9.カマキリ戦士マンティス
男性と別れ、レストランで食事中の聡美と啓介。
聡美のお冷やが無くなったタイミングで、アルバイトのウェイトレスがやってくる。
「お冷や追加しますね」
ウェイトレスの名札に、片桐 静香と書かれている。
(この人、人間か?)
聡美は静香を見て思った。
「お客様、私の顔になにか?」
視線に気づいたのか、静香が聡美に訊ねた。
「すみません。あまりにも綺麗だったもんでつい」
「聡美さん、君は女もいけるのかい?」
「いけるよ?」
二人のやりとりの傍で静香が苦笑いする。
「聡美さん、バイだったんだね……」
「あ、店員さん、もういいですよ」
「あ、すみません。仕事に戻ります」
静香は持ち場に戻った。
「あの人、人間じゃないね」
「え?」
「何者かはわからないけど、それは確かだと思うわ。たぶん、こちら側」
食べ終える聡美。
「それにしても、聡美さんって大食いなんだね」
「そうお?」
「だってご飯大盛りだし」
「普通でしょ」
「それが聡美さんの普通なんだね」
啓介も食べ終え、二人で精算してレストランを出た。
帰路に就く二人。
背後から何者かがつけてくる。
「後ろを見ず走って!」
「え?」
聡美は啓介の手を掴み、走り出した。
背後の何者かも駆けった。
聡美と啓介は路地を曲がり、身を隠した。
何者かも曲がるが、二人をロストして驚いた。
聡美の目に、何者かの顔が映る。
小声で啓介に言う聡美。
「動かないでね」
聡美は不審な人物の前に躍り出た。
「さっきの店の店員さんだね、片桐 静香さん」
「私を人間じゃないと知るあなたは何者? まさかバルバロッサ?」
「バルバロッサ? なにそれ?」
「地球侵略を目論む悪の組織よ」
「私はACRのメンバーよ。対宇宙人組織の戦闘員さ」
静香はカマキリのような異形に姿を変えた。
「私はワーム人。あなたの言う通り宇宙人よ」
人間体に戻る異形。
「ワーム人としての名はマンティス。地球を侵略から守るために活動してるわ。あなたは?」
「久木 聡美よ」
「久木さんね。同じ目的を持つ者同士、仲良くしようね」
握手を求める静香。
聡美は静香の手を取って握った。
「それじゃ、私たち帰るわね。何かあったら協力するわ」
聡美はQRコードを静香に渡すと、啓介と家に向かって歩き出した。
「彼女なんだったの?」
「正義の味方だって」
「君は彼女のこと人間じゃないって言ってたけど……」
「ワーム人って異星人らしいわ。カマキリに変身したわね」
「変身?」
「うん。マンティスっていう名前らしいわ」
「そうなんだ」
「悪い人ではないから安心していいわよ」
「そうか」
二人は家に着き。中に入った。
「お風呂、先に入る?」
「いや、君が先でいいよ」
「じゃ、そうするね」
聡美は風呂用具を用意してバスルームに入っていくのだった。