ですので続けていくことを推奨します」)


 うん。



「よし、そろそろメシにしよう」


「はーい」


 一旦休んでまたレベル上げだ。

 リアンがいるなら俺は近接戦闘もまたやってみよう。


 イチ抜きでもナビに安全と言われる戦い方ができるのが理想だな。


 まぁ、これは対人戦の想定だけど。


 そしてその日の終わりには俺のレベルは30に迫っていた。


お読みいただきありがとうございます。


次回は森の外の世界について触れる予定です。

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