7.私も入れて
聡美は啓介の姉が使っていた部屋で目を覚ました。
「寝ちゃったのか」
聡美はベッドから起き上がる。
「ん?」
部屋の外から美味しそうな香がする。
釣られて側まで行くと、啓介が料理をしていた。
「啓介くん、料理できるの?」
「あ、起きたんだ。できるよ。もうできるから座ってて」
聡美は食卓に着いた。
啓介が出来上がった食事を運んだ。
「晩ご飯。食べてみて」
「美味しそう」
いただきます、と聡美は啓介手製の料理を堪能する。
「美味しい!」
「よかった」
聡美は料理をパクパクと食べ、あっという間に平らげた。
「啓介くん、料理の才能あるよ」
「そうかな。僕、料理人になるのが夢なんだ」
「いいんじゃない? 応援するよ」
「ありがとう」
席を立ち、食器を流しに運ぶ聡美。
「そんな、いいのに」
「あれ? そういえば、ご両親は?」
「こっちの高校に通うから一人暮らしなんだ」
「ああ、そうなんだ」
部屋に戻るね、と自室に戻る聡美。
「長官、聞いてますか?」
『なんだ?』
「こっちでも横澤に聞いたが、そっちで弘樹について何かわかったことは?」
『まだ調査中だ。何かわかったら連絡する。それより、今こっちに来れるか?』
聡美は急遽ACRに向かった。
「なにか御用です?」
「これをスーツにつけようと思ってな」
「なんですか?」
何かのパーツのようなものを長官が見せる。
「スーツ脱着装置だ。君の脳波でスーツをしまったり装着したりできるようにするものだ。これをつければ、いつどこにいても自由に姿を変えられる」
「ありがとう」
聡美はパーツを受け取った。
……。
…………。
………………。
秀一は学校に登校した。
「秀一? 久しぶりじゃん」
と、洋子が声をかけてきた。
「おっす、久しぶり」
「あんたがいない間に編入生が二人入ったのよ」
「久木 聡美と吉崎 啓介な」
「なんで知ってるの?」
「お前にだけは教えてやるよ」
秀一は洋子を屋上に連れ出した。
「こんなところに連れ出してなにをしようっての?」
秀一は装置を起動し、聡美に姿を変える。
「え!?」
驚き戸惑う洋子。
「久木 聡美の正体は俺なんだ」
「ええええ!?」
「そう言うわけで、フォローの方よろしくな」
聡美はそう言うと、洋子を残して教室に戻ろうとする。
「ちょっと待って。状況が飲み込めないんだけど」
聡美は洋子にACRのことを説明した。
「なによそれ? 私の知らないとこであんたそんなことしてんの?」
「ああ」
「面白そうね」
「え?」
「私も入るわ。その、AC……R……?」
「マジかよ」
「うん」
「しゃあねえ。長官に言っとく」
聡美と洋子は教室へ戻っていった。