6.同棲します
高校の教室。
洋子が言った。
「聡美、今日うちのクラスに編入生が来るみたいよ。男の子だって」
「そうなんだ」
チャイムが鳴り、教師が入ってくる。
「編入生を紹介する!」
教師が言うと、啓介が入ってきた。
「啓介くん!?」
「久木は知り合いか?」
「彼氏です」
「そうか。じゃあ世話役はお前に任せた」
教師はそう言うと、啓介を聡美の隣に座るよう促した。
「聡美、あんた隣のクラスの横澤くんは?」
「あれは勘違いだよ」
「そう、なんだ……」
ホームルームが終わり、授業の準備をする聡美。
「聡美さん、教科書を一緒に見せてもらっていい?」
「いいよ」
聡美は啓介と机をくっつけると、教科書を見せてあげた。
……。
…………。
………………。
授業も終わり、放課後を迎えた。
聡美と啓介は帰路に就いている。
「聡美さんはバイトとかしてるの?」
「バイト? 一応」
「どんな?」
「公務員の手伝い」
「へー」
「結構体力使って大変なのよね」
「そうなんだ。僕は家が裕福だからバイトは必要ないかな」
「金持ちのボンボンなんだ?」
「そうだね」
「昨日はなんで追われてたの?」
「突然、目の前に現れたんだ。襲ってきたから逃げた」
「今や怪物騒動は絶えないからね」
「聡美さん、よかったら僕の家で暮さない?」
「え?」
「だって、いつまたあの怪物が襲ってくるかわからないし」
(啓介を守るには側にいる必要があるな)
「いいけど、親に相談してみるね」
「期待してるよ」
聡美と啓介は交差点で別れた。
「ただいま」
家に着き、中に入る聡美。
「おかえり、秀一」
と、母親。
「親父は?」
「ハローワーク行ってるわ。向こうでは畑があったけど、こっちはないからね。仕事探しに行ってるのよ」
「そうなんだ」
「そうだ。母さんに相談があるんだけど、同棲したい人がいるんだ」
「同棲? いいけど、お父さんなんて言うかしら」
そこに父親が帰ってくる。
「秀一、帰ってたのか」
「親父は仕事見つかったのか?」
「気になるのはな。来週、面接行ってくるよ」
「決まるといいな。それと……」
聡美は父親に同棲の件を話した。
「ならん! ならんぞ! 年頃の娘が男と同棲だなんて! 父さんは認めるわけにはいかない!」
「俺、男だから大丈夫」
「なら認める」
「あっさりしてるな」
聡美は部屋に入る。
必要最低限の生活品を準備し、啓介の家へ向かう聡美。
インターホンを鳴らすと、啓介が出てきた。
「両親が許可くれたから来ちゃった」
「よかった」
家に上がる聡美。
「部屋はここを使って」
啓介が一室に案内した。
「ここ、亡くなった姉さんが使ってたんだけど、長い間空き部屋になってたから」
「お姉さんがいたの?」
「姉さん、君に似てるんだ」
「へー」
聡美は部屋に入る。
「あと、トイレがそこで、お風呂はあっちだよ」
と、それぞれの場所を指差す啓介。
「うん、ありがとう」
聡美は荷物を置くと、ふかふかのベッドに横たわった。
「気持ちいな」
と、いつの間にか眠りに落ちる聡美だった。